
『死に顔を見ていないから、
パキさんも孟さんもオヒゲも
まだ、生きてるんだ』(4)
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主演・監督の映画が観たかった 荒井 役者としてはどうなんだろう。 長谷川 「俺はヒラミキ(平幹二朗)と養成所で同期だったんだ」というのが最大の自慢だったからね、昔から。普通 の能力の人でも俳優は難しいのに、どうしてあんたみたいな言語障害がと、俺は思ったがね。だから『ツィゴイネルワイゼン』観た時は、いやあ、うまい具合に使うもんだなあと感心した。(鈴木)清順さんの演出も立派だったんだろうが、パキさんも立派に俳優してた。なんか、妙な魅力と生臭さとあってさ。『ツィゴイネルワイゼン』に尽きるんじゃないか、やっぱり。あとはまあ、しっかり上手くはなったよ。俳優年鑑に名前を載せてるプロの芝居にはなっていったが……。晩年は「笠智衆の後がま狙ってるんだ」なんて言ってた。まんざら冗談でもない顔してたなあ。俳優やるのは、パキさん、照れくさくないんだよね。これが俺の天職だと思ってる。本来俺は俳優なんだという……。 荒井 やっぱり、その意識はあったのかね。 長谷川 それは凄く強かったよ。見舞いに行った時も、役者の話しかしないもん。入院前に、自分が途中降板しないでギリ頑張った昼の連ドラの話を、えんえん喋ってた。 荒井 役者としてまっとうしたと。 長谷川 この人、自意識はまるで俳優さんなんだなあと聞いてた。俺、あんなに早く逝くと思わんかったから「また来るわ」で終わりになっちゃったんだ。もっと監督のパキさんとも話しとけばよかったよ。パキさんに対して俺が持ってる感情は、みんなわりとそれに近いんだろうが、先輩であって年上だが、駄 目な兄貴みたいな感じはある。面倒見てた気がする。別に何してたわけじゃないんだが。でも、葬式で久しぶりに会った桃井章に言われたよ。パキさん、最後まで「ゴジのことだけが心配だ。あいつを頼むぞ」って言ってたって。あの人から見れば、俺が駄 目な弟だったんだろうな。 荒井 結果、撮った映画が31本。少ないほうじゃないけど。 長谷川 でも、こうやってフィルモグラフィー見ると、羨ましいねえ。いや、本数だけじゃない。なんか、生きざまの歴史って感じがするじゃないか。そういう意味じゃ、俺なんか18年前に死んじまったようなもんだ。非常に短命でな(笑)。ただ、パキさん、役者稼業に専念しだして監督したい欲求は薄くなったのかな。スター監督時代の方法論とは別 の方法論をみつけないままに、俳優業もあるし、毎日さびしかねえやってとこへ入っていったのかもしれん。それと、年齢もあると思うよ。要するに、青春映画の人だから。大人の映画をさ、模索はしたんだろうけどな。『赤ちょうちん』で中年男出したり。 荒井 あのへんからね、出してくる。 長谷川 自分の分身というか、中年男であったり、少年、青年でない男のドラマを、見よう描こうとは、してたはずなんだが。それを芯にもってきてやる映画の土壌てのは、特に日本には無いじゃない。大人の青春映画みたいなの。馬鹿なたとえで言えば『マディソン郡の橋』を自分で主演してでもやってみるか、みたいなふうに考えればな。 荒井 そうなんだよな。 長谷川 それくらい言って挑発してやればよかったね。自分で演じるということをくっつけてやると、本人はやったかもしれんね。パキさん主演・監督の『マディソン郡の橋』……観たかった気がするな。
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