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話しことばの通い路
Workshop for Nipponianippon Communicative Language& Culture Studies
HAL-niwa workshop2
ポカポカ春庭のニッポニアニッポン言語文化研究

ニッポニアニッポン語2004年2月3月  
ポカポカ春庭のニッポニアニッポン語 語種・和語漢語外来語

日付 タイトル
2004
02/24、25
語種 ことばのグループクイズ
02/26 呉音漢音唐音
02/27 語種 解説つづき
03/01 和語漢語外来語
03/02 外来語のいいかえ
03/04〜05 新聞のカタカナ語
2006
10/06
ちかごろ流行りの首相のオコトバ分析報告(首相の所信演説の外来語)
5-1-1 ポカポカ春庭のニッポニアニッポンゴ講座
語種について

 日本語教授法の授業で、日本語の語(単語)について復習するとき、学生に出題するクイズ。

1,次のことばを見て、A)の漢字の語にはよみがなを書いてください。  
2,A)@〜J B)1〜6のグループ分けの理由を考え、どのグループの語が固有の日本語(古来の和語&日本で作られた語)か選び、海外から日本へ入ってきた語と区別してください。


@ 久羅下  山  雨  花  
A 大根  火事
B 哲学  経済  野球  
C 梅  馬  寺  鮭
D 一日  二万  大豆    
E 普請  行燈  蒲団  
F 旦那  獅子  葡萄 
G 天麩羅  煙草  歌留多 
H 鉛筆  血管  投票
I 麻雀  面子  焼売  
J 電脳  電視台  机器猫
B) 
1、  クラゲ  カリ  オトメ 
2、 スキンシップ  ナイター  パネラー  
3、 カステラ  カッパ  キセル
4、 ミシン  ラジオ  テレビ 
5、  デパート  アパート  テレビ  パソコン
6、  ケアホーム  バリアフリー  ユビキタス


解答
1 A)の読み方
@ くらげ  やま  あめ  はな
A だいこん  かじ
B てつがく  けいざい  やきゅう  
C うめ  うま  てら  さけ
D いちにち  にまん  だいず    
E ふしん  あんどん  ふとん  
F だんな  しし  ぶどう 
G てんぷら  たばこ  かるた 
H えんぴつ  けっかん  とうひょう
I まあじゃん  めんつ  しゅうまい  
J でんのう  でんしだい  ちーきーまお  

 グループ分けの理由、固有の日本語と外来語の区別の答え合わせは、のちほど。

5-1-2
昨日の日本語クイズ、答え合わせ。
 漢字の読み方の答え、学生が「読めない」と言う漢字は省いて出題したので、だいたい読めたと思います。
 学生に出題する漢字のうちで、誤答が多いもの、たとえば、A)Eグループに属する語では「胡乱」。読み方は「うろん」。
 「何事にも胡乱な教師といえば、春庭のことだ」と言われそうだから、省きました。「うさんくさく、不確かで怪しい」という意味。

 読み方について、tttakaakiさんから「クラゲは一般的には海月と書くのに、なぜ久羅下と書いてあるのか」という主旨のコメントをいただきました。鋭い!
 ここがポイント1。現代表記の漢字ではあて字で、「海月」または「水母」と書いています。久羅下と表記してあるのは、『古事記(岩波古典文学大系)』です。

 平仮名が作られるまえ、日本語に漢字の音をあてはめて表記したのが「万葉仮名」。漢字の「久=く」「羅=ら」「下=げ」という音を借りて、日本語の「くらげ」という語を表記しました。
 日本語の「はな」という語を表記するのに、漢字の「花」をあてる表記もあります。
 日本語の「はな」は、古代中国語の「花」と意味が同じであるから、伝来当時日本人の耳には「カ」と聞こえ、現代中国語では「ファ」と発音されている文字を、「はな」と読むことにしました。これが訓読み。
 つまり、A)@のグループは、固有の日本語に、漢字をあてはめて表記したもの。ということになります。

 他のグループはどうでしょうか。昨日のクイズの2番目の問題。固有の日本語と外国からきた言葉を分ける問題です。きっちり分けられましたか。
 一番多い学生からの解答。「単純にわけて、Aグループは固有日本語。理由は漢字だから。Bグループは外国からきた言葉。理由はカタカナで書いてあるから」

 そういう単純な分け方ですませないために、A)@に「久羅下」を、B)1に「クラゲ」を入れてあるんです。A)@の「久羅下」は、クラゲと読むことを発表してから、再度考えさせる。

 解答を言ってしまいましょう。
 Aグループの固有日本語(古来の和語、日本で作られた語は「@、A、B」です。え〜っ、そうなの?、、、そうなんです。
 っていうことは、C以下は固有の日本語ではなく、もともとは外国から来たことば。ただし、日本に来た時期はさまざまな時代。


5-1-3
 ACの「梅」「馬」は、完全に古来の日本語だと思われている。それほど日本語になりきっているので、もう外来語だと言う必要もありません。

 しかし、出自は古代中国語で「ンメィ」と発音したと思われる「梅」。日本に取り入れられたときは、語頭の「ン」は発音できないので、「ウ」に変えて「ウメ」になったんです。
 もともと日本にあった花木を固有の和語から中国風にかえたのか、中国から梅の木を運んできたときに名前もやってきたのかは不明。 「馬」も同様。

 「てら=寺」は朝鮮半島からやってきたという説が有力。「サケ=鮭」は、もともとアイヌのことばだった語を和語に取り入れ、漢字をあてはめた。
 これらも、外来語といわなくてもいいでしょう。これらの物や事象を自文化に取り入れるときに、物と同時に言葉も入ってきて、他の語への言い換えができません。

 Dの「一日、二万」などは、漢字が日本にもたらされた直後に日本語の語彙に取り入れられた語。
 「外来語ぎらいだから、外国から来た言葉は使いたくない、古来の日本語だけで、話したい」とおっしゃる方には、古来の日本語に言い換えができますから、どうぞ。

 15を「ジュウゴ」などと、外国から来た言い方でいわずに、「とおまりいつつ(とお余りいつつ」38は「サンジュウハチ」ではなく、「みそまりやっつ」と、本来の和語で言うことをお奨めします。126は、ももまりふたまりむっつ。ちと、面倒ですね。だからこそ、中国方式の数の数え方が普及したのでしょうね。

 ACDは、固有の日本語だと思い、ABは漢語だと思った、という学生も多い。
 Bの日本語は、明治期に西洋語を学んだ日本人が、漢語形式に翻訳した語。「フィロソフィ」にあたる語が日本語にはないので、漢字を用いて「哲学」と翻訳した。「エコノミィ」にあたる語がないので、中国古典に出てくる「経世済民」からとって、「経済」と翻訳した。

