陶器はどうやって焼いた?
実はこれはなかなか難しい問題です。現代の学者はギリシア陶器の作り方を復元しようと試みました。難しかったのはギリシア陶器特有の赤と黒の色彩を出すことでした。赤い色彩は陶器の土そのままの色であることが分かっていたので、彼らは陶器に塗られた黒い色彩の成分を分析しました。するとこれは陶土とほぼ同じ成分であることが分かりました。両者の違いは粒子の大きさの問題で、黒いほうは陶土を水に溶かした後の上の層に溜まった細かい粒子を集めたものでした。ではなぜ粒子の違いで色に違いが出てくるのでしょうか。その答えは陶器の焼き方にありました。
まず窯の煙突を開いて火を焚き、酸素を多く取り込むようにします。こうすることで陶土の中の鉄分が酸化して陶器は塗った部分も含めてすべて赤くなります。

次に煙突を閉じて酸素が欠乏した状態にします。こうすることで陶土の中の鉄分が還元され、陶土も塗った部分も黒くなります。
最後に再び煙突を開いて酸素を取り込みます。そうすると今度は陶土は赤くなるものの塗った部分は粒子が細かいために酸素を取り込む隙間がなくなり黒いままで残るのです。これは実験によって明らかになったことですが、きわめて微妙な温度と換気の調整が必要であることがわかりました。また有機物を加えるとこうした調整が容易になることがわかり、古代にも何らかの有機物が加えられた可能性が高いと思われますが、それが何だったのか、木の灰、蜂蜜や油などの説はありますが、解明されていません。