イアソン / J A S O N / .

イオルコス王家のアイソンとアルキメデ、あるいはポリュメデとの息子。幼い頃ケンタウロス族の賢者ケイロンに預けられ、成長すると父の王国を奪っていたペリアスに返還を要求した。ペリアスは彼らの親戚にあたるフリクソスをコルキスまで運んでいった黄金の羊の毛皮をとってくれば返還すると約束したが、必ずその途中で命を落とすだろうと考えてのことだった。イアソンはギリシア中から英雄を集め、アルゴと名付けられた船に乗ってコルキスに出発した。この遠征に参加した一行はアルゴナウタイと呼ばれ、楽士オルフェウスや北風の神ボレアスの息子カライスゼテスゼウスの息子カストルポリュデウケスペレウステラモン、さらにはヘラクレスなども参加していた。

 いくつかの冒険を経てコルキスにたどり着くと、アイエテス王の娘で魔女のメデイアと出会ったが、ヘラの策略で彼女はイアソンに恋し、彼を助けることとなった。アイエテスは彼らが羊皮を取りに来たことを知ると、青銅の雄牛の怪物をくびきにつないで畑を耕し、竜の歯を蒔いて生まれた兵士たちを倒すという難題を提示した。イアソンはメデイアの助けでこれに成功すると、羊皮を守る竜を眠らせてこれを奪い、メデイアを連れてイオルコスに戻った。

 ペリアスが王位をゆずらなかったので、メデイアの策略によって殺したが王位にはつかず、コリントスへ赴いた。クレオン王から娘グラウケとの結婚を持ちかけられるとメデイアを裏切って結婚しようとした。メデイアはクレオンとグラウケを殺し、イアソンとの子供を殺してアテナイへ逃れた。

常に登場する場面

  • 竜の口から逃れるイアソン
  • 黄金羊皮を盗むイアソン

しばしば登場する場面

  • アルゴナウタイの出発
イオ / I O / .

イナコス河神とメリアとの娘。ゼウスに見初められ、ゼウスが妻ヘラに見つからないようにするため、あるいはヘラが嫉妬したために牝牛に姿を変えられた。ヘラは彼女の耳もとに虻を送り、あちこちを休みなくさまよった。またヘラは彼女を閉じこめて百の目を持つ怪物アルゴスを見張りに立てた。ゼウスに使わされたヘルメスは笛の音で怪物を眠らせるとその首をはねて殺しイオを解放した。しかしイオはいぜん虻に追われ、各地をさまよい続けた後エジプトでゼウスに出会い人間の姿に戻るとアルゴス王家の祖となるエパフォスを生んだ。 

常に登場する場面

  • アルゴスを退治するヘルメス
イオラオス / I O L A O S / .

イフィクレスとアウトメドゥサとの息子でヘラクレスの甥。ヘラクレスの戦車の御者として十二の難行を助け、そのいくつかでは重要な役割を果たしている。特にレルネのヒュドラ退治では松明を持ってヘラクレスが切り取ったヒュドラの首の根元を焼き払った。ヘラクレスの死後はその子供たちを助け、青春の女神ヘベに若さを与えられると彼らを常に苦しめていたエウリュステウス王を殺した。 

常に登場する場面

  • レルネのヒュドラを退治するヘラクレス

しばしば登場する場面

  • ネメアのライオンと戦うヘラクレス
  • エリュマントスの猪を生け捕るヘラクレス
イカロス / I K A R O S / ΙΚΑΡΟΣ

アテナイの工芸家兼建築家であるダイダロスの息子。父はアテナイを追われてクレタへ訪れたが、テセウスミノタウロスを倒して迷宮から脱出する方法を教えたためミノス王の怒りを買い、イカロスとともに迷宮の中に閉じこめられた。ダイダロスは蝋と羽根で翼を作ってイカロスとともに空からの脱出に成功したが、イカロスは父の警告も聞かず高く飛びすぎたために羽根を固めていた蝋が溶けだし、海に墜落して命を落とした。

イクシオン / I X I O N / .

