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(2007.1.12公開)

ウグイ
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平成18年9月    秋田県田沢湖

↑ ウグイだ

↑ 田沢湖・・・・・・ただただ美しい湖だ

コイ目コイ科ウグイ亜科  大きさ 12〜45cm  分布 北海道〜九州
 日本全国、湖、沼、河川上流から、下流、河口の海水域まで生息域がきわめて広い。遊泳能力が高く、適応力が高い。浮遊生物や、水生昆虫、藻などを食べる。
 産卵期は鮮やかな赤い3本の婚姻色が表れる。海で生まれたウグイは、12月から1月ごろ、河口付近に集まり、水温が11℃から17℃になった増水時に一斉に川をさかのぼり、産卵地に向かう。川のウグイはそれより少し後に、水温が13℃から15℃になったころに産卵地に向かう。上流域では水温が低いため5月ごろになる。産卵地は中流域の浅い砂礫の水底。稚魚は2〜3年で成魚になる。
ウォッチングのコツ・・・・川の上流域では普通種なので、わりと簡単に会える。春の産卵期では婚姻色の出た群れに会えるかもしれない。田沢湖で観察するならば、辰子像の立つ湖岸がポイント。まちがいなく会えるだろう。
死の湖、田沢湖

 田沢湖は、日本一水深が深い湖で、かつては摩周湖に次ぐ透明度を誇っていたが、太平洋戦争中の電力供給策・農業振興策として、強い酸性の玉川の水をひきこんだために、水質が悪化、死の湖となった。
 東北電力生保内発電所は、県内最大の水力発電で、一方から田沢湖に取り入れた玉川の水を、また別の口から玉川に戻すことで現在も稼動している。
 この「毒水」が田沢湖を汚染し、田沢湖にしかいなかった
固有魚クニマス絶滅。そのほか、生物のほとんどが死滅した。
 1972年からはじまった石灰石による水質の中和対策で、徐々に水質が改善されてきた。紹介したウグイは、この過程で放流されたもの。一見、とても美しい湖だが、生物の多様性はまだ戻ってきていない。

↑ 湖岸に下りて

 さらに湖岸に近づき、撮影を試みる。幸い、早朝の陽は順光だ。魚の姿が肉眼でも確認できる。見覚えのあるこの魚は・・・・・。

 田沢湖で魚を観察できるとは思ってもいなかった。魚がほとんど棲んでいないと聞いた記憶がある。それがこんなにも群れを作って泳ぐ魚がいるとは!
 なんだ?こいつらは?!

 それはまったく予想もしていなかった出会いであった。
 場所は秋田県田沢湖。前日は車中で泊まり、今日の予定は何も考えていなかった。事前に調べても、秋田県の具体的な生き物情報が少ないのである。白神山地は前夜にかすめただけ。時間のあるときにゆっくり攻めよう。帰路の距離を考えて、岩手、山形に少しでも近づいておこうと思い、田沢湖に決めた。

美しい辰子姫は龍と化し、湖の主(ぬし)になったという悲しい伝説がある。
青き湖のその底で、辰子姫は今日もウグイたちの命をつないでいる。
そんな気がする・・・・。

↑ 湖畔に静かに立つ辰子像

↑ 水中撮影に挑戦

 水中撮影をしてみる。水は思っていたより冷たいが、魚たちは逃げる気配がない。
 後日、ウグイたちは人の手によって湖に放たれたと知った。

 田沢湖日本で一番深い湖だそうだ。周辺は緑深く、澄んだ空気の向こうから鳥のさえずりが聞こえてくる。そして湖は限りなく青い。
 有名な辰子像の側の駐車場に車を停めて、僕は湖畔に降りた。
 すると・・・・・・いきなりの魚群である。

↑ コバルトブルーの湖を泳ぐ魚の群れ

 さらに近づく。群れる魚はウグイだ。繁殖期、川の上流でウグイの群れはよく見られるが、今は時期はずれ。なんでこんな群れがいるのだろう・・・・・?

↑ そして力強く

 力強く泳ぐ豊潤な命の塊だ。
 つい最近まで、ここが死の湖だったということを忘れてしまう・・・・・。
 そう。ここは死の湖だったのだ。