 近代以後、中国に逆輸入されて、現代中国語でも「哲学」「経済」を普通に使っているので、中国の学生に「これらの漢字語は日本で作られたんだよ」と、紹介すると、ええ〜?!と驚きます。
 哲学、経済などを翻訳したのは西周、ベースボールを野球と翻訳したのは正岡子規という。明治期翻訳漢字語の成立については下の一冊を。

 AE〜Iの語も外国から日本に入ってきた語です。

 AJの語は、日本語ではありません。現代中国語です。コンピュータ=電脳、テレビ局=電視台という語は、インターネットの普及、中国映画の普及で、一部の日本の若者に使われるようになっていますが、まだ「漢語」として日本語語彙には入っていません。
 あくまでも中国語。これから一般化すれば、中国語からの「近代以後流入の漢語」となって、日本語語彙の一部になっていく可能性があります。
 中国語で「机器猫」とは何でしょうか。答え「ドラエモン」です。

☆☆☆☆☆☆
春庭今日の一冊No.108
(や)柳父章(やなぶあきら)『翻訳語成立事情』岩波新書

<もんじゃ(文蛇)の足跡:日本語学ひとくちメモ>
 日本語の/N/の音、ひらがな表記「ん」の発音は3つある。[m]と[n]と[ng]
 口唇閉鎖音(唇を閉じてから発声するM音やB音P音)の前の「ん」は[m]になる。「さんま」の「ん」は[m]。
 K音G音の前では「単語たんご」の「ん」は[ng]の発音になる。その他は「[n]。漢字かんじ」の「ん」は[n].

 古代中国語では「梅」[mmei]「馬」[mma]だったらしい語の仮名表記。「ん」という平仮名があったら「んま」と書いたのだろうが、まだ「ん」の文字が表記として存在せず、あったとしても定着していなかったころは、「むめ」「むま」と表記した。「む」の発音は[mu]であるが、[muma]と発音したのでは間違い。
 語頭に「ん」がつくのは、開音節が基本の日本語発音にそぐわない。語頭の「ん」は脱落するか、「う」に変わった。

むま、むめ以外でも、語頭[mu]ではなく[m]であったと思われる語で「む」と「う」のふたつの表記が残っている語がほかにもある。(表記のゆれの残存)
「むべ山風を嵐といふらむ」の「むべ」は「うべ」とも表記する。「むまご」は「うまご」とも書く。「むもれ木」=「うもれ木」


5-1-4
 日本語クイズ解説続き。
@ 久羅下  山  雨  花  
A 大根  火事
B 哲学  経済  野球  
C 梅  馬  寺  鮭
D 一日  二万  大豆    
E 普請  行燈  蒲団  
F 旦那  獅子  葡萄 
G 天麩羅  煙草  歌留多 
H 鉛筆  血管  投票
I 麻雀  面子  焼売  
J 電脳  電視台  机器猫
 
 Aグループの日本出自の語は、「@、A、B」で、あとはさまざまな時代に日本に来た語と解説。
 Bは、漢字を利用して日本で翻訳された語のグループ、Cはごく古い時代に和語を母語とする地域以外の場所からやってきて日本語語彙になったもの、と紹介しました。では、Aは?
 オオネ(旧かなではオホネ)と呼ばれていた野菜。大きな根の部分を食べるから、漢字をあてて「大根」と表記した。しかしいつのまにか、音読みのダイコンのほうが主流になりました。

 「ひのこと/ひごと=火事」も、音読みの「カジ」の読み方のほうが好まれた。目の前が燃えていることを人に知らせるにも「おおごとでおじゃりまする、ひのこと!ひのこと!」と叫ぶより「カジ!」と言ったほうが、伝わりやすかったのかも。

 梅や馬は、古い時代に日本にやってきて、すでに日本語語彙として定着して「漢語」という意識すら持たれていません。では他の漢語について検証を。
 漢字を日本語の意味によって読むのが訓読み。中国から伝わったときの発音を生かして読むのが音読み(字音)。

 しかし、中国の人にも「日本語の漢字は難しい」と言わしめるのが「三種類ある音読み」です。中国の学生がとまどう複数の音読み。
 「自然」の読みかた、あるときは「シゼン」またあるときは「ジネン」。女性の読み方あるときは「ジョセイ」またあるときは「ニョショウ」どっちに読んだらええんや!

5-1-4-2呉音漢音唐音
 漢字が日本にやってきた三つの時代。

 1 奈良朝以前。中国は六朝時代。中国大陸長江南方の江南地方の発音が伝わった。
 日本語の数詞、数の数え方「イチ、ニー、サン」は、現代中国語で比較しても、北方の北京語「イー、アル、サン」より、南方の上海の発音に近い。
 この読み方を「呉音」と言う。呉音は次の時代の漢音に駆逐され、非主流派になったが、仏教の伝来と同時期にきただけあって、仏教関係のことばは、呉音で読むことが多い。自然、女性も、仏教関連の場合は「ジネン、ニョショウ」と読む。
 「声明」を「ショウミョウ」と、呉音で読むと、古代インドサンスクリット仏典などの研究のこと。また、梵語や漢語による仏典を声を出し節をつけて読むこと。

 2 奈良朝以後から平安期に伝えられた漢字の読み方。中国は随や唐の時代の発音。これを「漢音」という。漢字の主流派。現在日本語として用いられている漢字の多くは漢音での発音。
 「声明」を漢音で「セイメイ」と読むと、自分の立場意見をはっきりと人々に知らせること。「声明=ショウミョウ」という仏教用語とは意味が変わります。
 呉音読みの漢字と漢音読みの漢字が組み合わされることも多いので、留学生にはいっそう大変。「音声」を一般的に「おんせい」と読むのは、ごちゃまぜ組み合わせ語。呉音で読むと「オンジョウ」

 3 鎌倉時代以後に伝えられた漢字の読み方。呼び名は「唐音」唐音といっても、中国の唐朝時代の発音というわけではなく、「日本が中国を、カラのクニ=唐の國、と呼んでいたころに伝わった字音」というほどの意味。
 唐音が日本語語彙として定着した語は、漢音に比べ少数派。
 例をあげると、「行」という漢字。呉音、漢音の「行」は、「ギョウ/コウ」。この読み方をする漢語は「行者=ギョウジャ、ギョウジ=行事、行政=ギョウセイ/コウロ=行路、コウテイ=行程、コウドウ=行動」など、たくさんあるのに比べて、唐音の「アン」と読む語で、一般的な辞書に載っているのは「行燈アンドン」「行宮=アングウ」「行脚=アンギャ」の三語くらい。
 AEのグループは、この唐音の漢語を並べてある。なじみ少ない音なので、「胡乱」もウロンと読める学生が少ない。

