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ステップバイステップ日本語教授法


ステップ4  直接法による日本語教育

日本語教育で伝統的に採用されてきた教授法に「直接法direct method」があります。

4−1 直接法

   できる限り、学習目標言語だけで教えていこうとする教え方が直接法です。イギリスの言語学者パーマーのオーラルメソッドの理論をもとに、日本語だけで日本語を教えることができるよう開発された教授法ですが、オーラルメソッドに加えてさまざまな理論による教授法が取り入れられ、多くの日本語教育の現場で、授業がより効果的に行われるよう探求が続けられています。

   直接法は、教室内に複数の言語使用者が存在するときに有効な教授法であるばかりでなく、学習者が共有理解言語(媒介語)を持っている場合でも、教えていく言語のモデルとして教師のことばをより多く学習者に聞かせるために、有効な教授法であるといわれます。


4−2 直接法の授業

どのように教えていくのでしょうか?

   直接法で日本語を教えるには、絵や実物(レアリア)、ジェスチャーなどを利用して、学習者に教授内容を理解させていきます。日本語だけで、未習の日本語文型を説明するため、さまざまな工夫が必要です。初心者が陥りがちな失敗は、学習者がまだ学んでいない文型や単語を使って説明してしまうことです。直接法で教えるには、学習者の既習語彙既習文型に十分な配慮をする必要があります。
   また、最近の日本語教科書は文法や語彙解説に各国語版を用意してあるものが多いので、語彙、基本的な文法用語について、教授者はあらかじめ知識を持ち、直接法教授の中にごく一部媒介語を用いることも、効率的な授業をすすめる上で有効です。
   直接法で教えるとしても「絶対に媒介語をつかってはいけない」というような硬直した姿勢ではなく、臨機応変に授業を展開していく柔軟な姿勢が求められるのです。


4−3 媒介語

媒介語で教えるには?


   教師、学習者全員が共通して理解している言葉を「媒介語」といいます。中国語(スペイン語、ポルトガル語、英語など)話者だけのクラス、クラスの全員が英語を理解しているなどの場合、媒介語を使用して教えることが可能になり、教室内での行動指示、意味の説明、文法説明に、媒介語を用いることができます。
   しかし、媒介語の使用には注意を要します。日本語と他言語の間には一対一で完全に対応できる文法項目や語彙は少ないからです。例えば、「こそあど」には日本語としての体系があることを意識せず、安易に「『これ』は『this』です」というだけの説明で終わったら、そのあとの文例で学習者が混乱する場面も出てくるでしょう。

   ゼロスタート入門期では教室用語などで媒介語を用いることは、さしつかえありませんが、学習が進んできたらできる限り学習者に理解できる範囲の日本語を使う方が、よいでしょう。動詞文を学び「〜ましょう」の形を習った後なら「Let's take a break」という教室用語を使うより、「休みましょう」という日本語を学習者に聞かせるほうが、実際の場面での聞き取り練習にもなるのです。
   文法説明を媒介語を用いて行う場合、基本的な文法用語について、教師と学習者の間で用語を統一しておく必要があります。動詞の活用を教えるときに、教師は「1グループ動詞」と呼び、学習者は、以前の教科書で使っていた「U動詞」や「五段活用動詞」を使用するなど、混乱のもととなりますから注意しなければなりません。

(巻末「主な日本語学日本語教育用語・日英対照表」を参照)


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