壁面の建造と瓦葺き


セジェスタの神殿では先に円柱がすべて建てられ、梁と破風までが乗せられた状態で放置されていますが、パルテノンでは円柱を数本残したままナオスの壁を作り始めており、その手順は一様ではなかったようです。神殿の壁には特に古典時代にはブロック状の石材が用いられました。ブロックの上下面はきわめて丁寧に磨かれ、中には接合面が分からないものもあります。一方側面は中央部と底部がやや凹んでおり、表面もやや粗くなっています。ブロックは両端から配置され、その列の最後のブロックは火ばし状の道具でつりおろされ、それぞれI字型の金具で隣のブロックと固定されました。

屋根を支える梁には木材が用いられました。小型の神殿であれば問題はないのですが、パルテノンのような大型のものになるとナオスの幅が広すぎて強度が不十分であると考えられて、途中で支えるためにナオスの中にも円柱が配されました。ただ外周のものと同じでは太すぎるので、細く小さい円柱を二段に重ねることでこれを解決しました。

梁と垂木が組まれるといよいよ瓦が葺かれます。瓦はテラコッタ製が一般的でしたが、中には大理石を用いたものもあります。瓦のタイプは日本のものとそれほど変わりはないようです。丸瓦にあたる部分には地域によって断面が三角形のものと丸いものがありました。軒丸瓦の軒先にはパルメットなどの装飾(ANTEFIX)が取り付けられました。軒平瓦の軒先と、平瓦の神殿正面部にはロータス・パルメット文などが描かれることが多かったようです。