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ステップ6←ステップ7→ステップ 8
ステップバイステップ日本語教授法
ステップ7 入門期の授業
日本語を何も知らない入門期(ゼロスタート)の学習者への教育には、さまざまな配慮が必要です
7−1 最初の授業
最初に学習者と顔合わせするときは、緊張をほどき、楽しい気分でお互いに知り合うことから始めましょう。
教科書の第1課が、自己紹介で始まっているのではない場合も、お互いの名前を知り合うことからスタートし、なごやかに学習を始められるといいですね。
媒介語をつかわない場合も、非言語指示(ジェスチャーやアイコンタクト)によって、まだ日本語をなにひとつ知らない学習者へ、自己紹介ができます。
例)
教師の名札を用意し、胸につけておく。学習者に合わせて、ひらがなとローマ字、ひらがなと漢字などの名前の表記を準備する。
また、できる限り事前に学習者の名前(教室で使用する名)を把握しておきましょう。
T: 「おはようございます/こんにちは」
学習者全員に向かって「はじめまして、すずきです」名札をさししめす。
(名札がない場合、黒板にひらがな/ローマ字/漢字などで名前を書き、それをさししめす)
全員へ向かい「どうぞよろしく」おじぎする。
学習者のひとりに向かい「すずきです」おじぎ。
手を上に向け、「あなたもどうぞ」のジェスチャーをする。
L1: 「L1です」
T: 「L1さん、どうぞ よろしく」
L1 「ど、どう?」
T: 「どうぞ」手でジェスチャーし、リピートをうながす。
L1: 「どうぞ」
T: 「よろしく」手でジェスチャー
L1:「よろしく」
次にL2に自己紹介を繰り返す。
7−2 日本語の発音とひらがなの読み方導入
日本語のひらがなは「音節文字」であり、おおよそひとつの文字にひとつの発音が対応しています。
五十音図や「ひらがなカード」をつかって、文字の読み方と発音をまとめて指導します。書く練習は、別の時間をとることにして、まず、日本語の発音を練習しましょう。
母音と子音、開音節、清音濁音(有声無声)、拍、長音、促音、撥音、母音無声化、アクセントなど、入門期に注意すべき音声上の問題点が多々ありますが、初日から学習者に完璧な発音を要求する必要はありません。学習者の母語との違いに留意しながら、入門期の間にすこしずつ日本語らしい発音ができるよう、指導していきます。
入門期にローマ字表記でスタートする場合、母語のアルファベット読みに引きずられることもあるので注意。また、「短期旅行者のサバイバル日本語」などの場合は、「話す聞く」技能だけ必要とし「文字情報は必要はない」ということもありますが、四技能(読む書く聞く話す)を平行して学んで行こうとする場合、最初からひらがなを読めるようにした方が、学習効率がいいようです。
7−3 教室用語
教室での練習に必要な指示のことばも、早い時期に教えていきます。いくつかの母語話者が混じっている教室で直接法によって授業をする場合、最初の授業で、各国語との「教室用語対照表」を壁に貼るなどの準備も必要です。
例)
始めましょう/ 好、開始 巴 /Let's start class now.
くりかえしてください/ 請重複一遍 /Repeat after me.
53ページを開いてください/ 請打開第53頁 /Open to page 53.
質問してください/ 請発問 /Do you habe any question?
今日は、これで終わります/今天就講到這裏/That's all for today.
