俺は今、日本で一番の監督だと思ってるよ(3)


★芸術作品と娯楽の間の映画が面 白い

 横着だから、権力指向ってのは全然ないですよ。映画ってのは、やっている間が短いから、どんなに長くても一年だから、一年位 はテンション持つわけですよ。一年間はガキ大将ができる。又、こう、いつでもそく描ける問題があるわけでもないしさ、深作さんも東映にいるからあれだけ「仁義なき戦い」撮ったけど、やっぱ4本目位 から全然パワー無いでしょう。で俺達の場合、「青春の殺人者」当ったから、そうね、次は「中年の殺人者」(笑)とはやっぱいかないしさ。撮れない時には、、プロデューサーでもやって、別 の次元のテンションで俺はやれるつもりだし、後輩の撮った映画のもぎりでもやってかまわないと思ってる。
 この、何んて言うのかな、自分が本気でそこにかんでいれば、必ずしもボスでなくていいと思っているよ。そう言う意味で、多賀(祥介)と組んだり、村上をかましたり、山本、まあそのへんとやろうとしているんだけど、本気で、その気でやらなければ持続しないとは思っているね。たくさんダメになったの俺見て来ているから。
 皆ピークの時に、俺付合って来てんだよ。 イマヘイの「神々の深き欲望」はピークで最後だったし、浦山(桐郎)とか、まあパキ(藤田敏八)とか、クマ(神代辰巳)さんとかね。その時代、その時代の監督と割と付合っているよ。でも、あの辺の人達はね、やっぱ自分でフィルム担いで地方回ったりしてないんだな。いや、しなくてすんだんですよ。
 で、俺なんかは、アメリカでスクーリングする為、罐担いであっちこっち回っていると、本気で自分の事、馬鹿じゃないかと思ったりもするよね。自分の物をね、見て下さいとウロウロするのは、本当に照れ臭いからね。しかし、やっぱ商売にしたいし、で、映画をそんなに崇高なものだと俺思ってないしさ、やっぱその程度のものだよ。
 今まで、映画をすごく芸術的に持ちあげるのと、 娯楽としか見ないのと、その両極端がいすぎたんだよな。俺はそのどっちでもないと思うからね。いくら独立プロ作っても、俺は創造社みたいな映画は作って行かないし、かと言って何とかの若大将でもないしさ、間の映画が作りたいんだよ。間の映画が一番面 白いよ。アメリカで言えば、「真夜中のカーボーイ」とか、「イージー・ライダー」だよな。
 でね、話もどすけど、例えばイマヘイがね、やっぱ失敗したのは外部の資本と組めなかったからなんだな。一応日活と組んだんだけど「神々の深き欲望」の時日活と八千万で契約して、当時だから少なくないですよ。で二千万の赤字今村プロで出し、日活は儲けたんだけど、今村プロは作った時点でもう大きな赤字出してる訳ですよ。そんなやり方ではやはり続く訳ないし、又、金だけじゃなくて、作家的にも行きづまっていたと言うのも確かにあるんだけどね。で、彼はその打開策として学校始めたりするんだけど。
 でも、彼はまあ、最初の約束とは大分違ったけどさ、俺の映画に金出してくれたもんね。もっともそのへんで大喧嘩したんだけどさ。だって、まだ撮っているのに、フィルム無くなったから、何とかしてくれと言ったら、もう撮影中止だと言いやがるんだ。で、その時俺みんなのポケットから小銭出させて、小銭掻き集めてフィルム買って来て撮影続けたんだから、本当に。だkら、恨みもつらみもあるんだけどさ、まあ……しかしね、大島渚は一人も監督を育てなかったけど、イマヘイはとにかく一人育てたし、そう言う意味じゃたいしたもんだと思っているよ。