 今日の「日本語の語の種類」復習は、「日本語の漢字の発音は、訓読みと音読みがあり、音読みには三種類ある」というところまで。<続く>


5-1-5
 漢字クイズの解説続き。Aグループの@〜Eまで解説済み。今日はFから。

 Aの語も漢語として日本へ来たことは、他の中国由来の漢語とかわりはない。なぜ別グループにしてあるかというと、もともとは中国語ではなく、シルクロードを越えて中国に流入した文物に中国の漢字をあてて翻訳したものだから。

 「旦那=ダンナ」は、古代インドから仏教が伝わったときにサンスクリット語の意味や発音から中国語に翻訳され取り入れられた。語源はサンスクリット語のダーナ(与えるもの、お布施)だといいます。音を生かした音訳で旦那に。
 一部語彙にサンスクリットからの流入語もあるインドネシア語でも、Danaは基金とか施しを意味するそうです。
  何の見返りも期待せずに布施し、大いに愛や物を与えてくれる人が「旦那」。配偶者を「旦那様」と呼ばない女性が増えているのも納得。家事育児とひきかえだったり、共働きなのに、家事子育ても手伝わない夫を「だんなさま」だなんてネェ。
 家事育児なしで、ひがな三食昼寝付で遊ばせてくれる方がおいでなら、春庭、よろこんでそのお方を「だんなさま」と呼びましょう。

 獅子、葡萄も、ペルシャやアラビアから由来し中国語となったのち、日本へやってきた。日本では、他の語と同じく漢語としてとりいれたのだけれど、出自の点から別グループに。

 Fの「葡萄」が中国を経由して日本に来たのに対して、Gの「天麩羅」は、ポルトガルから日本へ 直行。室町末期にポルトガル人が鉄砲やキリスト教を伝えると同時に、ポルトガル由来の語彙を残していきました。日本語として定着した語も多く、漢字もあてられた。
 いまでは「てんぷら」は「代表的な和食」と思われていて、元はポルトガルから来たということを意識せずに食べています。

 歌留多。ポルトガルから宣教師が伝えたのは、遊戯用の小さな紙切れだった。ポルトガル語ではcarta =紙。語源はラテン語charta(パピルスの葉)だとか。
 このラテン語をもとに、お医者さんが書くカルテはドイツ語のkarte=カードの複数形
 トランプ遊びの紙切れは、英語でcard =カード。(trumpは「切り札」の意)
 「紙」は「料理の名前を書いた紙=メニュー」も意味し、フランス語のア・ラ・カルトa la carte =メニューによって(一品ずつ料理を選ぶ)という意味。
 日本に入ってきた時代は別々だけれど、カルタもカルテもカードも西洋から来たことば。カードは外来語だと思っていたけれど、歌留多は固有の日本語または漢語だと思っていた方、漢字表記にだまされちゃいけません。

 Hの「鉛筆、血管」などは、西洋の文物が中国に入ったとき、中国で翻訳された漢語が日本にとりいれられた語。比較的新しい概念の漢語。発音読み方は日本式音読みになっています。
 Iのことばは、近代以後、中国の発音を残して日本にとりいれられた語。「マージャン」「シューマイ」など、カタカナで表記しても違和感はありません。
 一般の漢語は「外来語」としては意識されず、カタカナ表記されると違和感があるが、マージャン、ラオチュウ(老酒)などは「海外からやってきた語」という意識を強く残しています。

 Jは、前に述べた、現代中国語。
 以上でAグループの「グループ分けの理由」解説おわり。
 次はカタカナの語。Bグループについて。
B) 
1、  クラゲ  カリ  オトメ 
2、 スキンシップ  ナイター  パネラー  
3、 カステラ  カッパ  キセル 
4、 ミシン  ラジオ  テレビ 
5、  デパート  アパート  パソコン
6、  ケアホーム  バリアフリー  ユビキタス

 どれが固有の日本語(古来の和語、日本で作られた語)で、どれが海外から来た語なのしょうか。
 解答「1」は和語。「3」ポルトガルから。「2,4,5,6」もとになった語は海外からだが、このまま言っても、まず、通じない。つまり、日本語。解説は次回。


5-1-6
 Aの@に出てきた「くらげ」は和語。ならばBの1のクラゲもカタカナで書いたからといっても和語にかわりはない。現代日本語表記では、動植物名はカタカナで書くことがおおいからクラゲと書いてよい。
 カリ=雁、おとめ=乙女。古来からの和語。(ただし、雁は、動物名としてはガンと表記するほうが多い。カリと呼ぶのは短歌の中くらい)

 「2」は日本で作られた語。つまり固有の日本語。英語圏の人にこの語を翻訳せずに言っても、意味が伝わらない。
 哲学や範疇(カテゴリーの意)は、漢字を組み合わせて作られた日本語であるとしたら、英語由来の「スキン」と「シップ」を組み合わせて作られた「スキンシップ」も、固有の日本語といってよい。

 ナイターを英語で言うならnight game NHKでは、夜の野球試合をいちいち「ナイトゲーム」と言うが、日本向けの放送であるなら、すでに定着しているナイターでよい。ナイトを加工して作った日本語なんだから。
 一般の野球ファンは「今夜のナイトゲームどこのチームの中継かな」と言わずに「今夜のナイター中継、どことどこ?」という。ナイトゲームとわざわざ言い換える必要は、ないター。

 英語由来のナイトゲームという外来語ならよくて、英語から加工して作られ、現在では「夜間に行われる野球の試合」という意味の語として成立している日本語を使わない、その基準がよくわからない。
 日本で作られた日本語がダメなら、哲学も経済もだめ、ということになる。

 カタカナで書くと「外来語ぎらい」の人から「ちゃんとした日本語をつかえ」と投書が来るのかもしれない。
 カタカナ表記がいけないのなら、テンプラを天麩羅と漢字表記にしたように、漢字表記を作ってみよう。「納居打」「夜内打」などと書いたらどうだろうか。イン・フィールドを「内野」と翻訳しているのだから、night gameを「夜内打」と書いてナイターと読むと、翻案してもいいのでは。

 パネラーも英語ではpanelist。こちらは「パネリスト」という外来語も流通している。
 この使い分け。パネラーは何かのイベントへの参加者という意味合いが強く、パネリストは「公開討議の発言者」という意味が強い。使い分けができている以上、「パネラー」は、本来の英語ではないから、排除せよ、ということもない。すでにカタカナ日本語として機能している。
 日本語として定着しているカタカナ表記外来語には、どのようなものがあったか、Bグループ3〜6を検討しよう。

