懐かしの歌本の世界
 
 
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第1回 『月刊平凡』(1967[昭和42]年2月号)
     第1付録 「平凡ソング〜新春・紅白歌合戦」
     その1









 企画ページの更新頻度がめっきりと落ちてきた「60年代通信」にとって、久しぶりの新メニューであります。
 これまで、「60年代の雑誌」のコーナーに用意されているメニューは、「月刊平凡」だけでありましたが、新たに、「懐かしの歌本の世界」と題しまして、主に、『月刊平凡』と『月刊明星』の付録として歌好きの老若男女に重宝されていた歌本を、順次、取り上げさせていただこうと思います。
 まず、記念すべき第1回では、『月刊平凡』1967(昭和42)年2月号の第1付録だった「平凡ソング〜新春・紅白歌合戦」であります。
 表紙は、若かりし頃の都はるみさんと西郷輝彦さんでありまして、なぜか、お二人がジャンケンをしているわけでありますが、チョキを出しているはるみさんがパーを出している西郷さんに勝ってしまったりしています。
 さらに、西郷さんのネクタイが微妙に曲がっていたりするのが、気になったりもしたりするわけではありますが、そういう細かい話は置いときまして、せっかくの久しぶりの新メニューであり、なおかつ、企画ページとしても、ほとんど2週間ぶりの更新ということになるわけですので、早速、本編のお話に入らせていただこうと思います。


 まず、あの頃の歌本というのは、大体、横長のスタイルで、古いものは左開きが主流だったように記憶しておりますが、60年代も後半に入ったこの時のものは、右開きであります。
 まず、この表紙をめくりますと、表紙裏の広告は、以前、「60年代の広告」で、『少年マガジン』の掲載広告として取り上げさせていただいたこともある例の「4枚タッタ200円」のソノシートのレコード広告でありまして、その対抗ページ、つまり、表紙をめくって、素直に目に飛びこんでくる最初のページは、目次となっています。
 はじめに、この歌本の全容を知っていただくためにも、その目次をざっと眺めてみましょう。
第1部 第8回レコード大賞受賞作パレード p014
★レコード大賞受賞曲が一目でわかります
◇平凡紅白歌合戦◇
第2部 レッツ・ゴー・男性歌手オン・パレード p025
第3部 レッツ・ゴー・女性歌手オン・パレード p169
第4部 懐かしのメロディー特集 p291
☆よみもの☆
クイズ・マンガ p100
歌手のお正月スケジュール p156
お正月のたのしい室内ゲーム集 p158
NHK紅白歌合戦出場者一覧表 p163
レコード8社 噂のパトロール p166
作詞入門教室(石本美由起) p276
若い喫茶室 p281
ポピュラー噂の花籠 p282
歌謡なんでも相談室 p284
レコード8社 売れ行きベスト・10 p286
懸賞当選者発表 p288
 この歌本が付録だった『月刊平凡』本誌は1967年2月号ということではありますが、実際の発売は、その前年、つまり1966(昭和41)年の暮れも押し迫ったころのタイミングだったということもありまして、4部構成の第1部は「第8回日本レコード大賞」の受賞作品を並べた「第8回レコード大賞受賞作パレード」となっています。
 毎年12月31日の夜にTBSが放送している「輝け!日本レコード大賞」という生番組しか見たことのない若い方は、レコード大賞というのは大晦日に決定し、発表されるものであると、当然のように思っていらっしゃることでしょうが、大晦日にレコード大賞が決定される様子を生中継で見ることが出来るようになったのは、TBSが独占的に放映を始めるようになった1969(昭和44)年からのことでありまして、それ以前は、12月の前半くらいには、レコード大賞が決定していたのであります。
 ちなみに、橋幸夫さんの「霧氷」が大賞に輝いた第8回日本レコード大賞の場合、その決定は、12月1日のことでありました。
 さらに、この号が発売された頃には、巷の歌謡曲ファンの関心は、すでに、大晦日のNHK紅白歌合戦にむけられていたわけでありまして、歌本の方も、当然のように、第2部と第3部は「平凡紅白歌合戦」ということで、紅白jには出場しない歌手の皆さんも含めて、第2部が「白組」をイメージして男性歌手のみ、第3部が「紅組」をイメージして女性歌手のみというページ構成になっています。
 また、第4部では、第7回までのレコード大賞受賞作品などを中心に、「懐かしのメロディー特集」などという企画も用意されております。
 まだ、ビデオはもちろん、カセットレコーダーもなかった時代でありますし、我が家のようにレコード・プレーヤーもなかった貧乏な家の場合、雪に閉じ込められた冬場における歌謡曲の楽しみ方としては、テレビやラジオの歌番組で聞いたお気に入りの曲を、コタツにあたって、こうした歌本などを見ながら、ソラで歌えるようになるまで歌いつづけるというようなパターンが一般的だったわけであります。
 さらに、この頃の歌本には、歌謡曲の歌詞だけでなく、いろいろな読み物企画も満載でありまして、これ一冊あれば、冬休みの間、十分に楽しめるというような作りになっておりました。
 上の目次の画像では、ほとんど、文字を読むことはできないでしょうから、私の方で、この目次を表の形にしてみましたので、ご参照いただければと思います。
 この目次で、それぞれの内容に対応するページ数をご覧いただいてもお分かりになるかと思いますが、この頃の歌本というのは、300ページを超えるボリュームになっておりまして、掲載されている曲目数も、500曲は優に超えております。


