60年代の広告

［少年マンガ雑誌編］

４枚タッタ200円（デイリーレコード）〜1963[昭和38]年編

　３月14日の「海外にあなたの友を（国際フレンドシップクラブ）」以来、約２カ月ぶりの「60年代の広告」のデータ更新であります。
　恐らく、ある一定の年代以上の方には、“耳タコ”ならぬ“目イカ”状態で、瞼に焼き付けられているのではないでしょうか。
　ドーナッツ盤とも呼ばれていたシングル・レコードが１枚300円程度だった時代、ソノシートとはいえ、1枚に２〜３曲入っているレコードが４枚で200円というのは、確かに、破格の、「タッタ」という表現で強調されるに相応しい根付けではあったのだろうと思います。
　私も、折りに触れ、書かせてきていただいている通り、朝日ソノラマのマンガシリーズやケイブン社のポピュラーものなど、ソノシートには、結構、馴染ませていただいておりましたので、このデイリーレコードのものも、一度だけですが、購入したことがありました。
　この広告は、私が、レコードや他社のソノシートなどを買うようになる以前の、1963（昭和38）年、『週刊少年マガジン』の11月24日号に１ページまるまる使って掲載されたものです。
　文字が見える大きさの画像にしますと、やたらにファイルサイズが大きくなってサーバー容量を食ってしまう上に、皆さんがアクセスされたときにデータの読み込みに時間がかかってしまいますので、曲名につきましては、例によりまして、私が打ち込んだ表を作って、このページの下に張り付けてありますので、興味のある方は、そちらをじっくりとご覧ください。
　昭和38年といえば、これまでも、色々なところで取り上げさせていただいているように、１月から国産テレビアニメ第一号の「鉄腕アトム」の放映が始まり、続いて、「鉄人28号」「エイトマン」「狼少年ケン」などもオンエアされる形となって、まさしく、テレビアニメ元年となった年であります。朝日ソノラマのマンガ・ソノシートもこの年から発売され、ソノシートの方も、大衆化という意味では、この昭和38年辺りが「元年」だったのかなという気もするわけで、そういう時期に、このデイリー・レコードが、通信販売のソノシートとして、どんなラインナップを揃えていたかは、非常に興味深いものがありますので、独断と偏見に基づいて、そのラインナップの解説を試みさせていただこうと思います。
　まず、各音楽ジャンルの分け方ですが、「戦争映画音楽」「西部劇音楽」「軍歌・マーチ」「オリンピック国歌・学生歌」「世界名曲」「最新映画音楽」「クリスマスレコード」「山の歌」「最新ヒット曲」という９つのカテゴリーがあり、最も曲数の多いのが「最新ヒット曲」であります。“最新”の形容はついておりますが、よく見ると、1950年代後半あるいは昭和30年代前半というような時期にヒットしたロックンロール・ナンバーが中心で、しかも、中には、「北上夜曲」とか「赤とんぼ」「山男の歌」など、どこが“最新ヒット”なんだという曲も入っておりまして、既に30年も前の、個人的には何の利害関係もない広告とはいえ、思わず「責任者、出てこい」と叫びたくなってしまったりもするわけです。
　最新ヒット曲の中に、いわゆる日本の歌謡曲は入っていませんし、映画音楽も、邦画の曲は一曲もなく、すべて洋画となっています。日本の曲は、レコード会社との関係などから許されなかったということなのでしょうか。映画も、戦争映画や西部劇が、それぞれ独立したカテゴリーとなっている辺りに、まだまだ、映画が娯楽の王者だった黄金時代の雰囲気も漂っているような気がします。
　また、「軍歌・マーチ」や「オリンピック国歌・学生歌」というような分類にも、時代を感じずにはいられません。
　そういえば、私が小学校低学年の頃、行進曲が好きだった私の親父は、「軍艦行進曲」とか「君が代行進曲」「旧友」などのマーチ集や、それこそ、このデイリー・レコードの広告に入っている「星条旗よ永遠なれ」や「ワシントンポストマーチ」などが入ったスーザ行進曲集などのＬＰを持って、ステレオがあったお袋の実家に私と一緒に自転車で行っては、よく聞いていたものでした。
　「オリンピック国歌」というカテゴリーも、如何にも翌年の秋に東京オリンピックを控えていた時代状況を反映するものと言えるのでしょうが、「アメリカ国歌」とか「フランス国歌」あたりはともかく、当時の感覚で、フィンランド国歌とかインド国歌、ソ連国歌などというソノシートを注文する人たちは、どういうシチュエーションで、それぞれの曲を聞いていたのだろうと思わずにはいられません。中国にいたっては、当時のことですから、しょうがないのでしょうが、「中国国歌」ではなく「中共国歌」となっておりまして、そうした疑問は、さらに膨らんでくるわけであります。若い方のために、説明させていただきますと、「中共」というのは、「中国共産党」の省略形でありまして、「中共国歌」などという言い方自体、国語的表現として整合性を著しく欠いているような気がするわけですが、とにかく、商品としてラインナップされていたことは、紛れもない事実なのであります。
　もう一つ、疑問に思わざるをえないのが、「クリスマスレコード」のカテゴリーの中に、「北帰行」「かあさんの歌」「北上夜曲」という３曲が録音されているソノシートが入っていることです。「乙女の祈り」「別れの曲」「エリーゼのために」のソノシートも、かなり、疑問を感じますが、30年前には、この辺りの曲は日本人にクリスマスをイメージさせるものだったかもしれないと、無理矢理、自分自身を納得させようとしたりもしているわけですが、でも、「北帰行」「かあさんの歌」「北上夜曲」の３曲については、どうしても、納得するだけの理由が思い浮かびません。どなたか、その辺りの事情をご説明いただける方には、ぜひ、教えていただきたいと思います。

　それから、曲目リストの下にあるポータブル・レコードプレーヤーも、非常に懐かしいものでありますので、こちらは、画像を拡大してみましたので、じっくりとご覧いただければと思います。

　上の画像にある「4枚タッタ200円」の題字下の文字も見えないと思いますので、下に打ち込ませていただきます。

「〜17cm盤ソノレコード３３1/3回転〜
　お申込み手続きはかんたん、すぐお手元へ配達…〈戦争映画音楽〉でも〈クリスマス音楽〉でも、どこから何枚選んでも結構です。お好きなレコード番号を４つ（例S52、S4、H30、X3）と住所氏名をハッキリ、ご記入の上、代金200円（８枚なら400円）を封入して、下の宛先へ送って下さい。折返し完全包装でお手元へ直送します。送料はいりません。」