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ヒル亜綱ヒルド科 大きさ 約2cm  分布 日本各地(北海道、四国を除く)
 褐色で背中にしまが3本ある。湿気のある林や山地の沢沿いなどにすむ。吸盤を使って、地面などをすばやく移動できる。シカやサルなど動物の血を吸う。活動は5月〜10月で、冬は越冬し、寿命は約3年
 水辺にすむチスイビルと同様、血を吸うさいに、痛みを感じさせない物質と、血が凝固しにくくさせる物質(ヒルジン)を出すので、いつのまにか血を吸われて、気がつかず、靴下が血で染まっていることがある。 
ウォッチングのコツ・・・できれば出会いたくないものだが、雨上がりの雑木林、普通に草原なんかを歩くと、いつのまにか、長靴ものぼって、靴の中へと、彼らは、果敢に襲ってくる。
 すぐに気づいて取り除けば、しばらく血が出るが、じきに止まる。でも気がつくのに時間がかかると・・出血はよりひどく、1〜2時間止まらないこともあるという。ただ、毒等はないので、それで病院にいくほどではない。また、予防のためには、ヒル除けのスプレー等
忌避剤という)が市販されており、かなり効果があるとのこと。
参考サイト ヤマビル研究会)→ちなみにこのサイトでは具体的に地域の発生情報も閲覧できる! 

ヤマビル 



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↑ ビニールごしのヤマビルだー!

↑ おしり(左)と口(右)の吸盤

 今回はヤマビル・・・・・。
 こんな恐ろしい生き物もそうはいまい。気を許しているときにとりつかれると、ほんとに気を失いそうになる。特に毒があるとか、命にかかわるわけではないのだが、自分の体がパンパンになるまで、ヒトの生き血を吸う。そして、ヒルジンという血がかたまりにくくなる成分を注入されるので、出血がだらだら続いたりする。

撮影 : 栃木県塩谷町 (平成18年6月上旬)

 ひと通り、森を散策し、車に戻ってから約5分。ぽんぽこが凍りついた声で「これ、なに!」とうめいた。「なにか足についてる・・・・。とれない!」という。ああ、ヤマビルに違いない、と僕は瞬間的にひらめいた。どうしよう・・・・・・・。実はまだ、ヤマビルの写真を撮ったことがない。しかも、人の皮膚に喰らいついている瞬間なんて、これからもなかなか撮れないように思う。うーーーん、どうしよう?
 と、その時、ぽんぽこが「ひーーーーーー」と悲鳴を上げた。そのモノを目視で確認したに違いない。その恐怖は経験した者にしかわからない。・・・・・撮影はひっぺがしてからにしよう。

 ぽんぽこにとりついていたヤマビルは、下の写真の個体。まだ、皮膚を食い破る前だったが、一度吸いつかれるとなかなかひっぺがせられない。爪を立て、そうとう力を入れて、やっとはずれた。すると今度は、すばやい動きで僕の指やら爪に吸いつく。もう手がつけられない。なんとかビニールに突っ込んで、ようやく撮影開始。

 つや消しの肌がヤマビルの特徴。水性のヒルやコウガイビルのようなヌルヌルの肌ではない。じっくりと見ると、口だけではなくて、お尻も吸盤になっていて、シャクトリ虫のように移動する。この前後二つの吸盤がやっかい。皮膚から口の吸盤をひきはがしても、おしりの吸盤はひきはがした指に吸いついている。一度取り付いた獲物は絶対に離さないぞ、という執念のかたまりのような体だ。
 寿命は3年から4年と言われているが、一度の吸血で1年ほど生きるとのことだから、最低でも一生のうちに3回から4回は吸血しなければ天寿はまっとうできないという計算だ。ちなみに、生まれてから一度も吸血できなければ、2ヶ月しか生きられないというデータもあるそうだ。

 湿気のある林や山地の沢沿いなどにすむので、そういう場所では十分に注意が必要。特に雨の多い時期はヒルの活動が増え、梅雨の6月と台風の8月は被害にあいやすい。どこにでもいるというわけではないが、いるところにはゴロゴロいる。僕の経験では、10分ほどの散策で4匹のヤマビルが服や靴などについていたことがある。