 さて、実は、私は、この「60年代通信」を立ち上げた当初から、この「歌本」の企画ページを絶対に作らせていただきたいと思い続けてきていたのでありますが、その最大の理由が、「歌本」には、大抵、その時の歌謡曲の人気投票ランキングのようなものが掲載されており、まだ、「オリコン」のようなヒットチャートなどもなかった時代に、ヒット曲や歌手の皆さんの人気のバロメーターとして、この「歌本」の存在が、非常に貴重なものだったはずだと考えてきていたからであります。
 ということで、この『月刊平凡』1967(昭和42)年2月号の第1付録だった「平凡ソング〜新春・紅白歌合戦」も、巻頭に、「平凡読者が選んだ今月のベスト20発表!」という人気投票のページが用意されておりますので、早速、そのランキングをご覧いただこうと思います。

01 夜空を仰いで 加山雄三 5987
02 霧氷 橋 幸夫 5845
03 絶唱 舟木一夫 5802
04 初恋によろしく 西郷輝彦 4456
05 夢は夜ひらく 園 まり 4273
06 恋人ジュリー 三田 明 3495
07 今夜は踊ろう 荒木一郎 3265
08 白樺に涙あり 都はるみ 2960
09 夕陽が泣いている ザ・スパイダース 2825
10 この手のひらに愛を ザ・サベージ 2810
11 霧の摩周湖 布施 明
12 まだ見ぬ恋人 加山雄三
13 命のきざみ 城 卓矢
14 夢は夜ひらく 緑川アコ
15 君が好きだよ 佐々木新一
16 柳ケ瀬の女 美川憲一
17 女のためいき 森 進一
18 日野てる子
19 こぼれ花 石原裕次郎
20 恍惚のブルース 青江三奈
次点 青い渚 ブルーコメッツ
 まず、首位の座でありますけれども、加山雄三さんの「夜空を仰いで」が、レコード大賞受賞曲である橋幸夫さんの「霧氷」を押さえて、堂々の第1位に輝いております。
 2位が橋幸夫さんの「霧氷」、3位が舟木一夫さんの「絶唱」、4位が西郷輝彦さんの「初恋によろしく」ということで、ありまして、御三家の貫禄を示す形となっています。さらに、6位に三田明さんの「恋人ジュリー」が入っていることも考え合わせますと、先行する橋・舟木・西郷という御三家の一角に三田さんが食い込むことで、“御三家から四天王へ”というような状況になっていたところに、降って沸いたような加山雄三ブームが訪れたといった観の強かった当時の歌謡曲の世界の状況が、このランキングには、如実に反映されているように思えます。
 ベスト10のうちの半分を、この橋・舟木・西郷・三田・加山という5人が占め、残る5つの席を、5位の園まりさん「夢は夜ひらく」、7位の荒木一郎さん「今夜は踊ろう」、8位の都はるみさん「白樺に涙あり」、9位のザ・スパイダース「夕陽が泣いている」、10位のザ・サベージ「この手のひらに愛を」が分け合う形となっているわけであります。
 「夢は夜ひらく」で5位に食い込み、女性歌手としては最高位となっている園まりさんは、中尾ミエ、伊東ゆかりとともに“ナベプロ3人娘”の一人として知られるわけですが、昭和30年代にカバーポップスを歌っていた3人は、昭和40年代に入ると、いわゆる歌謡曲のヒット曲も増えてまいりまして、その歌謡曲の部分で先行する形となったのが園まりさんだったように記憶しております。
 この時点でのヒット曲は、今をときめく宇多田ヒカルを文字通り生み落とした藤圭子さんが1970(昭和45)年にリバイバルヒットさせた「夢は夜ひらく」ということでありますが、この前に、「何でもないわ」「逢いたくて逢いたくて」などの宮川泰作品のヒット曲を飛ばしており、歌謡曲歌手として、3人の中では、先行する形となっておりました。
 この歌本は『月刊平凡』の1967(昭和42)年2月号の付録だったわけですが、伊東ゆかりさんの最初の歌謡曲のヒット曲「小指の思い出」は、まさしく、昭和42年2月のリリースでありまして、この後、「恋のしずく」「星を見ないで」「知らなかったの」などの連続ヒットを飛ばし、レコードセールス的には、3人の中では、最も成功を収めることになります。
 3人が、いわゆるカバーポップスを歌っていた時代に頭一つ抜けている感じだった中尾ミエさんは、歌謡曲の世界では、結構、雌伏期間が長く、私の記憶では、1968(昭和43)年にリリースされた「恋のシャロック」が初めてのヒット曲という感じでありました。ちなみに、中尾ミエさんの曲で、私が一番好きなのは、1977(昭和52)年にヒットした「片思い」という曲であります。
 再び、人気投票ランキングに戻りますと、7位は、荒木一郎さんの「今夜は踊ろう」で、荒木さんは、1966(昭和41)年の第8回日本レコード大賞の新人賞を受賞したばかりというようなタイミングでありました。新人賞の対象となった曲はフォーク系の「空に星があるように」でしたが、子供の頃に私がよく歌っていた荒木一郎さんの曲は、ポップス系の「今夜は踊ろう」や「いとしのマックス」などでした。
 荒木一郎さんは、当時、加山雄三さんと同様に自作自演ということで話題になっていたわけですが、加山さんに比べると、荒木一郎さんの存在は、歌謡曲史的にも埋没しがちでありますし、その評価も、加山さんほどではないようですが、荒木一郎さんについても、何れ、「60年代の歌謡曲」のコーナーで、取り上げさせていただければと思っています。
 8位には、都はるみさんの「白樺に涙あり」という曲が入っておりまして、一時期、海外出張の際には、必ず、都はるみさんのカセットテープを持ち歩いていた私は、そのオリジナル曲のほとんどをフルコーラス歌えるのでありますが、この「白樺に涙あり」という曲は知りません。タイトルは典型的な青春歌謡を思わせるようなものになっておりますので、いわゆる“はるみ節”でウナリを聞かせるような曲ではなかったのかもしれません。
 そして、9位にザ・スパイダースの「夕陽が泣いている」、10位にザ・サベージの「この手のひらに愛を」が入っており、この頃は、まだ、「グループ・サウンズ(GS)」という呼称は一般化していなかったわけではありますが、いわゆるGSの老舗グループがベスト10に名を連ねる形となっております。
 GS関連では、ベスト20の中でも、この2グループだけで、ブルコメの「青い渚」が、かろうじて次点に食い込んでおりますが、昭和41年の暮れの時点では、まだ、このような状況だったわけであります。一応、ブルコメ・ファンとして言い訳をさせていただきますと、「青い渚」は1966(昭和41)年9月のリリースでありまして、この『月刊平凡』が発売された1966(昭和41)年12月というのは、「何処へ/センチメンタル・シティ」がリリースされた月であり、ちょうど、シングル盤の端境期であったため、次点というようなランキングに甘んじていたものと思われます。
 ちなみに、ザ・タイガースが「僕のマリー」でデビューするのは1967(昭和42)年の2月、ブルコメが「ブルーシャトウ」をリリースするのは、1967(昭和42)年3月のことでありました。
 11位から20位までは、得票数も表記されておらず、参考情報のような紹介のされ方ですが、加山雄三さんの「まだ見ぬ恋人」が12位に入っておりまして、ベスト20に2曲ということで、その人気が偲ばれるほか、園まりさんとの競作になっていた緑川アコさんの「夢は夜ひらく」が14位に入っている辺りが、目を引きます。
 ベスト10圏外ということではあるものの、何れも60年代に大活躍されていた歌手の皆さんばかりでありまして、その歌っている姿なども思い浮かべることが出来るのですが、「君が好きだよ」という曲で15位に入っていらっしゃる佐々木新一さんという方だけは、どうしても、思い出せません。
 どなたか、この佐々木新一さんという歌手を覚えている方がいらっしゃいましたら、また、何か、ご教示いただけると有り難いと思います。



