初期アルカイックのクーロス像


クーロス像のポーズはエジプトの像から強い影響を受けており、正面を向いて直立し、両腕は脇に沿ってまっすぐ下におろし、握った拳の親指を正面に向けている。左足を少し前に出しているが、体の重心は両足に均等にかかっている。初期のクーロス像にはエジプトの巨像の影響からか等身大をはるかに越えるものが見られ、とくにデロス島出土のクーロスは現存する胴体だけで3.5mもあり、全体では10mを越えていたと推測される。

ディピュロン出土の頭部(Athens 3372:図1)とメトロポリタン美術館所蔵のほぼ完全なクーロス像(New York 32.11.1)は特に古く、顔は細長く、正面と側面に連続性の見られないやや角張った感じである。目は大きなアーモンド形で、全身の筋肉の表現もまだ稚拙である。これら二点は同じ作者によるものと考えられているが、近年ケラメイコスからこの彫刻家によるものと思われるクーロスがスフィンクスやライオンの像とともに出土している。



図1 ディピュロンのクーロス

やや年代の下るスニオンのクーロス(Athens 2720:図2)も特徴としては似ているが、特に脚の筋肉の表現には進歩が見られる。





図2 スニオンのクーロス

一方デルフォイで発見された二体のクーロス(Delphi 467,1524:図3)はポーズこそ前者と同じだが、かなりずんぐりとした印象を受ける。この像はヘロドトスの言及するクレオビスとビトンの像と考えられ、アルゴス人の奉納とされているが、実際に銘文にはアルゴス人の彫刻家によって作られたことが記されている。残念ながらこの人物の名前は一部が欠けているが、ポリュメデス或いはアガメデスと復元されている。近年この像をこの兄弟ではなくディオスクウロイに同定する説もでている。


図3 クレオビスとビトン像(?)

参考文献
前期のクーロス像については、J.Boardman "Greek Sculpture: the Archaic Period"(1991) pp.22-24