アンティオン、プレギュアス、ペイシオンのいずれかの息子でテッサリア王。エイオネウスの娘ディアと結婚したが、結納金を受け取りに来たエイオネウスを殺害し、親族を殺害した最初の人間となった。その罪を清めるものが誰もいないのを憐れんだゼウスが彼をオリンポスに迎えたが、彼はゼウスの妻ヘラを誘惑しようとした。ゼウスは彼をタルタロスに幽閉し、火のついた車輪にくくりつけて永遠に回し続けた。

常に登場する場面

  • 車輪に縛り付けられるイクシオン
イスメネ / I S M E N E / ΙΣΜΗΝΗ

テーバイの王オイディプスとイオカステとの娘でアンティゴネの姉妹。オイディプスが盲目となって放浪しているときに姉妹とともに父を助けた。父の死後兄弟のエテオクレスポリュネイケスがテーバイとアルゴスに分かれて戦争になり、相打ちで死んでしまったとき、敵側にいたポリュネイケスを王の命に反して埋葬しようとするアンティゴネに対して協力を拒んだ。文学作品には伝わらないが、この戦いの中でアルゴスの武将テュデウスに殺される場面が描かれている。

常に登場する場面

  • イスメネを殺すテュデウス
イダス / I D A S / .

メッセネの王アファレウスとアレネとの息子。アレスの息子エウエノスに戦車競争に勝ってその娘マルペッサを妻として得た。しかし妻を誘拐したアポロンと争いになって、ゼウスの裁定でマルペッサ自身にどちらを夫とするかを選ばせると彼女はイダスを選んだ。彼は兄弟リュンケウスとともにカリュドンの猪狩りやアルゴナウタイに参加した。彼はメッセネ王女のフォイベとの結婚が決まっていたが、リュンケウスの婚約者ヒラエイラとともにディオスクウロイに連れ去られてしまった。これが原因で両者の戦いとなり、兄弟ともに殺されてしまった。

常に登場する場面

  • イダスと格闘するアポロン
イテュス / I T Y S / .

トラキア王テレウスとアテナイ王女プロクネとの息子。テレウスが姉妹フィロメラを犯してその舌を切り取って閉じこめたことを知ったプロクネは姉妹を救出するとイテュスを殺して切り刻み、テレウスに食わせた。

常に登場する場面

  • イテュスを殺すプロクネ
イノ / I N O / .

テーバイ王カドモスハルモニアとの娘。テッサリア王アタマスと結婚したが、彼の先妻の子供フリクソスヘレを迫害し、これを殺そうとした。しかし彼らは黄金の羊に乗って逃れた。発狂したイノは海に飛び込んで海の女神レウコテアとなった。

しばしば登場する場面

  • 羊に乗って逃げるフリクソス
イフィクレス / I P H I K L E S / .

アムフィトリュオンアルクメネの息子でヘラクレスの双子の兄弟だがヘラクレスだけはゼウスの息子であった。嫉妬したゼウスの妻ヘラヘラクレスを殺すために毒蛇を送り込んだが、泣き叫ぶイフィクレスに対しヘラクレスはこれを捕まえて絞め殺した。メガラ王アルカトオスの娘アウトメドゥサとの間にヘラクレスの戦車の御者として難行を助けたイオラオスをもうけた。  

常に登場する場面

  • 蛇を絞め殺すヘラクレス
イフィトス / I P H I T O S / .

オイカリアの王エウリュトスの息子。ヘラクレスエウリュトスの催した競技に勝利したとき、王はその賞品であった王女イオレを与えることを拒んだ。イフィトスはヘラクレスに味方して父を説得しようとしたが、怒りで我を忘れていたヘラクレスによって殺されてしまった。

しばしば登場する場面

  • エウリュトスと戦うヘラクレス

まれに登場する場面

  • ペリアスの葬礼競技
イリス / I R I S / .