 「3」のカステラは、テンプラと同時期に日本に入ったポルトガル由来のお菓子。
 カステラの入っていた菓子折をさして通辞が「これは何か」と質問した。箱にはポルトガルの城の絵が描いてあったので「城=カステラ」と宣教師が答え、以来、この菓子はカステラと呼ばれた、というのが語源の通説。(カステラを英語でいうと、キャッスル=城)

 また、当時のイベリア半島の国家カステーリャで作られていた菓子なので、「カステーリャ・パン」略してカステラと呼んだ、という説もある。
 同時期に日本へ入ったパンの方は「麺包/麺麭」と漢字表記もあったが、現在ではほとんどカタカナ表記のパン。
 ブラジルからの留学生(ブラジルはポルトガル語)が、「日本でもパンって言うんですね。ブレッドじゃなくて」と言う。「日本のパンは、もとはポルトガル語だったんだよ」と教えると「そうか、そうか」と、うれしそう。

 キセル、漢字は煙管。ただし、キセルを使って煙草を吸う人が近頃ではほとんどいないので、キセルという語を耳にするのは「電車料金をキセルする」という場合くらい。
 吸い口と煙草をつめる部分のみ金属で、間は竹などをつかうため、電車料金の途中部分の金属(お金)を省くことを言う。
 電車のキセルしたことあります?春庭、学生時代、定期を持っていたときに何度か。旧国鉄さん、すみません。(時効につき告白)
 カッパも「雨合羽」などのように漢字表記がある。


5-1-7
 「4」の語は、近代以後に日本に文明開化の文物と共に入ってきた。sewing machine ソーイングマシンを省略し、日本語として発音しやすく変えミシン。radio reciever レィディオゥレスィーヴァーを省略し、日本語として発音しやすく変えてラジオ。いちおう語の切れ目で省略している。テレビジョンは、tele vision を途中で区切って、テレビ。

 英語由来の語であるが、省略の仕方発音の仕方、もとの語とは似てもにつかず、英語圏の人に「ミシン」と言っても「ラジオ」と言っても通じない。すなわち、カタカナで書く日本語。

 ミシンと同時期に日本に入ってきた「テレフォン」は、電話という翻訳語のほうが普及した。電信電話は国家事業だったから、自然な語の普及ではなく、国家による統制が可能だった。明治期の小説には「テレフォン」と、そのままカタカナで書かれているものもあるが。
 洋裁縫製が国家事業だったら、ミシンという外来語は普及せず、「自動縫製機」略して「自縫」とでも呼ばれていたかも知れない。

 「5」のデパート、アパートも英語の後ろ半分を省略した語。デパートメントストア。アパートメントハウスというのが元の語。
 しかし、百貨店というよりデパートというほうがしゃれていると感じた人は「今日はデパートでショッピングした」と表現する。

 外来語嫌いな方「百貨店にて購買せり」と言っているのだろう。明治の文豪みたい。
 本居宣長のように、漢語も嫌い、出来る限り和語でという人は「もものくさぐさ売りたる店にて買い物いたしました」ちょっと長々しくなりますね。

 「パーソナル・コンピュータ」前後省略して「パソコン」
 いまさら「個人使用画像表示付自動電子計算電信交流機」というのも長たらしく、漢字でいうなら、いっそ中国語の「電脳」を「近代以後流入中国語」として導入したらどうか、ということにもなる。日本語としては、パソコンはパソコンで定着したといえるだろう。

 「e-メールというのはけしからん、電信通信とわかりやすい日本語があるのだから、電信通信と言うほうがよい」という意見をお持ちのかたから、投書があったそう。(chiyoisozaki日記による)

 もちろん、本人が「e−メール」を使いたくない、「電信通信」と言いたい、というのは自由です。でも、一般の人が「e-メール」と表現するのはケシカランなんて言ってもしかたがない。どの語が日本語語彙として定着するか、しないかは、それぞれの言語使用者が考えること。国家や外来語嫌いの一個人の好き嫌いで決定する事じゃない。
 e-メールという外来語がイヤという方、ミシンは自動縫製機、ラジオは電波音声放送受信機とよんでくださいね。

 英語で言うceller phone は、日本で独自の進化をとげ急速に普及した結果、セルフォンを取り入れず、携帯電話という漢語の省略形「ケータイ」として定着した。  
 このように、どの語がカタカナの外来語として生き残って日本語語彙に定着するか、消えていくかは、社会の要請や状態による。国家が言語をあれこれ管理せずとも、必要な語は残るし、いらないものは消える。


5-1-8
 さきごろ、国立国語研究所は、外来語の言い換えを発表した。さすがに「和語だけの語」への言い換えはひとつもなく、すべて漢語または漢字を用いた日本製漢字語に変換。
 たとえば、最近町中にふえてきた「ディサービス」は、「日帰り介護」 に言い換えられている。ディサービスセンターはどうする。「日帰り介護センター」か。和語と漢語と外来語がくっついている。和語と漢語、漢語と外来語など、ふたつの種類の語が混合されたものを混種語という。日帰り介護センターだと、和語漢語外来語の三種混合。

 中国語ではセンターは「中心」と言う。カタカナ外来語を漢語漢字語に変換するというなら、センターなんぞという中途半端な英語を使わず、全国のなんとかセンターはすべて中心に変えたらよいのでは。ファッションヘルスセンター「時装健康中心」パチンコセンター「球体遊戯中心」

 私はつい最近「saleability=セイラビリティ」という言葉を知った。nobiさんという方が活動しているNPOで使われていることば。

 アクセス・ディンギーというオーストラリア製の転覆防止装置つきの小型ヨット。視覚障害、知的障害、身体障害などさまざまなハンディキャップを持つ人も自分で操縦でき、自立して走行できる。障害をもたない人と対等にレースができるバリアフリースポーツ。

 「セイラビリティ」は、国立国語研究所方式に翻訳すれば「帆船航行能力」となるだろう。しかし、こう翻訳された場合、一般のヨットを走らせる能力との区別は消えてなくなる。
 一般の大型ヨットなどとは異なる考え方による、新しいスポーツだからこそ、セイラビリティという聞き慣れないが、新しい概念を盛り込めることばを使用しているのだと思う。

 バリアフリースポーツも、「障害を持つ人と健常者の間の障壁をなくした運動」と翻訳したほうが、一般の人にわかりやすくなり、普及するだろうか。私は第一に「障害者」と「健常者」という表現で分ける言い方が好きじゃないなので、使う気になれない。
 耳新しくはあっても、一度覚えてしまえばバリアフリースポーツの方を使いたい。

