
『死に顔を見ていないから、
パキさんも孟さんもオヒゲも
まだ、生きてるんだ』(3)
| 編集と仕上げに自信を持っていた
荒井 その後、『エロスの誘惑』『赤い鳥逃げた?』『エロスは甘き香り』『赤ちょうちん』と助監督してるんだが、「パキの映画はゴジが監督してる」なんて噂が立った(笑)。 長谷川 いや、たしかに声と態度はデカかったよ、俺は。でもその大半は言語不明瞭な監督のスピーカー役としてだよ。あの人は編集と仕上げに凄く自信をもってる人だったね。いろいろみんなに好きなこと言わせて好きにやらせるが、仕上がる映画は、まぎれもなくパキさんの映画になってる。ま、当たり前と言えば当たり前なんだが。俺はいつも感心してたよ。「そんなに見えてるんなら、もっと現場でシャキッとしろよ」と怒りたくなる時もあった。でも、だから俺なんかも安心して言えたんだ、無責任な意見を。仕上げに自信のない監督には、無責任な意見言うと危ないからね。映画がバラバラになる。 荒井 パキさんの場合は、なんとなくパキ色になってるんだな、終わると。 長谷川 いやいや、ほとんどパキマークが付いてるよ、全篇(笑)。『赤ちょうちん』の時、感心したんだ。ラスト、秋吉久美子が狂うシーンがある。部屋で鳥食って。そこでパキさん、「ゴジ、カモメ飛ばすからな」って言うんだよ。おいおい、今から生きたカモメ持って来て飛ばせって言うんじゃねえだろうなと思ってたら、紙切ってさ、「みんなでこれ持って影つくれよ。カモメだよ」って言うんだ。馬鹿じゃないかコイツって思ったな。俺には全く完成型が見えなかった。まあ、やりてえってんだから、やらしとけって。ただ、この馬鹿な影絵大会のないバージョンも一発撮っとこうって、押さえを撮ったような気がする。パキさんの目論見が外れた時、やばいから。だって、目で見てたら、ただの小学生の影絵なんだから(笑)。ところが、仕上がるとコレが良いんだよ。編集して効果 音とMが付くと、次の高岡健二の泣きのカットに、感情的にもばっちり繋がるんだ。あんなにうまくいくとは思わんかったな。低予算映画のヒットアイデアだった。 荒井 音楽の入れ方なんか、うまいもんだよな。 長谷川 そうそう。いわば叙情派なんだろうが、そのちょっとキザな叙情が、俺は嫌いではなかったね。俺は生身のあの人の傍にいたからだろうな。あの人の映画だけ見てると、なんだ、気取ってんじゃねえやと思ったかもしれんが、傍にいると、ダサイ人だったからな。本人はかっこいいと思ってたんだろうけど、いわゆるテキパキとかっこいい人じゃないんだよ。なんかまわりに保護者意識を喚起するような。甘え上手なんだな。クマさんの場合は、わりと戦略として甘え上手があったと思うが、パキさんはね、無自覚な甘え上手なんだよ。だらしない甘えん坊って感じで、その分、かわいいと言やかわいいんだよな。 荒井 70年代に23本、80年代はだいたい1年に1本で、『リボルバー』撮ってから9年、撮らなかった。 長谷川 俺はまあ自分も撮らなかったから、そんな9年なんか、まだ俺の冬眠の半分だぐらいなもんでよ。いや、自慢してるわけじゃないが(笑)。それと、自分が助監督つかなくなったこと、自分自身が監督になったことと関係あるのかなあ。『帰らざる日々』は嫌いじゃなかった。あとの映画、観てるんだろうが、印象薄いというか、パキさんてこんなにつまんなかったっけというふうにノノなんか、あんまり面 白いと思って観なかったな。なんでだろ。客観的にはどうなんだ、力落ちてきてたのかな、やっぱり。 荒井 『ダブルベッド』と『リボルバー』はね、自分で言うのもなんだけど、パキさんのいい仕事だったと思うよ。『ダブルベッド』は、ベッドシーンをちゃんと撮るなら書くと条件ふうに言って、ちゃんと書くからちゃんと撮れよなって。 長谷川 きれいに言や「照れ」なんだが、悪く言やあ、生々しいものを直視することは怖い人なんだよ。 荒井 ト書きに買いてあるからって、照れながらやってたみたいだな。「お尻に指入れる」って書いたら、撮ってたよ。 長谷川 そこまで書いてあげないと駄 目なんだろうね。自分でそういう発想はしない。だから、1回言語化されてればさ、それは受け入れられるんじゃないかな。それこそ、現場で、助監督の俺が「そこはケツの穴に指を入れようぜ」というと、「ゴジ、下品なこと言うんじゃないよ」みたいになりかねない(笑)。ビビっただろうな。俺の頃は間違いなくそうだよね。 |
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