神話学とギリシア陶器

ギリシア陶器には神話が頻繁に描かれていることから、神話の研究においても重要な資料となっています。現在のギリシア神話の知識のほとんどは文学によるものですが、これは当時の神話観をすべて表しているわけではなく、あくまで著者の目で見たものであるわけです。陶器画を研究することで、別の視点から神話を捕らえることが可能になるのです。また陶器画には現在伝わらない神話の場面を描いていることがまれにあります。パトロクロスを治療するアキレウスや、イスメネを殺そうとするテュデウス、竜の口から吐き出されるイアソンなどはその一例です。

また当時の人々の宗教観を探る上でも重要な資料になっています。これはほかの美術にもいえることですが、年代を経るごとに神々の若年化(アポロンやディオニュソスなどの有髭から無髭への変化など)が進んでいくこともその一例といえるでしょう。また当時の宗教儀式を描いたものも多く、ヘルメスやアポロン、アテナなどへの祭儀の場面をみることができます。