甲虫目コガネムシ科 大きさ オス9〜14mm メス8〜12mm 分布 本州、四国、九州 |
オスはきれいなルリ色をした小さなクワガタ。メスは黒〜褐色。5月〜7月頃活動、高地にすみ、5月頃からおもにブナの新芽に集まり、汁をすう。くち木の中に産卵する。本種のほか、キンキコルリクワガタ、トウカイコルリクワガタ、ミナミコルリクワガタなど亜種がある。 |
ウォッチングのコツ・・・ウォッチングの方法は2つあって、1つは幼虫が暮らす朽木材を割って、掘り出す方法。秋以降ならば幼虫は成虫になっており、そのまま冬を越すそうだ。もうひとつは5月〜6月のはじめ、ブナの新芽に飛んでくる成虫を観察する方法。ただし、材を割る方法は環境への影響を考慮して慎重にすべきだ。特に産卵木の見分けがつかないうちは、他種も含め、生き物の生息環境を壊してしまう。僕は春のブナ林ウォッチングをおすすめする。コルリ以外にもいろんな出会いが待っているはずだ。いずれにせよ、採集は最低限に控えよう。 |
コルリクワガタ
平成18年6月 福島県南会津地方
ブナの芽吹く頃、その新芽に集まるクワガタがいる。
残雪を抜ける風がまだ冷たい6月のはじめ、ブナの森でコルリクワガタを探した。
そーっとブナの枝先を見ると・・・・・・いたいた、独特のオレンジの足が動いている。
うーん、なかなか素敵な昆虫だ。意を決してブナの森まで来た甲斐がある。
場所は福島県南会津地方。いろんなサイトで紹介されているので、地名を出しても差し支えないのだろうと思いつつ、現地で何人もの採集者に会ったので、地名はこの程度で勘弁してもらおう。
ブナの森と残雪の山々
コルリクワガタは、標高が高い、ブナの森に生息する。下界よりも少し遅い春を迎えた山歩きは、実にさわやかだ。写真は尾瀬にほどちかいところ。地名を伏せるまでもなく、見覚えある人も多いだろう。
← 残雪の残るブナ林
ブナの森にはまだ雪が残る。
大きなブナが芽吹く頃はコルリクワガタはまだ発生していない。 雪が溶け、まだ若いブナたちが雪の合間から顔を出し、芽吹く頃、彼らが一斉に発生する。
この季節、残雪は危険が多い。雪のおもりがとれて、突然、木がはねおきたり、積雪に隠れている空洞や小川に落ち込んだりすることがある。
十分に注意してほしい。
↑ ブナの若葉を渡るコルリクワガタ
ルリ色に輝く、小さな姿。クワガタの仲間の中でももっとも小さな種類のひとつだ。一見クワガタに見えないが、ヒゲ状の触覚(しょっかく)はたしかにクワガタムシだ。よく見ると小さいけれどしっかりとクワガタの歯(あご)がついている。幼虫も小さいけどクワガタ特有の形状だ。
体色は地域によって変異が大きい。山ひとつ隔てただけで、緑色が強かったり、ルリ色が強かったりする。ここ南会津の個体はルリ色が強い。
↑ 新芽にルリ色のおしりがちらり
ルリ色のおしりがチラッと見えているのがわかるだろうか。気をつけないと、新芽に頭を突っ込んでいるコルリを見逃してしまう。
一般的なクワガタは、夜、樹液に集まるが、コルリクワガタは昼間にブナやミズナラなどの若芽の汁をすう。
コルリクワガタは、タイミングがあうと、一日に百匹も、二百匹も採集ができるそうだ。 しかし、採集をしても寿命は短いので、飼育には向かない。
今回は一番初めに目をつけた一本のブナの木に、10匹前後のコルリがついていた。じっくりと撮影に時間をかけ、浮いた時間をたっぷりとブナの森の散策に費やした。
雪解けの水は大きな音をたて、狭い沢いっぱいに次から次へと流れていく。ウグイスたちがよくさえずっている。突然、バサッという大きな音が森に響く。雪に抑えられていた若木が、雪解けにあわせてはねおきた音だ。新芽はどんどん大きくなって若葉になっていくけれど、こうやって次から次へと新しい新芽が誕生していく。
・・・・ブナの森はすべてがたくましい。
← 交尾中。下がメス。
↑ コルリ メス
動き回っているコルリクワガタはたいていがオス。メスを探しているのだと思う。
若芽がメスとの出会いの場でもある。また、飛んでいる小型の甲虫も注意して探してみよう。
↑ メスをみつけたら・・・
オスとメスが出会うと交尾が始まる。
この時季、ブナの森はたくさんのコルリクワガタが飛び交う。しかし、その期間は短く、恋は刹那的だ。あっというまに子孫を残し、死んでいく。
ブナの新芽を見つけたら、ていねいにひとつずつ探してみよう。逆光なら見えにくいが、慣れてくるとシルエットで見つけられる。
メスの体色は、黒く、オスよりもひとまわり大きくて丸みがある。
↑ ブナの新芽をひとつずつチェック!
↑ オスは動き回る
(2006.7.22 公開)