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ポカポカ春庭 演劇いろいろあらーな

ポカポカ春庭の演劇いろいろあらーな2006 

演劇いろいろあらーな
2006日付 タイトル 劇団劇場 主演
02/28 大正モダンな遺産騒動 劇団昴 奥原千加、茂在眞由美、田徳真尚、渡辺慎平 原作:ノエル・カワード、翻案・演出:三輪えり花
07/30 猫の恋昴は天に昇りつめ 劇団昴 遠藤英恵 西本裕行 飯田和平 遠藤純一 畑澤聖悟
8/21 手を離したとき目をつむっていたのかそれとも最初から目はつぶれていたのか 劇団COLLOL 吉田ミサイル
未映子
田口アヤコ

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大正モダンな遺産騒動
2006/02/28 水

 『大正モダンな遺産騒動〜どうぞご自由に〜』三輪えり花翻案・演出。
 ウェルメイド喜劇という分野になるのかしらん。イギリスの劇作家ノエル・カワード原作の喜劇。時代設定を日本の大正時代に移した翻案劇です。

 「翻案」は、オリジナルの骨格を残しつつ、劇世界を再構築する手法。演劇ではよく使われる。シェークスピアの翻案など、山のようにある。
 翻案は、原作者の名前を残すけれど、「オリジナル作品に近い」と、私はみなします。セリフなどを、どの程度元の戯曲から残すかによっても異なるけれど。

 楽しい劇でしたが、何の宣伝もしていないワークショップ公演なので、300人収容の三百人劇場に30人くらいしか観客がいない。平日の昼間公演でしかも雨の日。せっかくの無料公演なのに、もったいないことでした。

 衣裳も装置もそれなりに手間をかけて、大正モダンな雰囲気をだしているし、役者達はそれぞれ熱演だった。たった30人で見るのは、申し訳ないみたい。
 30人しか見る人がいなかったのでは、あまりにもったいないので、せめて、劇のあらすじ紹介を。

 トランプのゲームで、「大貧民」という遊び方、ご存じでしょうか。カードのやりとりで、あっという間に大富豪が大貧民に転落したり、貧民がジリジリと成り上がっていったりします。
 「〜どうぞご自由に」も、富豪と貧民、ひっくり返り裏返り、、、

 莫大な財産をめぐって、登場人物入り乱れてのだまし合いあり、腹のさぐり合いあり。
 さて、遺産は誰の手に、という楽しい喜劇です。
 以下、劇のあらすじです。
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 舞台はあるお金持ちの居間。下手にはピアノと暖炉。上手にはテーブルと椅子。中央にソファ。中央奥は、二階へ上がる階段と、中庭へ出るドア。
 時代は、大正。

 かっては、有り余る財産で優雅に暮らしてきた綾小路家。
 当主は、数年前から若い女性と別の家で暮らしはじめた。それ以後、急速に財産はなくなり、当主の死後、遺産どころか、借金の抵当で住む家さえ差し押さえられそうなことがわかった。

 これまでの生活を変えることなど思いも寄らない綾小路夫人。たよるは南米で大富豪になったという夫人の実弟のみ。
 夫人の5人の子どもたち、息子ふたりと娘三人は、のらりくらりとそれぞれの生活のぬるま湯につかっている。

 長男は、これから先の時代に実用化されるのかどうかもわからないのに、車のエンジンなどというものの開発にうつつをぬかしている。
 次男は音楽三昧、作曲が趣味だという。

 長女は、文学一筋。家の中で読んだり書いたりすることだけが生き甲斐。働くことなど考えたくもない。
 次女は自分の美貌を自覚しているが、女を器量の善し悪しでしか判断しないような男と結婚するなどまっぴらごめんと思っている。
 三女はまだ何の考えももたない女学生。遊ぶことさぼることだけを考えている。

 実弟の富坂正明氏は、南米の鉱山で一山あて巨富を築いたが、妻子は持たなかった。
 彼の財産は、一番近い身内、すなわち綾小路夫人の5人の子どもたちに譲られる。

 ただし、富坂氏はひとつ条件を出した。甥2人姪3人に平等に財産を分けるつもりなどさらさらない。
 5人の中で、もっとも社会的な成功をおさめた一番優秀な者に全財産をゆずるというのだ。1年半後、一番叔父を満足させることのできた成功者が、すべての財産を独り占めできる。