また、媒介語を用いることができる教室でも、できる限り日本語の指示によって指導したほうが、学習者が日本語を多く耳にすることになります。
最初は「Let' take 5-minute break. 5分やすみましょう」「Once more. もう一度」など、媒介語と日本語を平行して言います。慣れてくれば、学習者も教室用語を理解し、覚えてきます。
7−4 あいさつのことばと数字
絵カードなどを利用しながら、あいさつのことばや「すみません」「おねがいします」など、日常よく使うことばを紹介します。
また、サバイバル日本語としても必要であり、例文の指示や問題の番号指示にも必要になるので、数字の読み方を1から10まで練習します。11以上の数字は、必要な課で導入します。
7−5 文型と文脈(ディスコース)
日常の会話で「山田さんは学生ですか」とたずねられたら、どう答えますか。「いいえ、わたしは学生ではありません。私は会社員です」と答えるでしょうか。普通の会話だったら「いいえ、学生じゃありません。会社員です」と答える方が自然ですね。
日本語学習者も会話練習では「普通の自然な会話で使用できる日本語」を練習します。
初級教科書では「文型積み上げ」によって基本的な日本語の型を理解させていきますが、日常の会話は「文型のとおり」にやりとりされるのではありません。会話は談話(ディスコース)の文脈の中で発話されるのです。談話は、対人関係、場面状況などを含んで成立し、文型が単独で表出されるのではないのです。
初級教科書の第1課は「NはNです」という文型の導入から始まることが多く、文型として「リサさんは留学生です」「ミラーさんは会社員ですか」などが提出されています。
文の型を理解したあと、実際の受け答えとして
「(あなたは)マイク・ミラーさんですか」
「はい、(わたしは)マイク・ミラーです」
というように、場面からわかり、実際は発話しないことばは( )の中に入れて示し、日本語では場面や文脈からわかることは表現しない方が自然な言い方だということを理解できるようにします。日本語の構造と表現を学習者に理解させるために、いろいろな工夫が必要です。
7−6 日本語の基本的な構造の理解
初級教科書は、「各国語版 文法解説書」などが附属して出版されていることが多く、各課の文法項目について説明がなされています。しかし、入門期の学習者は母語の構造に置き換えて理解しようとする傾向もあるので、「日本語には日本語の構造がある」ということを早い段階で理解できるよう、図や絵で示していきます。
日本語は「述部」が構造の中心となります。述語の必要に応じて補充のことば「補語」が付け加えられいきます。場面や文脈を話し手と聞き手がお互いに了解しあうことが大切です。
7−7 指示詞「こ、そ、あ、ど」
多くの初級教科書で「N(名詞)はNです」の文型に引き続き、「早い段階で提出されているのが「こ、そ、あ、ど」です。「これは辞書です」「それは何ですか」などの文型が提示されています。
入門期には、教室内にあるものを利用して「これ、それ、あれ」「ここ、そこ、あそこ」などを理解できるようにしていきます。
入門期の学習者が混乱しないように、わかりやすい場面を設定し、
最初は、話し手聞き手との実際の距離によって「これ=話し手近くもの」「それ=聞き手近くのもの」「あれ=双方から遠いもの」という理解でさしつかえないでしょう。
しかし、教授者は、話し手と聞き手の「関係」と「心理的な距離」「領域(テリトリー)」によって「こ、そ、あ」体系が組み立てられるのだということを忘れないようにしなければなりません。
現実生活の表現では、Aさんが自分の肩をたたいて「ここが痛くて。肩がこったみたい」と表現します。BさんがAの肩をたたいてやり「ここかい、こっているところは」Aは「ああ、そこ、そこだよ。そこ、気持ちいい」
Aにとって、肩が「私の体の一部分」という自分の領域にあったとき、「ここが痛い」と表現されるが、Bがたたいている間、Aの肩はBの領域にあると心理的にとらえられるので「そこ、気持ちいい」と表現するのです。
教授者は指示語がどのような機能をもつか、指示している領域はどこか把握した上で、学習者に場面を提示します。
「こそあど」は、現場指示と文脈指示がありますが、入門期には、話し手聞き手の目の前で指示できる「現場指示(眼前指示)」のみを扱い、学習が進んだ段階で「文脈指示」も理解できるようにします。
現場指示(話し手聞き手の眼前に指示物がある場合)
1 話し手の領域と聞き手の領域が別であるとき
「こ」(これ/ここ/この/こんな)話し手の領域にあるもの
「そ」話し手の領域になく聞き手の領域にあるもの
「あ」双方の領域からはずれているもの
2 話し手と聞き手が同じ領域に属しているとき
「こ」話し手聞き手双方の領域内のもの
「そ」話し手聞き手の領域外にあり、双方にとって心理的に近いもの、親しいもの
「あ」話し手聞き手の領域外にあり、双方にとって心理的に遠いもの、親しくないもの
授業の展開例 (T:教師 L:学習者)
1,絵カードや実物を用意し、Tがいう言葉を学習者にリピートさ せ、なめらかに発音できるよう練習する。「雑誌」「辞書」「ペン」 など。
