図版と解説に関すること

戻る

 日本編上巻での石燕の図版の使い方は以下のとおりです。
 まず一ページにつき一点が基本です。(ただし見開きの場合は両ページに渡ります。)それから絵の下に横書きで、藤澤氏による短い説明文が書き添えられています。これらの絵は基本的に本文の内容とは関係なく、挿入タイミングにもこれと言って法則性は見受けられません。妖怪を選択した際の基準もよく分かりませんが、左右のページに一点ずつ図版を載せる場合には、それぞれ互いに関連のある妖怪を選んでいるようにも見えます。
 また口絵ページはすべて図版で構成されています。(石燕のほか、桃山人なども入っています。)

 さて、この本で使われている絵ですが、国書刊行会から出ている『鳥山石燕 画図百鬼夜行』のものと比べてみると、どうも違いがあるようです。例えば上巻では薄墨が舟幽霊の姿部分など必要最低限の箇所にしか使われていませんし、石燕によるもともとの解説文もありません。それ以外にも線の具合や外枠との位置関係など、微妙に異なる点がいくつも出てきます。これに関しては異本、もしくは新たに模写したものである可能性が高いそうです。(※この辺に関しては、詳しい方々からいろいろとご指摘いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。)
 また口絵ページには、模写と言うよりもただ似せて描いただけの図版が数点見受けられます。ここでは妖怪名からして変更されているものもありました。模本である可能性が高いようです。さらに藤澤氏は口絵でのみ、解説文の前にも妖怪名を明記していますが、漢字の使い方などが絵の方に書かれた名称と異なっている場合があります。

 さて肝心の藤澤氏による解説ですが、これはもともとの石燕の絵によって、いくつかパターンが見られます。まずもとから石燕による解説があった場合には、藤澤氏もそれに準じた解説を書いています。それから石燕による解説がない場合ですが、これは藤澤氏が独自に解説を付けています。ただし昭和初期にはすでに情報が失われていたと思われる一部の妖怪に関しては、まったくの想像で補っている模様です。(これが後に影響を及ぼしてきます。)
 もちろんこのパターンにも例外はあります。その辺は個別検討の際に見ていきたいと思います。

2003.2.19 update