ティタン神族のタウマスとエレクトラとの娘で虹の女神。ヘルメスゼウスの伝令神であるのに対し、彼女はヘラの伝令神としての役割を演じることが多い。そのためアトリビュートはヘルメスと同じ伝令の杖ケリュケイオンと翼の生えた靴で、背中に翼の生えた姿で描かれることもある。しかし彼女が重要な役割を担った物語はほとんどない。  

常に登場する場面

  • イリスを襲うサテュロス

しばしば登場する場面

  • ペレウスとテティスの結婚
エイレイテュイア / E I L E I T H Y I A / .

ゼウスヘラの娘で出産の女神。やや年長の女性として描かれるが、特別なアトリビュートは存在せず、出産の場に立ち会う女性でほかの女神のアトリビュートのないものはほとんど彼女だと解釈される。彼女は様々な出産の場面に立ち会っているが、重要な役割を演じたのはアルテミスアポロンの誕生の場面とヘラクレス誕生の場面である。いずれもゼウスの子供たちであるが、本妻であるヘラはこれに腹を立てその出産を邪魔するために娘のエイレイテュイアに命じ、出産を遅らせたが結局誕生を邪魔することはできなかった。  

しばしば登場する場面

  • アテナの誕生

まれに登場する場面

  • ペレウスとテティスの結婚
エウリュアレ / E U R Y A L E / ΕΥΡΥΑΛΗ

ゴルゴンの一人でメドゥサの姉妹。メドゥサと違い彼女は不死であった。ペルセウスメドゥサを殺害すると復讐のために彼を追い続けたが、女神アテナに助けられたペルセウスは逃げることができた。 

常に登場する場面

  • ゴルゴンから逃れるペルセウス
エウリュクレイア / E U R Y K L E I A / .

イタカ島のオデュッセウスの乳母。オデュッセウスはトロイアから戻ると妻ペネロペに言い寄っていた求婚者たちを退治するために身分をやつしていたが、エウリュクレイアは彼の足を洗ったときに大きな傷跡を見て主人であることを見抜いた。しかし彼の言うとおりにその事実を誰にも教えず、成敗が完了すると侍女たちの中で主人に背いていた人物を彼に伝えた。  

常に登場する場面

  • オデュッセウスの足を洗うエウリュクレイア
エウリュステウス / E U R Y S T H E U S / .

ミュケナイ王ステネロスとニキッペまたはメラニッペとの息子。ヘラクレスの出産が近いことを知ったゼウスはまもなく生まれる自分の血を引いた人間がギリシアを支配する王となるだろうと公言した。これに不満を持ったヘラヘラクレスの出産を遅らせるとともに、ゼウスの息子ペルセウスの孫に当たるエウリュステウスの誕生を早めた。そのため彼はミュケナイやティリュンスなどの都市を含むアルゴリス地方の王となった。 彼はヘラの仕業で狂気に陥って妻子を殺したヘラクレスに対して十二の難行を果たすことを命じた。しかし彼は臆病で、ヘラクレスがネメアのライオンの毛皮や生捕りにしたエリュマントスの猪を運んでくると地下に埋めた大甕の中に隠れてしまった。ヘラクレスの死後もその子供たちを迫害し苦しめ続けた。  

しばしば登場する場面

  • エリュマントスの猪を生け捕るヘラクレス
エウリュティオン / E U R Y T I O N / .

西の果てに住む怪物ゲリュオンに使える牛飼い。ヘラクレスゲリュオンの牛を奪いに来たとき、番犬オルトスとともに殺されてしまった。

しばしば登場する場面

  • ゲリュオンとヘラクレスの戦い
エウリュトス / E U R Y T O S / .

テッサリアのオイカリアの王。娘イオレを与えると約束して競技を催したが、優勝したヘラクレスに娘を与えることを拒んだ。これに腹を立てたヘラクレスは彼の息子イフィトスを殺してしまった。そしてのちにヘラクレスは彼に復讐するために再び訪れると彼を殺してイオレを奪った。

常に登場する場面

  • エウリュトスと戦うヘラクレス
エウリュバテス / E U R Y B A T E S / .