 外来語がカタカナの言葉として私たちの生活に侵入してくる時期は、歴史的に大きな波があった。
 第一期の室町末期戦国期。(西洋文物の最初の直接流入)
 第二期の明治文明開花期(産業革命後の文物流入)
 第三期の十五年戦争後アメリカ軍占領期および高度成長期(アメリカ文化の流入)。この時期もカタカナ語の急増に眉をしかめた人が多かった。

 外来語の流入と定着。これも言語の生々流転の歴史のひとつ。この流れを人為的に止めるのは限度がある。
 戦後圧倒的にふえたカタカナ外来語の中で、消え去った語もあるし、日本語語彙として定着した語もある。カタカナ語として生き残ったものは、生き残る必然があったのだ。

 テレビをいまさら「放送電波映像受像器」と呼びたい人がいるだろうか。もちろん、外来語嫌いの方にはぜひこのように呼んでもらいたい。いや、純粋和語で「かみなりつくりのなみによるうごき絵姿と声、うつしのからくり箱」と、言うべきか。
 「ねぇ、おまいさん、今日のかみなりつくりのなみによるうごき絵姿と声うつしのからくり箱は、何を見るんだぇ」
 「ああ、そうだな、きょうのかみなりつくりのなみによる動き絵姿と声うつしのからくり箱の中味書きだしお知らせを見ても、ろくなものがないねぇ。きょうはかみなりつくりのなみによる動き絵姿と声うつしのからくり箱なんか見ないでおこうかね」
と、話し合っている間に夜もふけて、もうテレビ見る間もない。寝てしまおう。<続く>

5-1-9
 歴史的に借用語(外来語)が増えた時期として、1〜3をあげた。現在は「情報革命後の第四期」にあたる。どっと耳慣れないカタカナの言葉が増えたことに、苛立つ人も多い。

 とくにパソコン、インターネット、情報産業関連の言葉は、翻訳された語や中国語経由の語より、英語由来の借用語、カタカナ語化されたもの、およびその省略語が圧倒的に多い。パーソナル・コンピュータ=パソコン。ワード・プロセッサ=ワープロなど。

 家庭用のパソコンに接続する印刷のための道具は、印刷機と呼ばれず「プリンター」と呼ぶ。これも、借用語が嫌いな人にとっては「印刷機という語がすでにあるのに、なぜわざわざプリンターとカタカナの語でいうのか」と腹立たしいかもしれない。
 印刷機と呼ぶと、本や新聞を発行するための大型の印刷機を思い浮かべることが多いのだ。学校用の印刷は「ガリ版」転写、家庭用の印刷といえば、年賀状のイモ版画くらいしか思いつかない時代が長かったので、家庭用の印刷に対して「印刷機」と呼ぶのがふさわしくないと感じられた。それで、パソコンに接続するのは印刷機と呼ばれずに「プリンター」と呼ぶ。

 言語には、ことばの内容を表す「意味」と共に、常に「語感」が備わっているからである。
 国立国語研究所が発表した「外来語のいいかえ」は、小泉首相が郵政大臣時代に「現在の日本には意味のわからない外来語がおおすぎる。お年寄りにわかるのか」と発言したあたりからのプロジェクトという。

 おおっと、プロジェクトなんぞと使っては、国語研究所の名がすたる。「研究課題・企画計画」だっ。
 確かに、子供にも、お年寄りにも、また、外来語はきらいという人にも、わかりやすく説明する努力は必要なこと。

 しかし、ディケァサービスを「日帰り介護」と呼び変えれば、利用しやすくなるのだろうか。
 わたくしごとであるが、亡き母の姉、伯母(今年89歳)は、現在「ケァナーシング・ホーム」に入っている。
 去年の年末までは「グループホーム」にいた。その前は、自宅からディケアセンターに通っていた。最初ディケアに行くまでがたいへんだった。
 「人を年寄り扱いにして。そんな養老院みたいなところへは絶対に行きたくない」と頑張っていた。大正4年生まれの年寄り。独身の伯母にとって「年寄りが集まって入っている場所=養老院」という思いこみがあった。
 「そうじゃないよ。伯母さんが前に通っていた洋裁サークルとか、詩吟サークルみたいに、みんなで集まって、歌を歌ったり、お風呂に入ったりして、昼間楽しく過ごすところなんだって。養老院じゃなくて、ディケアって、いうんだよ。一度でいいから、ディケアセンターに行ってみて」と勧めて、ようやく行く気になった。
 「日帰り介護に行く」と言ったらどうだったろうか。当時、介護認定「1」であった伯母も「私はまだ、介護されたくない」と、最後までいやがったろう。「趣味のサークルみたいなところがディケア」と、説明してようやく納得した。語感の問題。

 グループホームに行くときも、すったもんだがあった。「民家利用の小規模養老院」「一般家庭風老齢者介護所」などという名称がついていたら、伯母はまたしても、強く抵抗したかもしれない。
 ディケアが「日帰り介護」とは異なる印象をあたえるから、また、グループホームが「民家利用老人施設」とは異なる概念を含んだ新しい意味、新しい語感をもっていたからこそ、これらの言葉が浸透してきたのだと思う。


5-2-1
 次の文は、1)〜3)をお好みで選んで読んで下さい。

1) 外来語も、一般の人に受け入れられなければ日本語として定着しない。従来の語とは異なる印象や概念が付け加わっているからこそ受け入れられていくのである。

2)外来語も、一般の人に受け入れられなければ日本語として定着しない。従来の語とは異なるイメージやコンセプトがつけくわわっているからこそ受けいれられていくのである。

3)外来語も、一般の人にアクセプトされなければ日本語としてカスタマイズされていかない。オールドワードとは異なるイメージやコンセプトのアタッチメントがあるからこそアクセプトされていくのである。

 外来語まじりの文体、どれがお好みだったろうか。春庭自身は古い人間だから、書き言葉の場合(1)になることが多い。でも、話しことばの場合、話す場面や時により、「イメージ」を使ったり、「イメージ&コンセプト」を使ったりする。つまり(2)。さすがに(3)までカタカナ語を混ぜた表現はしない。

 私自身はこう表現しないが、「自分は(3)の表現でいきたい」という人があれば、「どうぞどうぞ、あなたの文体、あなたの話しことば自己表現は、あなたのやりたいように」と答える。
 では、実際に社会生活上、どれくらいのカタカナの語が日常生活に入り込んでいるだろうか。新聞から拾ってみることにしよう。

 中学校の国語教師をしていたとき、国語教育の目標として「義務教育終了までに中学生に身につけさせるべき国語能力」とは、「日本語で書かれている一般日刊新聞の内容が読みとれて、その内容に関して批判同感の投書がかける程度の日本語能力」であると言われた。