 5人の競争がはじまった。
 長男はエンジン開発の趣味を仕事にして、新興自動車会社での開発チームの一員となった。日本の自動車開発のトップランナーである。

 次男は作曲家として成功した。お金にならないクラシックの作曲から流行歌の作曲にかわったけれど。おかげで流行歌のレコードは売れまくっている。
 名家の一人娘、美貌の恋人と婚約寸前までこぎつけた。恋人は、莫大な財産相続を婚約の条件にしているが、次男は、自分が相続できるだろうと、自信たっぷり。

 長女は小説を書き始め、出版社から印税をもらえる身となった。
 次女は美貌の映画スターとなった。
 三女は女学校で最優秀の成績となり、表彰をうけて卒業した。

 さて、一番叔父を満足させたのはだれか。そして財産はだれの手に。
 叔父の「この世で最大の遺産」とは何だったのか。

 以下、ネタバレあらすじ紹介。

 ぐうたらだった5人の息子娘たち。
 叔父の莫大な財産めあてで、エンジン開発者、作曲家、小説家、映画女優、成績優秀卒業生となった。
 1年半の努力で、それぞれがひとかどの社会人になれたのである。

 叔父の「この世で最大の遺産」とは、この「努力して自立すること」を教えることだった。

 叔父が南米で買った鉱山は、金どころか、鉄も鉛もでないボロ山で、叔父には財産などビタ一文もない。

 どたばた騒動の末、叔父の財産などないことがわかって、財産めあてに婚約した次男のフィアンセは、さっさと見切りをつけて婚約解消してしまった。
 心からの愛情を持っていたのではない不実な婚約者との結婚をしないですんだ次男は、これからの人生を考えれば、幸運だったのかもしれない。

 愛する甥や姪に残してやれるのは、「自分の力で自分の人生を切り開け」という教えだけ。だが、ただ「働いて一人前になりなさい」と言ったところで、ぐうたらが身についている姉の息子娘がその気になるとは思えない。
 そこで、叔父は「全財産を一番成功したひとりだけにゆずる」と申し渡したのだ。
 結果的に、「自立」という代え難い財産を、全員が手にすることになったのだった。

 それぞれが、自分の選んだ道を着実に歩んでいく。自分で自分の人生を切り開いていけるという大きな財産がひとりひとりの手に残された、、、、のだけれど、財産がないことがわかって、ちょっと意気消沈の甥や姪たち。

 そこへ一通の電報が南米から届く。なんの価値もないと思いこんでいたボロ山から、なんと金鉱が見つかったというのだ。叔父は一転、大富豪となったのだ。
 叔父の条件は前回と同じ。これ以後、一番叔父を満足させる人生を切り開き続けた者が全財産を、、、、、。がぜん意気軒昂となる姪たち甥たち。

 さて、今回の「金鉱が見つかった」と知らせる電報って、、、、?

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 観客数は寂しい公演だったが、終演後、劇場近くの喫茶店で阿子さんとおしゃべり。休日の楽しい一日となった。



猫の恋 昴は天にのぼりつめ
2006/07/30 
猫にとって、恋の季節は春。「猫の恋」は、春の季語です。

猫の恋止むとき閏の朧月(松尾芭蕉)
なの花にまぶれて来たり猫の恋(小林一茶)
色町や真昼ひそかに猫の恋(永井荷風)
はるかなる地上を駈けぬ猫の恋(石田波郷)

と、地上を駆け抜けていく「恋する猫」もいれば、天にのぼりつめる「猫の恋」もある。
「猫の恋 昴は天にのぼりつめ」これは、山口誓子の俳句。

 劇団昴ザ・サード・ステージ『猫の恋昴は天にのぼりつめ』をみました。
(7/30 14時開演)作:畑沢聖悟 演出:黒岩亮 出演:遠藤花江・石本裕行ほか)

 私が朗読ボランティアをしているときに知り合った視覚障害を持つ友人阿子さん。演劇が大好きで、バリアフリー観劇活動に熱心にとりくんでいます。
 聴覚障害者のために字幕をつけた上演、視覚障害者のために音声ガイド(役者の動きや舞台装置などを解説する)をつけた上演を企画し、ときには自ら「音声ガイド作成プロデューサー」となります。手弁当で録音スタジオに通い、音声ガイドの録音にも立ち会いました。

 『猫の恋』には残念ながら、音声ガイドがつきませんでした。そのかわり、終演後、バックステージツアー(視覚障害者のための舞台説明会。晴眼者も参加できる)がありました。