★恨みのある連中がごまんといる

 今の日本映画界本当に変える為にはね、やはり、各会社の第一線作家が一度全員飛び出さなきゃだめだと思うよ。クマさんも深作さんも、家のある、家から泣きつかれている長男なんだよな。まあ、家のある奴て、うらやましくもあるけどさ(笑)。俺はそこを追い出されたから、大きな事言えるんだけど。やはり作家てのは本当は自由なんだよ。人間と置き変えてもいい。日本の映画作家は、中途半端な会社との馴れあいで、新しいグランド見つけようとしないんだな。会うと、みんな企画が通 らないと、ブツブツ言っているよ。B級監督ならそれでもいいよ。いや、もっとも今の一線の監督達は、本来B級なんだな。A級が撮れない時代になって、彼等が出てきたんだよ。
 大島はA級だったよ。会社飛び出してまで自分の作家活動完結させようとしたしな。俺とは方向違うけど。だから奴等は、皆A級に対して今でもコンプレックス持っているよ。大島や今村が颯爽と問題作を撮っていた頃、神代なんか「かぶりつき人生」出して、あいつ馬鹿かと言われたんだから(笑)。
 何もしなくても、奴等は年間数百万もらうんだ。でも、本気でやれば、数千万は稼げる連中なんだよ。人間的には好きな奴が多く、ある時期まで付合ってきたけどさ、でも奴等一回の冒険もしてないから、それを思うと、もういいかげん嫌だと思う所まできているよ、正直言うと。
 俺も色々あって……、盗作作家にされたりさ(「宵待草」のシナリオの盗作問題の事)、本当にチョット飲めば、ブッ殺したくなる位 恨みのある連中がごまんといるんだよ。
 それでも撮るまでだと(当時日活で第一作目の話があった)、撮りゃあ勝ちだと我慢してた時期もあるけどさ、根本社長に感謝しなきゃな。俺があと一週間と言う時に、長谷川はトロツキストだと、待ったかけてオジャンにしてくれたんだから。
 半年まて、一年半まてばと人に色々言われたけどさ、それから……、わがままな助監督になったよな。首にならないのが不思議な位 の。「アフリカの光」の時なんか、サボル為の現場だったし。

★「青春の蹉跌」は気持悪い

 うん? いいよ、ちょぼちょぼ飲んでいれば、じゃあワインもう一本もらおうか、しかしワインは癖になるな、甘くて。
 「青春の蹉跌」? 好きなのか?あれはシナリオが原作よりひどかったんだよ。で、クマが頼んで来たんだよ。やりたくなかったんだけどな、クマが俺にこだわるので、一週間しかないので、デッチあげていいかと言ったら、いいと言うので、俺の大学生活全部ぶち込んで書いたんだよ。だからあまりに自分の事書きすぎているので 、気持悪いよ。
 クマの部分もあるよ。エンヤトットの発見とかね。それはそれでいいんだけど、そいつを何度も使うから、クマは馬鹿なんだよ。デングリ返りは一回でたくさん(笑)。

★俺はエモーショナルな人間

 「青春の殺人者」が古いと言われるのはね、父親殺しが書けてないからなんだな。母親殺しは書けているんだけど、でも、この作品では無理だと思ったよ。次で描いてみようと思っているけど。
 後半乱れているのはね、一生懸命(シナリオを)変えようと思ったからなんだ。(田村)孟さんの書いた通 り撮ったら、完全に大島映画になるからな(笑)。俺はエモーショナルな人間だし、それがロジックより強いと思っているよ。
 孟さんは、前衛であらねばならないと思っているし、エリートだったんだな、創造社の運動は。大島の映画は家長の映画で、責任感の映画なんだよ。俺は押しつけは嫌いだし、オピニオンリーダーってのは気持悪いんだよ。それに、さっきも言った様に、創造社は一人の作家も育てなかったけど、今村はまがりなりにも一人育てたからね。才能あるのは確かに大島なんだけど、でも俺は、今村の方が好きなんだな。あの苔の一念映画がね(笑)、あのパワーがね。
 才能あるかないかは、タイトルのつけ方で判るよ。「神々の深き欲望」なんてヒドイもの(笑)。田村孟が「愛のコリーダ」のタイトルみて、「大島はこういう、観客を騙す事やるから良くない」と言ったけど、なあに、田村も昔は一緒にやっていたんだよ(笑)。

 

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