死への賛美     ジャコモ・レオパルディ

 

 この世に一つ動かざりしは

 全ての生の終に至るは

 自ずからなる我身が摂理は

 死の来りて(それ)が身に宿ること

 (さいはひ)は終に無けれど

 (いにしへ)より悲愴から

 我等を救う 深き夜は

 魂の彷徨から

 漆黒もて其が身を放つ

 希望欲望より生まれ出づる

 精神は疲弊し

 枯渇し 恐怖と悲愴は安らかに死す

 さうして 悠久且空虚なる

 永遠の歳月をば

 悲しみも無く歴し行く

 

 我等 一度(ひとたび)生まれしより

 幼き乳呑児にありしとき

 蒙昧なる恐怖と寝汗を

 雲霧の央に記憶し

 されど 我等は不安無く

 己が生涯を記憶す 我等とは何ぞ

 かの苦き一瞬を

 人生と呼ぶか 我等にとりて人生とは今や

 奇しき驚異とは思はざるか

 全き不可解なる死は

 生を全き不可解とす

 さうして 我等が人生其物は

 摂理に反せし人生は

 死からの逃亡を模索し

 今や 甦生の炎を吹き消さむとす

 幸無く 然れども安らかなる死に至りて

 生と死の何れをも

 祝福さるるを禁ぜらる

 

           (拙 訳)

 


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