オデュッセウスに使えるイタケの伝令使。アガメムノンの命によってタルテュビオスとともにアキレウスの陣営からブリセイスを連れ去ってアガメムノンのもとに届けた。

しばしば登場する場面

  • ブリセイスを連れ去るアガメムノン
エウロペ / E U R O P A / ΕΥΡΩΠΗ

フェニキアの王アゲノルとテレパッサとの娘。彼女を見初めたゼウスは雄牛に姿を変えて近寄り、彼女がその背中に乗ると突然走り出して海を越え、クレタ島まで運んでいった。姿を現したゼウスと交わってミノス、ラダマンテュス、サルペドンの三人の息子を得た。  

常に登場する場面

  • エウロペを誘拐するゼウス
エオス / E O S / .

ティタン神族のヒュペリオンとテイアとの娘でヘリオスセレネの姉妹であり、曙の女神。アトリビュートはないが、常に背中に翼を持つ姿で描かれる。 彼女はトロイアの王子ティトノスに恋し、彼を誘拐すると自分の宮殿でともに過ごし、メムノンとエマティオンの二人の息子を生んだ。ゼウスに彼を不死にするよう頼んだが、不老を願わなかったので徐々に老いていった彼はついに小さな蝉になってしまった。また彼女はケファロスにも恋して彼も連れ去ったが、彼が妻プロクリスの元へ帰りたがった。彼女は彼を返すと二人に嫉妬心を植え付け、ついには誤解から夫の槍に刺されてプロクリスは死んでしまった。 息子メムノンがトロイア戦争においてアキレウスと戦ったとき、ゼウスは二人の魂を天秤に掛けたがメムノンが死すべき運命に決まり、殺されたメムノンの遺体は死の神タナトスと眠りの神ヒュプノスによって、あるいは彼女自身によって戦場から運び去られた。  

常に登場する場面

  • ケファロスを誘拐するエオス
  • ティトノスを誘拐するエオス
  • メムノンの遺体運び

しばしば登場する場面

  • メムノンとアキレウスの戦い
  • メムノンとアキレウスのプシュコスタシア
エテオクレス / E T E O K L E S / .

テーバイ王オイディプスとイオカステとの息子。兄弟ポリュネイケスとともに盲目となって国を追われた父を助けようとしなかったのでオイディプスから呪われた。兄弟と一年交代で王位につくことになっていたが、エテオクレスは王位を譲らずにポリュネイケスを追放した。アルゴスに逃れたポリュネイケスアドラストス王とともにアルゴスの軍勢を率いてテーバイを攻めた。エテオクレスはポリュネイケスと一騎打ちの末相打ちとなって死んだ。

常に登場する場面

  • 相打ちになるエテオクレスとポリュネイケス

しばしば登場する場面

  • テーバイ攻め
エピメテウス / E P I M E T H E U S / .

ティタン神族のイアペトスとテミスとの息子。兄弟プロメテウスのオリムポス神からの贈り物を受け取ってはならないという忠告に反して神から送られた最初の女性パンドラを受け取ってしまった。パンドラは神からもらった壺を開けると中からあらゆる災いが解き放たれた。

しばしば登場する場面

  • パンドラの誕生
エリクトニオス / E R I C H T H O N I O S / .

ヘファイストスアテナに欲情したが彼女に逃げられてしまい、そのときこぼれた精子が大地にこぼれるとそこからエリクトニオスが生まれた。ガイアから彼を預かったアテナは箱に入れてアテナイ王ケクロプスの三人の娘に中を見ないよう命じて預けた。しかしパンドロソスとヘルセは中を見てしまい、その下半身が蛇であったため、あるいは蛇が絡み付いていたために恐怖のあまりアクロポリスの丘から飛び降りて自殺してしまった。 再びアテナによって育てられたエリクトニオスは成人するとケクロプスから王位を奪ってアテナイ王となった。  

常に登場する場面

  • エリクトニオスの誕生

しばしば登場する場面

  • アグラウロスを追いかけるアテナ
エリス / E R I S / .

