基段と円柱


基礎工事が終わるといよいよ建築が始まるのですが、その手順を解明するのに役立つのがシチリアのセジェスタに建立途中で放棄された神殿です。もちろん最初に基段が敷かれるのですが、三段の基段が一度に敷かれるのではなく、上段のステュロバテスは円柱が建てられる外周部のみで中央部は残されたままになっています。また外周部の石材の側面には運搬のための凸部がそのまま残されています。

石材の積み上げにはいくつかの滑車を取り入れたクレーンが用いられたと考えられますが、実際どのようなものが用いられたかは明らかではありません。ただ船の帆を張る技術がこれに応用されたであろうということが推定されています。

次いで円柱が建てられるのですが、この時点ではやはり凸状のものが側面四ヵ所に残り、まだ溝も掘られていません。ただ一番下のドラムのみはステュロバテスと接する下から数センチの部分のみ後で加工するのが困難なため先に溝が掘られています。

ドラムの上下面の表面の処理は一様でなく、同心円状に四つに区分できます。外周部は上下のドラムとフィットするように平らに極めて丁寧に仕上げられています。次のエリアは高さは同じですが、処理はやや粗く、ずれないための摩擦を多くしているのだと考えられます。次の層はやや凹んでいて、表面の処理も粗くなっています。内側の層は外側の層と同じ高さで、やはりかなり丁寧に磨かれています。

中央部には上下のドラムとつなぐための穴が開いていて、ここに四角いプラグが挿し込まれました。そのプラグにはさらに丸い穴が開いていて、そこに棒状のものが挿し込まれました。これらは固定するためのものというよりも、正確に積み重ねるためのものであったと考えられます。