 ところで、僕は何度か取り付かれたことがあるが、血を吸われたことがない。ヤマビルの生息地と知らずに散策しても、車に戻ってから5分くらいの間にヤマビルに気づき、吸血される前に除去したことが数回ある。首やすねについたヒルは、じっとしていたら十分にその気配を感じることができるということだ。それ以降、車に乗り込む前にまず、十分に衣類や足、首などの地肌を確認する。そして、車に乗ってからは5分くらいは車を出さずにヒルを探す。それだけで被害は格段に減るはずだ。

 もうひとつ、僕がヤマビル被害にあわない理由。それは、僕がふだん入る山にヤマビルが少ないということが一番の理由である。ヤマビルはどこの山にもいるわけではないということだ。ところが、最近事情がちょっと変わってきた。
 
 元来、シカや猿などのほ乳類に吸着し、血を吸っていたヤマビル・・・・。ところが最近、これらのほ乳類が人家周辺に生息域を広げており、そのほ乳類と一緒に移動しているヤマビルも、同時に生息地を拡大しているという。
 かつて、秋田のとある地方では、ヤマビルが増え、庭先や風呂場で被害にあったり、農作業ができなくなったり等、日常生活に大きな影響があったそうだ。

 そんな恐怖の生活が、いつか僕らのすぐ近くでもはじまるのかもしれない・・・・。

ヤマビル対策の基本
 湿気のある林や山地の沢沿いなどにすむので、まず、生息する環境を知ろう。地面から靴を伝って登ってくるので、生息地ではできるだけ同じ場所にとどまらない、座り込まないなど気をつけること。また、雨が降ると活動性が高まる。特に雨上がりの蒸すような天候のときは、普段以上の注意が必要だ。

1.予防
肌をできるだけ出さないようにする。
  長そで、長ズボンはもちろん、帽子や首にタオルを巻くなど。
長靴をはく
  足元から取りついてくるので、長靴は効果大。
  長靴とズボンに隙間が出来ないタイプ(ひもで口を締めるタイプなど)がさらに良い。
  さらに、ズボンと長靴の隙間をテープなどでふさぐという方法もある。
忌避剤を使用する。
  市販の虫除けはさほど効果なし?とのこと。ヒル専用の
忌避剤があり、効果もあるようだ。
  また、塩が苦手なので、塩水に浸した布などを靴に巻く方法もあるらしい。
・ヒルの付着をこまめに確認する。
  これが一番効果的? 特に複数で山に入るときは、仲間同士でチェックしあおう。


2.被害にあったら
・ヒルをひっぺがす
  ライターやタバコの火、塩などが効果的だそうだ。でも、
忌避剤がかなり有効とのことである。
・止血の前に傷口から血(ヒルジン)を押し出す。
  吸血の際にヒルが注入するヒルジンという物質が血を止めにくくする。
  まずは血と一緒にヒルジンを外へ出そう。ポイズンリムーバーも効果的。
・ばんそうこうで止血
  ヒルジンが残っていると出血がだらだら続くので、注意!
・かゆみが残る場合は
  かゆみが残る場合は虫さされやかゆみ止めのぬり薬(抗ヒスタミン剤軟こう)をぬろう。


3.その他
・ヒルを他の場所へ持ち出さない
  服やバック、車などについたヒルも確実にチェックし、他の場所へ持ち出さない。
  最近、ヒルの生息域が拡大しているそうなので、十分に気をつけよう!
 

 このヤマビル、「気づいたら血だらけだった・・・」というのが被害のパターン。想像以上にすばやく動くので、気づきにくいということと、吸血の際にヒルジンと一緒に、痛みを感じさせないようにする成分も出すらしい。だからといって、ヤマビルの被害はこの出血だけなので、毒があるとか、命にかかわるとか、後遺症が残るとかはない。でも、気持ち悪さは群を抜いているので、山の嫌われ者の代表的存在となっている。
 
 ヤマビルの被害防止の対策を下にまとめた。これで確実ということはないので、ヤマビルの生態を十分に勉強してから、山に入って欲しい。

(公開 : 平成19年7月29日)