 それから、このベスト20には、次のような解説も添えられております。
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 レコード大賞特別賞の加山さん、大賞の橋さん、歌唱賞の舟木さん、この3人がトップを争い、ほんの僅少差でしのぎをけずっています。新人賞の荒木さんも大活躍。西郷さんの「初恋によろしく」、都さんの「白樺に涙あり」など10曲が今月新しく登場しました。 20位以下では「二人の銀座」(山内、和泉)、「北国の夜」(赤木)などに票が集まっています。
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 また、加山さんの写真には「5カ月ぶりにトップにおどり出た加山雄三さん」というキャプションがあり、私の記憶では、いわゆる大ヒット曲ということでは、「君といつまでも」に続くのが「夜空を仰いで」だったように思いますので、この「夜空を仰いで」でのトップは、「君といつまでも」以来のことだったのではないかと思われます。

 ちなみに、この『平凡』歌本の人気投票ランキングの応募方法は、次のようなものでありました。
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平凡愛読者が選ぶ今月のリクエスト曲 ベスト20募集!
第37回
賞品
A賞 トランジスタラジオ『マイクロニック・ルビー』…4名
B賞 ビクター・ミュージック・ブック『青江三奈/森進一』…50名
■応募のしかた■
(1)はがきに、あなたの一番好きな歌の題名を一曲書いてください。
(2)その横にあなたの住所、氏名、年齢、職業(または学年)をはっきり書いてください。
(3)宛先は、東京都京橋局区内 平凡編集部 歌本第37回リクエスト係
(4)締め切りは1月20日。発表は4月号歌本誌上。
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