 逆に言うと、一般日刊新聞は、「中学校卒業程度の日本語読み書き能力」を持つ人が理解出来るようかかれている、と考えられる。
 すなわり一般日刊紙に出てくるカタカナの言葉は、「一般的な読者が理解できる日本語語彙」として、紙面にのっていると受け取れるはず。さて、どうだろうか。

 「語種」シリーズを書き始めてからの新聞をチェックしてみたい。一面に書かれているカタカナの語を抜き出してみる。サンプルとして、カタカナの語が多そうな紙面、スポーツ欄、科学記事。カタカナの語が少ないと推察される「投稿俳句短歌」欄を調べる。
 (この段落に書かれているカタカナの語。シリーズ、チェック、カタカナ、サンプル、スポーツ)


5-2-2

A1)2004/03/01 6面(俳壇歌壇)にあるカタカナの語
地名: アメリカ パリ フランス モンゴル イラク 
人名: シボ ミツ ショパン
動植物名:マナヅル ウコッケイ チャボ ナズナ パンジー  
カタカナ語:イマジン メモ コート レーダー ドーム ビル マジック キャンドル シャツ ペンクラブ シャツ ニュース キス メール インフルエンザ カーテン センターホテル データベース  
オノマトペ(擬音語擬態語):カツカツカツ

A2)2004/03/01 6面(広告欄)にあるカタカナの語
動植物名:スギ
カタカナ語:インターネット データベース オンライン デザイン マンション コンクリート メンテナンス バアリアフリー トイレ エレベーター フリープラン フレキシブル・ユニット タイプ ベストセラー ヒント オピニオン キャンペーン コミック マンガ レッテル サポート アー・ユー・ハッピー ミニブック コツ ハガキ
和語漢語カタカナ語混種語:無料トライアル ビジネス版 メディア本部 営業セクション タイル貼り ピーターの法則 イスラム教 キリスト教    
オノマトペ(擬音語擬態語):ベタベタ

B1)2004/03/04 17面(スポーツ欄)にあるカタカナの語
地名:アブダビ アラブ アテネ アジア ソウル ローマ イタリア
人名チーム名他:シューム ドクマク ガダル ナセルディン アザル ダナビディアン ナジャリン ナスララハ サンティエ ハミエハ アルビン・パーマー チームヨネックス ゴールデンク サミーク ギリングス 日本ハム セリエA セリエB コリエレ・デラ・セラ ラツィオ パルマ ソレ24 ミズノ ジャパンエナジー シャンソン ラプターズ ヒート ホークス レーカーズ マーベリックス スーパーソニックス ネッツ ナゲッツ キングス クリッパーズ ぺーサーズ ウォリアーズ   
カタカナ語:ボール ヘディング ゴール チーム サッカー コンビ クロス ピッチ ツートップ リズム ポストプレー コントロール ベンチ プレー プレゼントプレー タックル プレス ワールドカップ スタート テニス シングルス スキー アルペン スノーボード バイアスロン リレー スポーツ カップ リーグ プレシーズンマッチ チェック ハーフタイム ナイター ファン マスコットバット チェック ケース シーズン サッカーマネー レース コーチ グランプリ バスケット ファイナル メンバー ソフトボール 
和語漢語カタカナ混種語:右サイド 第3シード スキー場 プロ野球 オープン戦 一部リーグ スポーツメントール賞ゴールド 記者クラブ       
オノマトペ(擬音語擬態語):バタバタ

B2)2004/03/04 17面(広告欄)
人名社名他:ミスミ ハンズ サンスター マルイ
カタカナ語:イノベーダー バリエーション ニューカラー キャンペーン オリジナルポーチ ハブラシ デンタルジェル プレゼント フロントバスケット オリジナルマグライト ベルト セット パワフルアシスト  インテリジェントバイク ハンズモデル インチ ベーシックカラー パールホワイト マットブラック マーキュリーブルー オーダーカラー グリーン スカイブルー シルバー キャラメル ダークグリーン ボディカラー ダブルサスペンション タイプ カラーバリエーション サイクルコーナー モーターサイクル スプロケット・ブレーキディスクマーケットシェア スケジュール ホームページ 
和語漢語カタカナ混種語:グループ企業

C1)2004/02/27 20・21面(公開シンポジウム記事欄)
地名:ガイアナ ギリシャ
人名:デカルト
動植物名:ヒト サル マウス チンパンジー サカナ カエル ヘビ トリ ネズミ ヒドラ プラナリア ミミズ ヨタリマウス 
カタカナ語:プレゼンテーション バカ ベストセラー センターグループディレクター ネットワーク アナログ デジタル  ハードウエア パネリスト コーディネーター ホール シナプス テレビゲーム テレビ  データ ビデオ  メディア ゲーム コミュニケーション レベル トップクラス ピーク プログラム メカニズム イマジネーション イメージ トップダウン ボトムアップ シミ βアミドイロ アセチルコリン ドーパミン システム     
和語漢語カタカナ混種語:サントリー学芸賞 キリスト教 グルタミン酸 公開シンポジウム アルツハイマー病 パーキンソン病 ポジティブ思考 ベルツ賞 ブローカ野 ゲーム脳 プラス思考   
オノマトペ(擬音語擬態語):バラバラ

C2)2004/02/27 2021面(広告欄)
カタカナ語:ライフサイエンス ビタミン メカニズム ミッドカイン マクロファージ アプローチ テーマ ホームページ
和語漢語カタカナ混種語:食物アレルギー カンジタ症 ナノ伝送システム オーダーメイド減量プログラム アルツハイマー病制御 生体可視化プローブ 哺乳類ゲノム エピジェネティック制御 免疫シナプス マクロファージ依存性 インスリン抵抗性 モヤモヤ病 ゲノム科学 公開シンポジウム

5-2-3
 以上、A)B)C)の三つの面のカタカナ表記された語を書き出してみた。
 「ワァ、こんなにたくさんのカタカナ表記!」と思っただろうか。「知らないことばばかり」と感じる人、「並べてみたら、知らない語はあまりなかった」と思う人、それぞれだろう。

 予測として、A1)には、そうたくさんのカタカナ表記がないだろうと思っていたが、予想に反し、案外カタカナ表記が短歌に使われていた。全記載のなかで一番カタカナ表記が少ない部分は、A2)の本みりん広告欄であった。広告本文には、ベタベタという擬態語以外にカタカナ表記がなかった。

 スポーツ欄をチェックしたのは、私にとって、一番うとい分野であり、知らない語がたくさんあるだろうと思ったから。サッカープレーの説明で「クロス」「プレス」というのが、実際にどのような動きをするのか、私にはわからなかった。しかし、サッカーをよく知っている人にとっては、親しみのあるカタカナの言葉であるにちがいない。