 『猫の恋』観劇は、阿子さんとその友人の車いすの方ふたりといっしょでしたが、舞台に上がるためには、客席の階段を下ってから、舞台に上がる階段が3段あり、車いすでは舞台見学ができなかったので、残念ながら、ふたりには待っていてもらいました。。
 三百人劇場入り口からホールへ入るにも、2段の階段があるのですが、ここは、若手のスタッフが数人で車いすを持ち上げてくれます。

 阿子さんを案内して舞台の上にあがりました。小道具やセットにさわってみたり、セットの裏側に回ってみたりしました。

 客席からは太くて立派な大黒柱に見えたのに、裏へまわってみたら、ベニヤ板をはりあわせたハリボテ柱だったり、ピアノは音量調節するために、ピアノの形につくった大道具の中に、電子ピアノを仕込んであったり、などの工夫がわかりました。

 また、2階後方の照明ブース、音響ブースにも入れてもらいました。狭いブースにたくさんの機材。スタッフは最高の効果がでるように、細心の注意で機器をあつかっています。
 舞台をみているときには役者の演技以外に目が向きませんが、バックステージツアーに参加すると、スタッフ一同の演劇にかける熱意が伝わってきます。

<「猫の恋」つづく>


2006/08/14 月
やちまた日記>夏のおでかけリポート(13)劇団昴8月公演「猫の恋」

<畑沢聖悟「猫の恋」 登場人物>

☆倉橋さくら:43歳、独身。若いときはピアノ個人教師をしていたが、生徒もいなくなった現在は、スーパーのレジ係りをしている。大工の父がひとりで建てた家を守り、父の帰りを信じている。今は、猫の正ちゃんが家族。(さくら役:遠藤英恵)
 今日は、見合い相手との「結納」の日です。
☆正ちゃん:倉橋家の猫、15歳。人間の年に換算すれば80歳くらいにあたる。(猫役:西本裕行)

☆倉橋玄二郎:70歳。兄の仕事を引継ぎ、工務店を経営。姪さくらの将来を案じている。
☆倉橋はな:玄二郎の妻。ようやくさくらの縁談をまとめて、結納にまでこぎつけた。
☆倉橋正太郎:生きていれば80歳。18年前、山へ材木を探しに出かけたまま行方不明の大工の棟梁

☆赤田まさを:39歳、銀行員。体重106kg.。さくらと見合いを経て、結納に臨む。
☆赤田まこと:まさをの兄。41歳。経営していた事業が傾き、金策中。
☆赤田まきこ:まさをの母。65歳。、倉橋家の200坪の土地を利用して事業のたてなおしをはかりたい。

☆北島夫妻:まさをの妹とその夫34歳
☆林夫妻:さくらが昔ピアノを教えてやった生徒さち子。その夫次郎は、結婚式や結納式のプロデュース会社の課長補佐。しきたり通り、結婚式や結納式を仕切るのが生き甲斐。
☆緑川真智子:さくらの高校同級生。林さち子の母親。専業主婦。
☆梶山弘子:さくらの同級生。元演劇部員。バツイチのコピーライター。
☆黒川夫妻:結納の仲人を務める、元さくらの高校担任教師

 さくらと赤田まさをの結納式当日。さくらが一人で守っている古い家の居間で行われる結納式は、結婚式をしないことにした二人にとって、大事なセレモニー。
 さくらの恩師を仲人とし、両家家族とさくらの親友だけの内輪の式が始まった。

 ところが、さくらが15年間かわいがってきた猫をめぐって、ひともんちゃく。
 さくらの家に同居すると言ってくれたまさをは、猫アレルギー。猫の毛でくしゃみがとまらない。

 同じく猫アレルギーのまさをの母親まき子。大事な息子がさくらの家に同居すると言うのなら、姑まき子も小姑夫婦もいっしょに住むのは当然のことと思っている。
 自分がこの家に住むようになったら、年老いた猫なんぞいてもらっては困る。さくらの叔父夫婦に出した結婚の条件は、猫の処分。

 嫁のさくらが息子より年上ってことも、まき子は気にしないことにした。結婚後も息子と同居するつもりだから、年くらい妥協しなくては。
 嫁の年齢よりも気になるのは、200坪の土地と、母屋、離れの建物。資産価値は合計でいかほど?
 