夜の女神ニュクスの娘で争いの女神。ほとんどの神々が招待されたペレウステティスの結婚式に一人だけ招かれなかったことに腹を立てたため、「最も美しい女神に」と記された黄金のリンゴを投げ入れた。するとヘラアテナアフロディテが自分こそ相応しいとして譲らず、トロイアの王子パリスにその判定を下させることになり、その結果としてトロイア戦争を招くことになった。

まれに登場する場面

  • パリスの審判
エリニュス・複エリニュエス / E R I N Y S / .

夜の女神ニュクスの娘たちとも、切り取られたクロノスの男根から滴り落ちた血から生まれたともされ、正義と復讐の女神たちである。その人数は一定ではないが、アレクト、メガイラ、ティシポネの三人とするのが一般的である。特にアトリビュートはないが、しばしば翼を持ち、後の時代ほど牙や角を生やしたり、恐ろしい形相をしたりと醜く描かれる傾向がある。 父を殺した母親のクリュタイムネストラを報復として殺害したオレステスを執拗に追い回したが、アポロンに妨げられ、アテナイのアレイオスパゴスの法廷で彼の無罪が確定すると彼女たちは慈悲の女神エウメニデスとして祭られることになった。  

常に登場する場面

  • デルフォイのオレステス
エリヒュレ / E R I P H Y L E / .

アルゴス王タラオスとリュシマケとの娘で、武将で予言者のアムフィアラオスの妻。ポリュネイケスがテーバイを追われてアルゴスを訪れ、彼を王位に戻すためのテーバイ攻めが決定したとき、夫はこの戦いが失敗に終わり、自らも命を落とすことを知って参加を断った。しかしエリヒュレはテーバイ王家に伝わるネックレスに魅せられてポリュネイケスに買収され、アムフィアラオスはアルゴス王アドラストスと和睦した際に問題が起きたときはエリヒュレの判決に従うという取り決めがなされていたために戦いに赴かざるを得なくなった。そのため彼は息子たちに自分の敵を討ち、母を殺すよう誓わせて出発した。 十年後もう一度テーバイ攻めが計画されたとき、再びエリヒュレはポリュネイケスの息子テルサンドロスに買収され、息子たちを戦場へ向かわせた。息子アルクマイオンはこの戦いに勝利すると神託に従って母を殺して父との誓いを遂行した。 

常に登場する場面

  • エリヒュレを買収するポリュネイケス
  • アムフィアラオスの出陣
  • エリヒュレを殺害するアルクマイオン
エリュシクトン / E R Y S I C H T H O N / .

テッサリアのミュルミドンあるいはドティオンの王トリオパスの息子。建築用の材木が必要となったとき、デメテルの聖なる樫の木を切り倒したため、彼女に罰せられていくら食べても飢えを癒せないようにされてしまい、ついには自分の体を食べてしまった。

常に登場する場面

  • 聖木を切り倒すエリュシクトン
エルペノル / E L P E N O R / .

オデュッセウスの部下の一人。舵取りとして帰国する船を操っていたが、不慮の事故で海に落ちて死んだ。オデュッセウスが予言者テイレシアスに帰国の術を訪ねるために冥界に訪れたときにオデュッセウスと出会って、埋葬されないままになっている自分の遺体を埋めてくれるよう頼んだ。地上に戻ったオデュッセウスはその遺体を見つけると埋葬してやった。

しばしば登場する場面

  • 冥界を訪ねるオデュッセウス
エレクテウス / E R E C H T H E U S / .

