水運搬器
ヒュドリア / Hydria / 'ΥΔΡΙΑ


ヒュドリアは水を意味する「ΥΔΩΡ」を語源とし、その名の通り水を運搬するための容器であった。背面に垂直の把手が一つ、側面に水平の把手が二つ付くのが特徴で、前者は運ぶときや注ぐためのもので、後者は持ち上げるためのものであった。  ヒュドリアはコリントス式などで既に用いられていたのを模倣したもので、黒像式のものはネックアンフォラのように頚部と胴部がはっきりと区分されており、黒像式型ヒュドリアとも呼ばれる。

一方赤像式のヒュドリアはベリィアンフォラのように頚部と胴部が連続しており、カルピスと呼ばれて黒像式のものとは区別されるほか赤像式型ヒュドリアとも呼ばれる。しかし黒像式の中にもカルピスを用いたものがあり、その逆の例も見られる。

装飾は肩にフリーズ状の画面を、胴部にパネル状の画面をそれぞれ配置するのが一般的で、把手のある側に装飾されることはほとんどなかった。一方カルピスは胴部を唯一の画面として扱うことがほとんどで、装飾も少ない。 形式的には年代とともに細くなる傾向が見られる程度である。
Cf. Harvard 1963.69 (Perseus Project).

大きさ :およそ40−50cm。
カルピス / Kalpis / ΚΑΛΠΙΣ

カルピスはヒュドリアの中でも頚部と胴部が連続した輪郭を描くもので、そのほとんどが赤像式で描かれていることから赤像式型ヒュドリアとも呼ばれる。カルピスという名称はヒュドリアとほぼ同じように用いられていたようだが、これらをそれぞれの器形に当てはめて区別したのは近年の学者である。カルピスが登場したのは六世紀の終わり頃で、その後も赤像式の終焉まで製作された。


装飾は簡素な場合が多く、画面はパネル状の例もあるが、上下の境界のみを描いたものが多い。形式的にはやはり年代とともに縦へ伸びてゆく傾向が見られる。
Cf. Harvard 1960.340 (Perseus Project).

大きさ:40−50cmのものが多いが、30cm近いものも60cm以上のものもある。