2,手元の雑誌をさしてT:「これは雑誌です」繰り返して言う。
手元の新聞、辞書などをさして同様に「これは〜です」
3,Lの机の上のペンをさして「それはペンです」同様に「それは 〜です」を繰り返す。
4,Lの側に行き、Tの机の上の雑誌をさして「それは雑誌です」
他のものもさし、同様に「それは〜です」
5,Lの机の上の文房具をさし、「これは〜です」を言う。
6,はじめに「これ、それ」をリピートさせるときは、TはLと同 じ側に立って繰り返させる。概念が理解できたら、Tが「これはなんですか」と質問したらLが「それは〜です」と答えられるようになる。
7,Lが「これ」「それ」の概念を理解したら、「あれ」を導入する。
7−8 初級教科書の文型提出順序
さまざまな文を、いくつかの型に整理したものを文型といいます。
初級段階では、簡単な文型から複雑なものへと、積み上げて学習が進められていきます。主な文型は以下のとおり。(N=名詞、V=動詞、A=形容詞、S=文)
初級教科書の中では、どのように文型積み上げが行われていくか見ましょう。多くの初級教科書は、ほとんどのものが「名詞文」を先に提出しています。次に「形容詞文」「動詞文」または「動詞文」「形容詞文」の順に提出されます。動詞文の中でも「存在文(〜あります/〜います)」は、ここ、そこなどの指示詞と組み合わされて、独立した課として教えていくことが多いです。他の動詞文とことなる部分があるからです。
日本語の初級教科書の目次をみてください。中学校用英語教科書と日本語初級教科書を比較しながら、どのような文型がどのような配列で提出されているか、確認しましょう。
7−9 『みんなの日本語』の文型
初級教科書の一例『みんなの日本語』では次のように文型が提出されています。
『みんなの日本語T』の第1〜25課、提出文型の主なもの(例文は一部省略してあります)
課 文型 1 NはNです「わたしはミラーです」
NはNじゃありません「ミラーさんは学生じゃありません」
NもNです「マリアさんもブラジル人です」2 こそあど「これは辞書です」「この傘はわたしのです」 3 こそあど「ここは食堂です」「これをください」 4 NからNまで「6時から9時まで」
VますVません「6時に起きます」
VましたVませんでした 「きのう勉強しませんでした」5 自動詞(移動)「京都へ行きます」 6 他動詞、Vませんか、Vましょうか
「新聞を読みます」「神戸へ行きませんか」「ちょと休みましょう」7 Nやりもらい「木村さんに花をあげます」 8 形容詞「桜はきれいです」「きれいな花です」 9 Nがわかる、Nが好き「日本語が少しわかります」
Sから(理由)「誕生日ですから早く帰ります」10 NにNがあります,います「つくえの上に写真があります」 11 数詞「テーブルが7つあります」いっしょにいきましょう」 12 形容詞過去、比較「北海道は九州より大きいです」 13 Nがほしい,NがVたい「カメラがほしい」「〜が食べたい」
Vに行く/来る「料理を習いにいきます」14 Vテ形「待ってください」「電話をかけています」
Vテ形「待ってください」「電話をかけています」15 許可禁止「借りてもいいですか」「遊んではいけません」
Vテ形「パソコンを持っています」「知っています」16 動作継起「シャワーを浴びて会社へ行きます」
形容詞テ形「軽くて便利です」
17 Vナイ形、禁止許容義務 「写真を撮らないないでください」
「パスポートを見せなければなりません」18 V辞書形、Vこと「漢字を読むことができます」
〜まえに「寝る前に日記を書きます」19 Vことがある「相撲を見たことがあります」
VたりVたり 「テニスをしたり散歩に行ったりします」
〜になる 「だんだん暑くなります」「医者になります」20 普通形「パーティに来なかった」「日本は物価が高い」
21 〜と思う「明日は雨が降ると思います」 22 連体修飾「ミラーさんが作ったケーキです」 23 〜とき、〜と 「本を借りるとき、カードが要ります」
「このボタンを押すと、おつりが出ます」24 Vテ形やりもらい 「電話番号を教えてもらいました」 25 条件、〜たら〜ても「雨が降ったら出かけません」
「雨が降っても出かけます」
「みんなの日本語U」26課〜50課の主な文型は次の通り
〜んです「旅行なんです V可能形 「日本語が話せます」 Vながら「音楽を聞きながら食事します」 Vてある,てみる,ておく「地図がはってあります」「食べてみます」 Vほうがいい「運動したほうがいい」 V命令形「急げ」 禁止「触るな」 〜なれば「春になれば桜が咲きます」 〜ように「速く泳げるように練習しています」 受身形「母にしかられました」 V意志形「いっしょに飲もう」 『の』名詞化 「持ってくるのを忘れました」 理由ので「体の調子が悪いので病院へ行きます」 〜そうだ(様態)「雨が降りそうです」 〜そうだ(伝聞)「天気予報によると明日は寒くなるそうです」 使役形 「ピアノを習わせます」 敬語 「もう、お帰りになりました」
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