アテナイ王パンディオンとゼウクシッペとの息子。アテナイ王となり、水の精プラクシテアとの間にケクロプスやパンドロスなどの息子、プロクリスオレイテュイアなどの娘をもうけた。そのうちオレイテュイアは北風の神ボレアスに誘拐された。

しばしば登場する場面

  • オレイテュイアを誘拐するボレアス
エレクトラ / E L E K T R A / ΗΛΕΚΤΡΑ

ミュケナイ王アガメムノンクリュタイムネストラとの娘。父が暗殺されると兄弟オレステスをフォキスに預けた。成長して戻ってきたオレステスアガメムノンの墓の前で再会すると、二人で協力して父を殺した母クリュタイムネストラと叔父アイギストスを殺した。

常に登場する場面

  • エレクトラと再会するオレステス

しばしば登場する場面

  • アイギストス殺害
エロス / E R O S / ΕΡΩΣ

世界の始まりの時にカオスから生まれたとも、アフロディテアレスとの息子ともされる。愛の神であり、翼を持った美しい青年として描かれ、ほかの人物よりも小さく描かれることが多い。年代とともに若年化する傾向が見られ、アフロディテとともに描かれることが多くなる。 まれに複数で描かれることもあり、その一人には「性愛」を意味するヒメロスの名前が与えられている。  

常に登場する場面

  • アフロディテの誕生
  • アフロディテと過ごすアドニス

しばしば登場する場面

  • ファオンとアフロディテ
  • エウロペを誘拐するゼウス
  • アルケスティスの婚礼準備
  • ハルモニアの婚礼準備
  • アタランテとメラニオンの競走
  • アルキュオネウスを退治するヘラクレス
  • エレウシスの秘儀に入信するヘラクレス
  • アリアドネを見捨てるテセウス
  • ヘレネと再会するメネラオス

まれに登場する場面

  • ペンテシレイアとアキレウスの戦い
オイディプス / O I D I P O U S / ΟΙΔΙΠΟΥΣ

テーバイ王ライオスとイオカステとの息子。王は自分の子供に殺されるだろうという予言があったため、産まれた子供を山中に捨てさせたが、その任務を仰せつかった羊飼いはこれに背いてコリントスの羊飼いに預けた。さらにコリントス王ポリュボスは子供がなかったためこれを引き取り、養子として育てた。 成人した彼は私生児だとののしられ、その事実を確かめるためにデルフォイに赴いたが、その答えは父を殺し、母と結婚するだろうというものだった。そのため彼はコリントスを離れてテーバイへ向かった。その途中の道で偶然出会ったライオスの一行と争いになり、一人を除く全員を殺してしまった。テーバイについた彼はこの国にスフィンクスが住み着き、謎を掛けては答えられないと殺していることを知った。彼は見事謎を解くとスフィンクスは崖から飛び降りて死んでしまった。災難を取り除いた彼は新しい王として迎えられ、イオカステを妻としたために予言は現実のものとなった。 その後疫病が続き、その原因が先王の殺害者が罰せられていないからだとわかると事実を確かめようとしたが、すべての事実が明らかになると絶望のあまり自らの目を潰し、追放されて放浪の旅に出た。彼にはエテオクレスポリュネイケスという二人の息子がいたが、追放される父に何の助力もしなかったため、父は二人に呪いをかけた。彼らはその後一年毎に王になることになっていたが、エテオクレスは王位を譲らず、兄弟を追放した。結局両者は父の呪いの通りに刺し違えて死ぬこととなった。オイディプスはテセウスの保護のもとにアテナイで息を引き取った。 

常に登場する場面

  • 羊飼いに拾われるオイディプス
  • スフィンクスの謎を解くオイディプス
オケアノス / O K E A N O S / .

