ヤマトマダニIxodes ovatus

 下の写真はあろうことか僕のわき腹。
 いや、失礼・・・。僕のメタボリックなおなかを見て欲しいのではなかった。今回紹介するヤツはマダニ。正確にはヤマトマダニIxodes ovatus)だ。一泊の散策行から帰宅し、ビールを飲みながら何気なく脇を触ったら、小さなほくろみたいなのができていた。嫌な予感がしてよく確かめてみたら、写真のダニが食いついていた。もちろん食事中の彼女(ダニはメスしか食いつかん)の食事は僕の血。よりによって、メタボな横っ腹に食いついてくれたが、基本的に皮膚の柔らかい部分が刺されやすい。で・・・・どこで出会ったのかがさっぱりわからない。福島栃木の2ヶ所で、わりとハードに散策したのだが、直感的には福島県桧枝岐のような気がしている。
 人の血を吸う恐ろしい生物・・・。いや、マダニの恐ろしさはそれだけではない。人の血を吸いながら、いろんな菌をばらまくので、感染症を媒介することがあるのだ。

 日本では人の血を吸うマダニの仲間が約18種もいるらしい。子どものころはよくダニに食われたが、北海道で普通に見るダニはシュルツェマダニIxodes persulcatus)。写真のヤマトマダニとは種類が違う。ヤマトマダニの特徴は赤い足シュルツェマダニの足は黒いので、判別の手がかりになる。

 血を吸われることは非常に不快で腹立たしいことであるが、問題なのはマダニ類の持っているさまざまな病原菌によって生じる感染症だ。ただし、マダニに咬まれれば100%病気になるというわけではなく、感染率は案外低いらしいので、必要以上に神経質にならないほうがいいと思う。僕としてはダニに咬まれても冷静に!ということを強調しておきたい。
 さて、以上を踏まえてダニに咬まれて起こる感染症について触れておこう。僕は専門家ではないので、気になる方、興味のある方はご自身で調べていただきたい。

 日本では特にライム病ツツガムシ病日本紅斑熱などが有名だ。ただし、それぞれの感染症は、特定のダニの持つ、特定の菌によって引き起こされる。ライム病シュルツェマダニツツガムシ病(新型)タテツツガムシフトゲツツガムシというように・・・(かつて風土病として有名だった古典型ツツガムシ病を媒介したアカツツガムシは消滅したとされるらしい)
 ということで、ヤマトマダニについても調べてみたが、さまざまな病原菌を持ち、ライム病の菌類も持つらしいのだが、ヒトへの感染は報告されていないとのこと。つまり、ヤマトマダニと感染症の関連がよくわからなかった。だからといってヤマトマダニが安全な部類のマダニだということではない。事実、僕の咬まれた箇所は、半年近く小さなしこりのようになっていた(病院には行かなかったが)。菌を持ち歩いている生き物なのは間違いないということは認識しておいたほうが身のためだ。
 

平成17年10月 たぶん、福島県桧枝岐村(もしかして栃木県大平町)

クモ綱ダニ目マダニ亜目マダニ科  大きさ オス3.2mm メス2.3mm 分布 屋久島以北の日本全土  
昆虫に似ているが、クモの仲間。足は4つ8本ある。日本全国に分布しているが、特に北海道、東北に多いとされる。マダニ亜目には体の固いマダニ科と、体の柔らかいヒメダニ科があるが、日本にはマダニ類は60種ほど生息し、うち18種〜20種ほどが人や家畜の吸血をするといわれている。ダニは数千種とも2万種とも言われているが、マダニはダニの中では大型種。沢沿いの斜面や森林のササ原などに生息する。 
ウォッチングのコツ・・・山の中をひたすらヤブこぎするしかないだろう。家に帰ってから体中を点検しよう。

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↑ 吸血中のマダニ(と僕のおなか)

 ところで・・・・。
 ダニ防止の有効策は調べてみたけど見当たらない。肌の露出を極力避け、ヤブから出たら体中を点検しよう。僕のパターンでは帰宅後に見つけることが多い。すぐに引き剥がせば病原菌に感染する確率が低くなるという。できるだけ原型のまま引き剥がすこと。頭だけ皮膚に食いついたまま残してしまったり、体液と一緒に病原菌をばらまくという悲惨な結末もありうるらしい。また、血を吸って満腹になったダニが、気づかないうちにとれるというパターンもあるらしい。たっぷりと血を吸われるのみならず、咬まれたダニの種類はわからなくなるし、病原菌をしっかりともらってしまう確率が高い、最悪のパターンだといえる。

 いずれにせよ、時には重症化することもあるダニの被害。ダニに咬まれた時は、早期発見、早期受診が重要になるので、アウトドア系の活動をしたあとは、体調の変化にくれぐれもご注意を。

↑ そして彼女は引き剥がされ、僕は勝利の雄たけびを上げた