 スポーツ面の広告欄、バイクの広告でも、私にはわからないカタカナの語、たとえば「スプロケット・ブレーキディスクマーケットシェア」。バイクにくわしい人は知っている語なのだろう。 

 C1)をチェックしたのは、脳科学のシンポジウムということで、わからない言葉がたくさんあるかと思ったからだが、一般の人に理解してもらうための公開シンポジウムであるから、専門家の話でも、特別な専門用語は避けられている。

 C2の製薬会社の広告に、専門用語が並べられているのは、「こんなむいずかしいことを最先端の研究としてやっていますよ」ということを見せるため。
 「ナノ伝送システム」とか、「脳の高次機能におけるミッドカイン」とか、「哺乳類ゲノムのエピジェネティック制御」などが並んでいる。なんのことやら、さっぱりわからないが、さっぱり分からないと思わせるために書いてあるのだから、わからんでもよい。
 市販薬の宣伝では、シロートにはわからないような成分の名前を広告にいれておくと「なんだか難しそうで、よくわからないけど、効きそうだ」と思われるので、わざと舌をかみそうな成分名を宣伝に使うのだという。
 ということで、新聞チェックをした結果、次のような「もともとわかっていたこと」を確認するにとどまった。

1)スポーツ欄などは「この欄を読む人は、スポーツ用語を知っているはず」とみなされ、ルールやプレー技術について、説明無しにカタカナ語が用いられる。

2)俳句ではカタカナ語の使用が少ないが、短歌ではカタカナ地名、カタカナの語が思ったより多く使われていた。

3)「新聞、特に一般日刊紙は、中学校卒業程度の人に読めるよう配慮して書く」と聞いたことがあるが、カタカナ表記の語に関しては、かなり難しい語彙も一般記事の中に含まれている。
 そのような語に対しては記事中に説明をつけてほしいが、どの語がむずかしく、どの語は既知の語か、については世代や何に興味を持っているかで、大きな幅があることが予想される。
 広告の文中には、カタカナ語、専門語が多くなる。
<続く>


5-2-4
 新聞の記事からカタカナ表記された語を書き抜いてみて、「けっこう多くのカタカナの言葉が日常生活に浸透しているんだな」と感じた方、「こんなにカタカナの言葉ばかり増えて、けしからん、日本語は英語にとってかわられるのか」とお腹立ちの方、人それぞれだろう。

 「わからない」という語には、ふたつの面がある。その語が使用される分野に興味知識がなくて、意味がわからないという語。たとえば、私にとって「スプロケットブレーキディスク」というモーターサイクルの語。バイク好きには馴染みの言葉なのだろうが、私には、なんのことやらまったくわからない。
 もうひとつは、まったく初めて見聞きする新語。たとえば、去年はじめて聞いた「ユビキタス(ラテン語の語源=偏在する)」去年のいまごろは、なんのことやらと思った。1年たった今は、かなり耳にするようになった。

 私はスポーツにうといから、スポーツ用語を知らないことが多い。ルールの用語やスポーツの技術面の用語などを理解するのは、よほど社会的に一般化してからのことになる。
 「イエローカード、レッドカード」も、10年前には日常生活では使っていなかったことば。でも今では、授業中に着メロを響かせてしまった留学生に「はい、レッドカード」などと使っている。

 新しい言葉が社会に浸透し普通に使われるようになるかどうか、社会がその語をうけいれるかどうかによる。レッドカードイエローカードなどは、すでに注釈なしに使用されるようになっているのだろう。ユビキタスは普及するまでにまだ間がありそう。

 きのう、4日(03/03/04)に小金井公園の江戸東京たてもの園を散歩した。園内にあったリーフレット「博物館だより」をもらう。「たてもの園だより22」の記事。「東京最先端」と題された建築評論家の文章。

 最先端の話だから、文中に耳慣れないカタカナの語、アルファベット略語も多い。
 LED,GPD,LANなどの略語、ユビキタス、イコン、パトロナージュ、などのカタカナ語が文中にあるが、文末に@〜Iの注がついている。

 @ LED=発光ダイオードの略、電光掲示板などに使用される。
 A ユビキタス=ラテン語が語源。情報ネットワークに、いつでもどこからでもアクセスできる環境を示す。

 もし、「このリーフレットは一般の人も読むものだから、新しい用語はつかわないように。漢字やひらがなを用いられるよう、いいかえるべし」という規制をかけたなら、どうだろうか。最先端の大都市のいぶきを伝えようとする筆者、松葉一清の突っ走る生き生きとした筆勢が変わるのではないか。

 新聞雑誌などの一般の人が読むと想定されるメディアであっても、書きたい人が書きたいようにことばを選んでいい。もし、わかりにくい語があると編集者が判断したなら、脚注をいれるなり、文末にまとめて説明するなり方法はある。

 「こんなことばは使うな」「この語はいいかえよ」などの規制はしてほしくない。
 「この歌はうたうな、この歌をうたえ」と、強制されるのはまっぴらごめん。春庭は、ことばも歌も強制されることを拒否する。歌いたい歌をうたう。使いたいことばを使う。(人を傷つける言葉の規制、放送禁止用語、言葉狩りについては、別の問題として論じる)

 第四次借用語攻勢の中、社会に浸透していく語もあれば、一時期の流行語とはなってもたちまちすたれていく語もあるだろう。

 これまでの日本語と文化がそうであったように、多様な言語と文化を受け入れ、取捨選択がなされ、自文化の中に消化&昇華していくことが可能なはずだ。

 お上が「ディケア」でなく「日帰り介護」にすべし、と指導しなくても、一般利用者が「日帰り介護」と呼んだほうが介護を利用しやすいと思えば、そうなる。ディケアのほうがイメージにあうとおもえば、こちらが浸透する。

 一日本語教師の個人的考えにすぎないが、ことばを「国家事業」として、いじくられたくない。ことばは、ことばを話す者たちの共通財産として保有され、揺れ動き、変化していく。使っている人々がことばを普及させ浸透させる。
 変化の流れを押しとどめることはできない。私たちが、千年前の平安時代のことばを話していないのと同じように、千年後の日本語は発音も語彙も変わっているだろう。(千年後もこの社会があるとして)
2006/10/06 金  
首相の所信表明演説のカタカナ語について
ことばのYa!ちまた>ちかごろ流行りの首相のオコトバ分析報告

 9月29日に発表された首相所信演説。
 内容の空疎さはともかく、なんと言っても、外来語嫌いの前首相とはうって変わった「横文字好き」「カタカナ語好き」が目立った。

 「必要最低限」の範囲をはるかに超えた、カタカナ語の羅列。
 「なんのこっちゃと小首をかしげさせるようなカタカナ語をちりばめておけば、国民はわけもわからず、曖昧模糊にさせておけて、ちょうどよろしい」とでも言うように、「これでもかっ」とばかりに、カタカナ語が頻出。