ガイアとウラノスとの息子で大地を取り巻く海洋の神。ほかの海の神と同様しばしば下半身が魚の姿で描かれる。妻テテュスとの間に河や湖などの神である数多くの子供たちをもうけた。

まれに登場する場面

  • ペレウスとテティスの結婚
オデュッセウス / O D Y S S E U S / ΟΔΥΣΣΕΥΣ

イタケ王ラエルテスとアンティクレイアとの息子で、トロイア戦争におけるギリシア軍一の知将。あまり武装した姿で描かれることはなく、ペダソスと呼ばれるつばの広い帽子を被っていることが多い。 幾多の英雄が絶世の美女ヘレネに求婚したとき、その父のスパルタ王テュンダレオスに対し、結婚相手はヘレネに選ばせ、それ以外のものたちにはその結婚から生じる危機から二人を守ることを誓わせるよう進言した。ヘレネメネラオスを選び、後にパリスヘレネをトロイアへ連れ去ると、オデュッセウスをはじめとする英雄たちはその誓いのためにトロイア遠征に赴かざるを得なくなった。 オデュッセウスは参加したくなかったので狂気を装っていたが、パラメデスに見破られてしまった。死の運命から逃れるために女装して隠れていたアキレウスを見破って遠征軍に加えるとトロイアに向けて出発した。トロイアではまずパラメデスに復讐を遂げ、敵軍との密通を捏造し、石打の刑に処した。大将アガメムノンとの不和によって陣営にこもっていたアキレウスを説得しにいったがその甲斐はなかった。ディオメデスとともに敵陣の視察にいく途中で敵の偵察員ドロンを捕らえ、詰問して後殺すと、トラキアの指揮官レソスを暗殺して戻った。 パリスの矢によってアキレウスが斃れると彼が敵をくい止めている間にアイアスがその遺体を運んで帰った。そのアキレウスの鎧をどちらが引き継ぐかでアイアスと争いになったが、英雄たちの投票の結果鎧は彼のものとなり、恥じて狂乱したアイアスは自害した。トロイア陥落のためにはアキレウスの息子ネオプトレモスの参戦と敵軍からアテナの神像パラディオンを盗み出すことが不可欠と知った彼はネオプトレモスを迎えにいくとアキレウスの鎧を渡し、ディオメデスとともに敵陣へ潜入するとアテナの助力によってパラディオンを盗み出した。トロイアを落とすために巨大な木馬を作り、精鋭とともに中に潜り込むと全軍を引き上げさせ、トロイア軍がこれを引き入れると夜襲をかけ、引き返した軍勢とともにトロイアを陥落させた。

 帰国の途に付いた彼は一つ目の巨人キュクロプスの島に立ち寄ったが、その一人ポリュフェモスに仲間とともに捕らえられてしまった。オデュッセウスは持っていた酒で巨人を酔わすとその目をつぶし、巨人の飼っていた羊の腹にしがみついて逃れた。しかしこれをきっかけに巨人の父ポセイドンの怒りを買い、様々な困難に見舞われることになった。魔女キルケの住むアイアイエ島に立ち寄ると、偵察に行った仲間がキルケによって豚に変身させられてしまった。オデュッセウスは仲間を元に戻させるとキルケとともに一年の時を過ごした。彼女の進言によって冥界に赴き、予言者テイレシアスに帰国の手段を聞いた。再び帰国の途に付くと、セイレーンの島に近づいた。彼女の歌に惑わされないよう仲間の耳に耳栓をし、自らはマストに縛り付けさせてその歌を聴いた。しかしポセイドンの送った嵐で船が転覆し、彼一人が海の精霊カリュプソの住むオギュギア島にたどり着いた。その島で七年もの時を過ごした後筏で出発したが再び嵐にあい、海の女神レウコテアに救われると魔法のヴェールを与えられてパイアケス人の住む島に泳ぎ着いた。休んでいるところを王女ナウシカアに発見され、王のもとに導かれると王は彼をイタケ島まで送り届けることを約束した。 イタケに着いた彼は妻の元に数多くの求婚者が集まり、無法な振る舞いをしていることを知ると、乞食に身をやつして潜り込んだ。彼の乳母であったエウリュクレイアは彼の足を洗ったときにその傷跡から主人であることに気づいたが彼は黙らせておいた。ちょうど開かれていた競技会の場で息子テレマコスと協力して弓を取ると求婚者たちを皆殺しにし、妻との再会を果たした。