 赤田家の真のねらいはさくら自身でなく、さくらの持つ土地だという話を聞いていたのは、猫の正ちゃんだけ。
 そこへ突然、思いもかけぬ人物があらわれた。ふたりの結婚にストップをかけた人物とは。
 さて、さくらとまさをの結婚はどうなるのか。

 楽しいコメディ、客席は笑いの連続でした。
 真の愛を得て結婚しようとするカップル、200坪の土地よりも愛情ですよね。


手をはなしたとき目をつむっていたのかそれとも最初から目はつぶれていたのかジャンジュネ女中たちより
2006/08/21

 
 8/21に、王子小劇場で上演された「手を離したとき目をつむっていたのかそれとも最初から目はつぶれていたのか〜ジャン・ジュネ作『女中たち』より」という芝居を見ました。
 
 ジャンジュネの原作、女中の姉妹クレールとソランジュそして奥様のものがたり。
 ジャン・ジュネは、生涯のほとんどを孤児院と監獄ですごしたフランスの詩人・作家です。

 「女中たち」、パリ郊外で実際に起きた惨殺事件をもとに作り上げたという劇作品。虚構と現実、嘘と真実、空想と実際、ごっことほんとが入り乱れ、さて、どれが本当の私なのか、真実のあなたなのか、、、、、

 「女中たち」は、さまざまな演出家、さまざまな劇団によって上演されてきました。
 最近では2006年2月に「3軒茶屋婦人会(篠井英介、大谷亮介、深沢敦)」によって演じられたし、ちょっと古いところで1995年に渡辺守章演出、本木雅弘が妹クレールを演じて話題になりました。ジュネの作品の中でも、人気の高い戯曲です。

 贅沢三昧の愛人暮らしを続ける奥様と、奥様に仕える女中のソランジュとクレール姉妹。

 毎日のきつい労働、果てしなく続く女中の仕事。
 だが、姉妹には奥様には秘密の遊びがありました。奥様が外出してしまうと、ふたりは「奥様ごっこ」をして、かわりばんこに奥様気分を味わってきたのです。

 花や豪華な調度がいっぱいの女主人の部屋。女中の姉妹は、マダムの留守中、今日もふたりで「奥様ごっこ」をはじめます。
 つらい女中の仕事、みじめな屋根裏部屋の暮らしを忘れて、マダムが帰宅するまで、つかの間の貴婦人、虚構の上流社会を味わうのです。
 クレールが奥様役を演じるときは、姉のソランジュがクレール役を演じ、ソランジュが奥様のときは、クレールがソランジュの役。いつもの自分とはちがう自分になりきります。

 しかしもちろん、「ごっこ」は奥様の帰宅ベルとともに終わりになる。どんなに上流にあこがれても、現実に戻れば、ふたりは台所の臭い匂いが染みついた女中にすぎません。奥様がにくい、マダムを蹴落としたい。

 「ごっこ」のなかでは、クレール役のソランジュは奥様を絞殺したくなる。奥様の白いのどに手をかけて、、、、
 ソランジュが奥様のとき、ソランジュ役を演じるクレールは奥様を毒殺したくなる。奥様が優雅に飲み干すお茶のカップに10粒の薬をしのばせて、、、、

 マダムを金で囲っている旦那様は、密告により逮捕され、警察に拘留されている最中でした。
 警察に旦那様の罪を通報した密告者とは、、、、実は、女中姉妹。
 奥様を破滅させたいという願望が、密告となったのです。

 今日も奥様は着飾って外出。
 いつもの「ごっご」遊びがはじまりました。奥様の衣装やアクセサリーを身につけ、奥様気分も最高潮のとき、旦那様から電話がかかってきました。旦那様は釈放されるというのです。

 女中達は、「密告がばれてしまったのではないか」と、大慌て。
 このことが露見しないように、姉妹は奥様がいつも飲む「菩提樹のお茶」に10錠の睡眠薬を入れることにしました。そうすれば奥様は永遠のねむりにつき、ふたりの密告はうやむやに、、、
 「10錠よ。それより少なければ死なないし、多ければ吐いてしまう。菩提樹茶は、う〜んと甘くしてね」
 はたして、奥様と女中ふたりの運命は、、、、

<つづく>
00:01
演出家田口アヤコは、「女中たち」に、女優として「奥様」役で出ていました。
 東大芸術学専攻の学生のときからさまざまな演劇活動を行い、山の手事情社などに所属。現在は「COLLOL」主宰の劇作家、演出家、女優。
 