 先般発表された国立国語研究所「外来語」委員会の「外来語言い換え集」を制定するにあたって、国民の税金が投入された。
 そうそうたる国語学者英語学者社会言語学者、角つきあわせて、喧々囂々侃々諤々やりあって、言い換えなどが決まったのに、そんな税金はドブに捨てたかのごとき、カタカナラッシュ。

 別段、前政権の方針をすべて踏襲する必要もないとは思うけれど、あんなに大騒ぎして外来語言い換えとかやったのに、言い換えを考えた人たち、むなしくないだろうか。ノレンに腕おしたような、ザルで水くんだような。

 国語研究所は、第一レベル外来語(国民の4人に3人が理解していると判断した語)から、第四レベル(理解している国民が4人に1人以下の語)まで、外来語を1〜4に分けている。

 この基準を勘案し、所信表明演説全文のなかから、カタカナで書かれた語を五段階に分類してみる。外来語と混種語(外来語と和語または漢語を組み合わせた語)、和製英語を全文から抽出し、分類。

1) 外国の人名地名。これは、カタカナで表記することになっている。

・アインシュタイン
・アジア イラク インド オーストラリア ロシア  

2)意図的にカタカナで表記したもの 

・ヒト・モノ・カネ 
・メリハリ

3)第一レベルのカタカナ語(すでに日本語語彙として定着し、他のことばに置き換えると、ニュアンスがことなってしまうと思われる語、また、省略された語)

・アニメ(動画) 
・イメージ(形・像・映像) 
・インターネット 
・エネルギー 
・エレベーター(建築物昇降機) 
・ガス瞬間湯沸かし器 
・公共サービス(奉仕) 
・デフレ(デフレーションの略) 
・テロ(テロリズムの略) 
・トンネル(隧道) 
・パート(時間分割労働者) 
・ブランド(商標) ブランド化 
・フリーター(非正規労働者) 
・ミサイル 
・ルール(規則)

4)言い換えが可能だが、一般的に使用されていると思われる語

・アピール(訴え、懇請) 
・市場化テスト(市場化試験) 
・キャリア(職業経歴) 
・強化プログラム(強化計画、強化綱領) 
・スタート(出発、出動) 
・スタッフ(職員、従業者) 
・システム(組織・仕組みの全体) 
・市場化テスト(市場化試験) 
・首脳レベル(首脳段階) 
・トップリーダー(最高指導者) 
・チャレンジ(挑戦) 
・チャンス(機会) 
・パターン(型) 
・ハードル(障碍) 
・ピーク時(最高潮時) 
・プロジェクト(期限内にモノや知的成果物を生み出す、主として集団で仕上げる仕事) 
・ベビーブーム世代(出産最高潮世代) 
・ベテラン(老練者、熟練者) 
・フル活用(全力活用) 
・ホワイトハウス(米大統領官邸) 
・メード・イン・ジャパン(日本製) 
・メール・マガジン(電子通信雑誌) 
・モラル(倫理・道徳) 
・リスク(危険・負の結果の割合) 
・リーダーシップ(指導力・統率)

 私は、ウルグアイラウンドにようやくなじんだところで、ドーハラウンドを知らなかった。けれど、言い換えると面倒だから、このまま使うしかない。
・ドーハ・ラウンド→★世界貿易機関(WTO)による新しい多角的貿易交渉。カタールのドーハでの会議で決定した。 農産物、鉱工業品など非農産品、サービスをはじめとした貿易自由化

 人により感じ方が異なるだろうが、ここまではまあまあ許せる範囲。

 しかし、次の(5)にあげたカタカナ語(外来語・混種語・和製英語)は、所信演説の中で使うべきでない、まだ一般的に国民に浸透しておらず、理解が行き届かない語ではないかと感じる。

 国語研究所の言い換え語も、あまりこなれていない気がするが、あげておく。(☆マークは国研の言い換え語を示している)。
 ★は、とりあえずの訳語 *首相みずからの言い換え

5)国語研究所が、この語を理解できるのは国民の25%以下であり、言い換えが必要と判断した語のレベル

・アジア・ゲートウェイ構想→★アジアの玄関口となる構想、アジア国際間物流出入り口 
・カントリー・アイデンティティー→*我が国の理念、目指すべき奉公、日本らしさ 
・アイデンティティ→☆独自性・自己認識 ナショナルアイデンティティ→☆国家像、国家帰属意識
・イノベーション→☆技術革新
・グランドデザイン→☆全体構想 
・グローバル化→☆地球規模化
・コンテンツ→☆情報内容
・子育てフレンドリー→★子育て友愛的(何のことやら?!以下、理解不能は?!で表示)
・セーフティネット→☆安全網
・ゼロベース→★まったくのゼロから問題を解決していく方法
・タウンミーティング→★街角話し合い*小泉前首相は「国民対話」の意味で用いたが。
・テレワーク→★通信ネットワークを利用して、オフィス以外の場所で働く労働形態、遠隔仕事
・道州制ビジョン→☆県を統合し州を制定する、展望
・バイオエタノール→★とうもろこしなどから抽出したエタノールを用いるエネルギー資源
・バイオマス→☆生物由来資源    
・パートナーシップ→☆協力関係   
・プライマリー・バランス→☆根本的なバランス(?!)*地方の基礎的な財政収支
・フロンティア戦略→☆新分野戦略(?!)                
・ライブ・トーク官邸→★官邸と生会話(?!)   
   
 以上、新首相の所信表明演説中のカタカナ語を分析。
 一番笑えるのは、「子育てフレンドリーな社会」だろう。何のつもりやら。このお題目で少子化くい止められると本気で考えているのなら、国民なめきってます。

 プライマリーバランスとか、カントリーアイデンティティってのも、自分で言い換えしているのなら、カタカナで言わなきゃいいのに。

 私は、外来語排除主義じゃありません。どっちかっていうと、デイケアセンターをわざわざ「日帰り介護センター」という和語漢語外来語三つの混種語にする必要もないと思っているほうです。
 人々が自然に使い出し、定着してきた語なら、無理にお上に言い換え語を決めてもらわなくてもいいと思っている。

 しかし、新首相所信演説のカタカナ好きは、どうにも救われない気がする。
 
 せいいっぱいカタカナ語ならべて、「美しい国」がひたすら太平洋こえて東に向かい、ますます属国または51番目の州となるような。

 あ、道州制ビジョンってのは、そういうことか。
 「51番目の州をめざしてすすむ道、展望!」by 半可通。

<おわり>
01:29 |


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