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ヒル亜綱ヒルド科 大きさ 3〜4cm  分布 日本各地
 やや平たい円柱状で、両端が細い。背中にしまが2〜3本ある。のこぎり状のあごがあって、魚や貝など、動物に傷をつけて血を吸う。水田や池、沼にすんでいる。
 ヒルに血を吸われても痛みなどを感じないので、気がつかないことが多い。吸われても毒はないが、抗凝血物質があり、血が止まりにくい。ヨーロッパなどではその作用を利用して、ヒルを使って治療を行っていた時代があるそうだ。そのため、チスイビルの学名Hirudoは、ラテン語で医者を意味しているという。 
ウォッチングのコツ・・・田んぼの中をそーっとのぞいたり、その周辺を流れる用水路の水が減っている小さな水たまりを探してみよう。びろーんと細長く伸びていたり、川でも水の緩やかなきれいなところでは、しげっている水草を網ですくうと捕まえることがある。

チスイビル 



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↑ でたーーーー! 
チスイビルだー
!!!!!

← 抵抗するドジョウ

 水の抜けた用水路・・・・。ほんの少し残った水たまりをのぞくとピチャピチャと生き物の気配だ。まず、小さなツチガエルが3〜4匹、トウキョウダルマガエルも1匹飛び出した。水中は魚が何匹も逃げ回っている。・・・・・・ドジョウだ。

 しかしこのドジョウ、なんだか雰囲気が変。よーく見ると、僕から逃げているのではなく、別の生き物と格闘中であった。その正体とは・・・・・・・・。

 こいつによく食われていた子ども時代の記憶がフラッシュバックする!
 背筋が一瞬ぞくっとするが、記憶の断片を拾い集めて整理していくと・・・・あれ? よく食われたけど、そんなに怖い記憶がないぞ・・・・。
 僕のチスイビルの記憶は、小学生になるかならないかのころのものがほとんどだ。「あ、また食われた」程度でヒルを引き剥がす。・・・・ただそれだけ。時どき血が滲んでいるが、無傷のことも多い。ようするに「大したことのないヤツ」なのである。

 はだしで田んぼの中のおたまじゃくしを追いかけていたころの思い出だ。いるのが当たり前のような生き物だったし、長靴をはいて水辺に行くようになったころからほとんど食われた記憶がない。田んぼや用水路などで水生生物を網ですくっていると、時おりこのヒルが混じっている。水草ごとすうくと、たくさんのゲンジボタルの幼虫に混じっていることもあるから、わりと水流のある、きれいな水にすんでいるようだ。

平成18年10月  栃木県鹿沼市

 チスイビルが怖くない理由のひとつが、彼らの食性だ。写真のように魚などの小動物を襲って血液を吸うのだ。よくいる普通の生き物と変わらない。
 ほ乳類や、ましてや人間など、リスクが大きすぎて、彼らも積極的に襲わない。

 写真の状態では、ドジョウがどんなに暴れても、チスイビルが離れることはなかった。一度吸い付かれると、もう逃げられない。ヒルはドジョウの動きにしなやかに体をくねらせ、まるでドジョウの体の一部のように舞い踊る。
 

 ほんの1〜2分の出来事であったが、この後、ドジョウはピクリとも動かなくなった。その様子を見届け、僕はドジョウごとヒルを手ですくい上げた。用水路の中に頭をつっこんでの撮影にくたびれたので、水から出して撮影しようと思ったのだ。
 しかし・・・・・・・そのとたん、ヒルはドジョウの体から離れ、猛ダッシュで僕の手からこぼれ落ち、用水路のふちのコンクリートの上に落ちた。あれれ・・・・。
 そしてドジョウは・・・・? 何と、ドジョウまで僕の手から跳ねて、そのまま用水路の水たまりに戻っていった。ドジョウはすっかり元気。まだ、皮膚に穴は開いていなかったのだ。
 絶対逃げられないはずのドジョウは、僕の気まぐれというか、不精によって命を永らえた。
 そして、哀しいチスイビルは、いそいそと再びもとの用水路に戻っていった。気の毒なことをしてしまったと後悔する。 
 

↑ 哀しいチスイビル

 哀しいチスイビルは、その後どうなったのだろうか? 雨が降るまでは、狭い水たまりの中で、逃げたドジョウと同居するのだろう。

 チスイビルも気の毒であるが、ドジョウもずいぶんと気の毒だ。



(2006.12.21公開)