ギリシア陶器とは

ギリシア陶器は、陶器といっても、日本の信楽や織部、あるいはヨーロッパのマイセンなどの陶磁器とは全く違う印象を受けるのではないでしょうか。これらの陶器が作られたのは古代ギリシア、つまりギリシア神話やプラトンなどの哲学、古代オリンピック、あるいはパルテノン神殿などで有名な古代ギリシアで、石器時代から作られ続けている土器は別として、簡素な描写の幾何学様式時代を含めると紀元前12世紀から紀元前三世紀末まで、日本がやっと縄文時代の晩期に位置していよいよ弥生時代が始まろうかという時代に作られたものです。

その最大の特徴はなんといっても豊かな装飾にあります。装飾とはいうものの、同時代の日本の土器や後世の陶磁器とも全く違う独特なものでした。特に紀元前7世紀頃に誕生した黒像式(赤い陶土の上に人物像を黒く塗りつぶし、刻線で衣服や表情などを描くもの)、あるいは530年頃に生まれた赤像式(黒像式の逆で、人物のまわりを黒で塗りつぶし、その内側に筆で表情などを描くもの)は豊かな表現を可能にしました。そこに描き出されたのはギリシア神話の一場面であったり、当時の人々の生活の場面であったりと多様で、その優れた作品などは一種の絵画を見ているような感覚さえもたれるかも知れません。
この古代ギリシアの陶器は古くからヨーロッパにおいては注目され、その研究分野は美術だけにとどまりません。この先はギリシア陶器がいかに様々な分野における重要な資料となっているかを簡単にまとめてあります。