常に登場する場面

  • アキレウスへの使節
  • ドロンの待ち伏せ
  • アキレウスの鎧をめぐるオデュッセウスとアイアスの争い
  • アキレウスの鎧の帰属を決めるための投票
  • ネオプトレモスに鎧を渡すオデュッセウス
  • パラディオンを盗み出すオデュッセウスとディオメデス
  • ポリュフェモスの目を潰すオデュッセウス
  • ポリュフェモスから逃れるオデュッセウス
  • キルケの館
  • 冥界を訪ねるオデュッセウス
  • セイレンの島
  • ナウシカアと出会うオデュッセウス
  • オデュッセウスの足を洗うエウリュクレイア
  • 求婚者たちを殺すオデュッセウス

まれに登場する場面

  • テティスから鎧を受け取るアキレウス
オルトス / O R T H O S / .

テュポンとエキドナから生まれた怪物で、西の果てに住む怪物ゲリュオンの飼う番犬。ヘラクレスゲリュオンの牛を奪いに来たときに殺された。

しばしば登場する場面

  • ゲリュオンとヘラクレスの戦い
オルフェウス / O R P H E U S / ΟΡΦΕΥΣ

アポロンあるいはトラキア王オイアグロスと、ムサの一人カリオペとの息子で高名な詩人。竪琴を持つ若者として描かれる。 アルゴナウタイに参加した彼はセイレーンの魔性の歌をかき消して危機を脱するなどいくつかの活躍をした。 帰国した彼は精霊エウリュディケと結婚したが妻が毒蛇にかまれて死んでしまうと冥界に下り、ハデスカロンさえその竪琴の音色で心を奪われて妻を連れて帰ることを認めさせた。しかし地上までもうすぐというところでハデスとの約束を破って後を追う妻の姿を振り向いてしまうと二度と連れ帰ることはできなかった。一切女性を近づけなくなってしまった彼はこれに恨みを抱いたマイナスたちに体を引き裂かれて死んでしまった。その首は海を漂い、エウリュディケと叫び続けた。

常に登場する場面

  • オルフェウスの死
  • 首だけになったオルフェウス
オレイテュイア / O R E I T H Y I A / .

アテナイ王エレクテウスとプラクシテアとの娘。北風の神ボレアスにトラキアへと連れ去られ、その妻となった。彼との間に翼を持つ二人の息子カライスゼテス、クレオパトラとキオネの二人の娘をもうけた。

常に登場する場面

  • オレイテュイアを誘拐するボレアス
オレステス / O R E S T E S / .

ミュケナイ王アガメムノンクリュタイムネストラとの息子。ギリシア軍がトロイアと間違えてミュシアに上陸した時にテウトラニアの王テレフォスアキレウスが傷つけた。その後ギリシア軍は一時帰国していたが、テレフォスはその傷は傷を付けたものによってのみ癒されるという神託を聞いたので密かにミュケナイに赴き、クリュタイムネストラの助言に従ってオレステスを人質に取り、治療してもらう代わりにトロイアへの道案内をすることになった。 トロイア戦争が終結しミュケナイに戻ったアガメムノンは妻と、留守中に通じていた従兄弟のアイギストスとに暗殺され、幼かったオレステスはフォキス王のもとに預けられ、王子ピュラデスと親友になった。成長した彼はデルフォイに赴くと裏切り者の母とアイギストスを殺すよう神託を受けたため、ミュケナイに向かい姉と再会を果たすと母とアイギストスを殺害した。しかし母殺しの罪で復讐の女神エリニュスたちに追われ、狂気に陥りながらもアポロンに守られてデルフォイにたどり着くと、アテナイのアレイオスパゴスの法廷で裁かれることが告げられた。法廷での投票は同数だったが、裁判官役のアテナの票で彼の無罪が確定した。

常に登場する場面

  • オレステスを人質に取るテレフォス
  • エレクトラと再会するオレステス
  • アイギストス殺害
  • デルフォイのオレステス
  • タウリスのイフィゲネイア