〜 サケの遡上 観察シリーズ 第一弾 〜

ふるさとめざし、がんばれ、サケ! 

 10月、利根川にサケが帰ってきた。
 日本で生まれた彼らは、約4年の歳月をかけて、ベーリング海から生まれ故郷へ帰って来るのだ。場所は埼玉県行田市
(ぎょうだし)・利根大堰。利根川は日本でサケが遡上(そじょう)する川としては最南端である。
 
 まずは「大堰自然の観察室」で魚道を登るサケの観察だ。11月が旬だけど、もうすでにサケが集まっていた。ぱっと見ただけで10匹前後いるだろうか。

平成17年10月29日:埼玉県行田市・利根大堰(とねおおせき)

 堰(せき)の脇に作られた狭い魚道(ぎょどう)は、ことさら流れが急だ。激流の中、サケは体全体を使って上流を目指す。うーーーん、がんばれ。

 サケたちはみんな、川の底のほうに固まっている。1匹がスーッと上に泳ぎだし、そのまま勢いをつけて上流に向かう。すると周囲のサケたちも同じように上流を目指す。でも、何度挑戦しても失敗してしまう。

← 利根大堰

 対岸は群馬県千代田町。国道122号線のひとつ西側の橋だ。

 サケの遡上を調査するため、昭和58年から3ヶ所、調査用の魚道が設置された。

← 大堰自然の観察室

 この階段から地下に降りると、魚道をガラス越しに真横から見れる。 
 
 平日なら周辺の小学校の社会見学コースだそうだ。

←傷だらけのサケ

 ここは利根川河口から約150km上流だ。広くて大きな利根川には、北海道の渓流のような難所は少ない。
 にもかかわらずこの傷だ。サケにとっての150kmは、僕らには想像もできないきびしい旅なのだろう。
 がんばれ、サケ! 
 ふるさとはまだ先だ。

 突然、アナウンスが始まった。職員が大堰の説明をしている。あわてて飛び起き、時計を見ると15:03。観察室の付近に人垣が見える。やばい、サケの調査が始まった。車を飛び出し、人垣の後方から必死で写真を撮り始めたら、なぜか調査員のまん前のベストポジションにぽんぽこがいるではないか。


 その時、一人のおじいちゃんが僕に話しかけてきた。
 「あんた、プロかい?」
 「なんだ、プロじゃないの? じゃあ新聞関係?」
 「あ、そう・・・。ちがうの?・・・。でも、あそこの女の人は絶対プロだね」
 (・・・・・・・・げ、ぽんぽこのことじゃん)
 「だってよ、腕に監視員の腕章してるんだぜ」
 (・・・・・・・げ、ほんとだ・・・・)
 「なんかよぉ、監視員のオヤジに聞いたら、オヤジのかみさんだっていうんだよ」
 (・・・・・・・オヤジって・・・・さっきおしゃべりしていたおじいちゃんじゃねーか)
 「普通はあんな近くに入れてくれないよ」
 (・・・・・・・ぽんぽこよ・・・僕が寝ている間に、いったい何があった???)



                                    ・・・・ 
つ づ く
 

←オス
 
 オスは口がとんがっている。 

 味はあまり美味くないらしい。
 この地方ではシロザケと呼び、昔からお歳暮などに、この魚を贈っていたそうだ。

 

←メス

 メスは口が丸まっている。
 たくさんのイクラを抱えているのだろう。オスより美味そう。

← 観察室の中

 観察室の中。窓から魚道を観察する。 
 
 ひっきりなしに観察者が訪れる。親子連れが多い。が、たまに人が途切れる。
 そのときが、撮影のチャンス!

 撮影が終了してちょっと一息。時間は14:00少し前。15:00からサケの調査があるとのことだが、今日は多々良沼に行きたいから切り上げよう。ふと気づくと、同行してきたぽんぽこがいない。
 ぽんぽこは観察室の外で、関係者らしきおじいちゃんとおしゃべりしていた。これは長くなる。僕は多々良沼をあきらめ、車の中で休むことにした。秋の風が気持ちよく、僕はあっという間に深い眠りに・・・。

現地施設

 ※詳しくは、独立行政法人 水資源機構 利根導水総合管理所のホームページ
 サケの遡上が見られる魚道観察室の場所
  〒361-0004 埼玉県行田市大字須加字船川4369
   TEL:048-557-1501 FAX:048-557-1506
   アクセス:JR高崎線吹上駅下車 タクシー20分

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