 田口アヤコ演出の作品は、「女中たち」のセリフとストーリーを取り入れたコラージュ作品。
 8月18〜21の王子小劇場公演のあと、利賀サマー・アーツ・プログラム2006 の「演出家コンクール」参加作品として、8月26日(土)に上演されました。

 ソランジュ役が3人(男2人、女1人)。クレール役が3人(女2人、男1人)
 この6人が入れ替わり組み合わせを代え、しかもソランジュがクレール役を演じるごっこだったり、クレールがクレールにもどったりするので、いったいだれがだれのセリフを言っているのか、ごちゃごちゃになったり、6人がいっしょに出て、それぞれ勝手に自分のセリフを言ったりする。

 また、ジャン・ジュネの役が自由に舞台の中を歩きまわったり、パントマイム風に動いたりする。最後に「女中のうた」という詩を朗読しながら客席のうしろへ消えていくまでは、ひとこともしゃべらない。

 ストーリーを追うことを目的にしていないから、ジャン・ジュネの原作を知らなくても、田口アヤコの独立した作品として見ればよいのだけれど、原作を知らない人には「なんだか難解でわけわからない話」と思えたみたいだったし、「あの、ずっとしゃべらない人は、なんのために舞台にいたワケ?」と、いう感想もきこえた。

 わたしにとっては、田口さんの才気を感じられたお芝居だったし、演劇映画文学などのAdaptation、改作翻案脚色について考えているところだったので、とても興味深い演出だった。
 以下は、田口さんがブログ「田口アヤコ 毎日のこまごましたものたち」に書いた「女中たちあらすじ」の後半引用です。http://taguchiayako.jugem.jp/?eid=297

奥様の 赤いドレス 白いドレス たくさんの花々
じぶんたちの屋根裏部屋のみじめさ
じぶんたちの生活のみじめさ
ごぼりとくさいにおいを放つ 台所の流し
なんどもなんどもくりかえす 奥様ゲーム
ゲームは奥様を殺すことで終わるはずなのに
女中は奥様を手にかけることができない
カーテンをドレスのかわりに巻き付け
上流のじぶんを演じるクレール
奥様を殺そうと殺そうと絞め殺そうと
毛布をめくることができなかったソランジュ
どこまで相手を責めても
相手は鏡にうつった自分とおんなじ顔をしている

ふたりは 奥様の夫 この家の主人のちゃちな犯罪を警察に密告した
ふたりの企てに反し
警察に取り調べを受けていた奥様の夫はすぐに釈放される
逃げることすらできないふたりは
また奥様ゲームをはじめる
最後に奥様を演じたのはクレール
この家のなかで いちばん高価な いちばんりっぱなカップで
ほんものの奥様を殺そう と用意していた
毒入りの菩提樹茶を飲む。

もっと高貴なじぶん
もっと美しいじぶん
もっともっとこんなんじゃあないじぶん
それは 彼女たちの手には はいらない。

ジャン・ジュネ作『女中たち』は、
「労働」と「消費」そして「愛情」という
現代の女性たちが(いまや男性よりもむしろ女性たちが)
ふりまわされている問題を描いた
「Paris」という都市の戯曲である。                      

労働 は もちろん疲れる。
おんなたちは 鏡の中の 疲れ やつれ しぼんだ自分を見て
ますます老いに近づいていくような気がする。
お互いのすがたをうつす鏡としての「姉妹」

結婚 への あこがれや
気持ちがうきうきする瞬間は すぐに 消 え る
それでも生き続けること
おんなでありつづけること
都市ではたらく おんなのはなし。

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 都市ではたらく女たち。現代の女中たち、会社の事務員や情報産業のIT端末機器オペレーターやデパートの売り子やスーパーのレジ打ちや、家庭で主婦と呼ばれる女中たち。

 こんなんじゃない自分、この自分とはちがう華やかな美しいものに囲まれた自分を求めつつ、働けば働くほど、自分をすり減らし自分の輝きが失われていくように感じている女たち。

 そんなすべての女中たちは、毎日鏡をのぞき込む。
 クレールとソランジュが覗いた鏡。こんなんじゃない自分、もっと美しいはずの自分。他者の輝きがねたましい自分。

 そんな自分をリセットするには、10粒の薬を入れた菩提樹のお茶をあおるしかないのか。
 ソランジュとクレールは、今日の私。今のあなた。

<「女中たち」おわり>
10:01
 


 

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