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散りぬるをとめと女と姥 
 

日付
日本語の文字と発音「五十音図の発音」
散りぬるをとめと女と姥
2008/06/01 違いがわかる文字と発音チリとトリ=音韻の話
2008/06/04 リスとニス、ノーサイ研究・異音の話
2008/06/05 ぬりなおしては日本語修行・日本語教師は毎日が」勉強
2008/06/05 瑠璃も玻璃も磨けば光る、あなたのボインも磨けば光る・母音と子音
2006/02/02 「をとめ」と「おんな」と「うば」・をんなとおんな、つきあうならどっち?



ち:ちがいがわかる文字と発音チリとトリ=音韻の話
2008/06/01
ち:違いがわかる文字と発音チリとトリ=音韻の話

 世界各国から日本の大学大学院にくる留学生に日本語を教える仕事とともに、
 大学の副専攻として設置されている日本語教師養成講座で日本語教師志望者たちに、日本語学、日本語教育学を教えることが、私の仕事のひとつです。

 日本語教師の卵たちが、うまく孵化し鳥になって世界に羽ばたいていくのを見るのは、教師の喜びのひとつ。
 孵化しないで、「塵」となって散り散りになる学生も、いますけれど。

 「ちり」ときこえたときと、「とり」と聞こえたとき、同じ音、同じことばを聞いたと思いますか。
 違いますよね。「チリ」は、「塵」かもしれないし「散り」かもしれないけれど、「トリ」とは異なります。トリは「鳥」か「取り」かわかりませんが、チリとは異なります。

 日本語では「と」と「ち」は、別の音です。このようなことばの意味を区別する音のセットを「音韻」と呼びます。
 人が発音できる音はさまざまにあるけれど、ことばに必要な音は、それぞれの言語によって違っています。

ことばを組み立てるために使われる音を「音韻」、たとえば、英語では、右は、「right」です。灯りは「light」です。
 英語では「la」と「ra」の音の違いを、ことばの意味の区別に利用しているのです。つまり英語の「la」「ra」は、別々の音韻です。

 でも、生まれたときから日本語を話して生活している人にとっては、rightも、lightも、どちらも「ライト」と聞こえます。
 日本語では、ことばを音で表すとき、「la」「ra」は、別の音とは思われず、同じ音として扱われています。このような、「同じ音」に分類される音を「異音」と言います。

 異音とは、「音声的には異なる発音をしているけれど、ことばを組み立てる音としては、同じとみなすセットの音」です。
 言語によって、さまざまな異音のセットがあります。

 日本語では[su][th]の区別はしないから、sank you と発音しても、thank youと発音しても「サンキュー」と聞こえます。
 日本語では、[v][b]の区別はしないから、「love」と言っても、「rub」と言っても、ラブと聞こえます。

 どの発音をことばの区別に利用するか、それぞれの母語によって異なります。
 日本人にとっては、「thank you」と言っても、「sank you」と言っても、同じサンキューに聞こえます。他の言語の人にとって「おじさん」と「おじいさん」は、同じに聞こえます。「来て」と「切って」は、同じ音に聞こえ、区別ができません。

 音声的には異なる音であっても、ことばの組み立ての上では「同じ音」と認識するある二つの音を、音韻論では「異音イオン」と言うと紹介しました。代表的な日本語の異音として、日本語標準語の、濁音の「が」と鼻濁音の「ガ」の異音のセットがあります。

 ひらがな表記では同じ「が」ですが、口から息を出す口音・有声音「が」と、鼻から息を出す鼻濁音(鼻音・有声音)「が」のふたつがあります。
 語頭の「が」は口音、語中の「が」は鼻濁音を使う、というのが標準語の「が」の発音でした。

 「私は雅楽の楽譜が読めない」というとき、雅楽(ががく)の最初の「が」や「楽譜が」の最初の「が」は、口音です。「楽譜が」の二番目の助詞「が」は鼻濁音。
 このふたつの異音を無意識に使い分けていたのです。
 異音は、同じ音と見なされますから、「ががくが」「がくふが」を、全部口音で発音しても、意味はまったく変わりません。

 かって、NHKのアナウンサーは、このふたつの音を使い分けられないとニュースを読ませてもらえない、と言われましたが、今はどうでしょう。
 現在、若い世代のなかには、鼻濁音「が」を使わない人が増えています。全部、口へ息を出す濁音の「が」です。

 それで、日本語の異音の話をするとき、「が」の例を使っても、わかってもらえなくなりました。



2008/06/04
り: リスとニス、ノーサイ研究・異音の話

 もうひとつ、日本語のわかりやすい異音のセット、「ん」の発音があります。
 「ん」の異音については、春庭カフェコラム2007年/10/05〜10/07をご参照ください。
 
 nとrが同じ音に聞こえるという人もいる。
 中国南部の出身者にとっては、「栗鼠リス」も「ニス」も同じ音に聞こえます。[n][r]が異音だからです。

 塗料のニスの語源はオランダ語vernisです。英語だとvarnishですが、これは語彙論のところで「外来語のはなし」で詳しく教えます。今は、リスとニスの発音のはなし。

 日本語では、リスとニス、動物のリスと塗料のニスは違うことばですよね。なんで違うことばなのに、区別できないんだ、と思ってはいけません。
 日本語を生まれたときから話している人には、thankと sank の区別ができませんし、lice とriceの聞き取り区別ができないのですから。シラミもご飯も同じ「ライス」です。

 日本語母語話者にとって、「l」と「r」は同じ音に聞こえる「異音」です。中国南部出身者にとって、「n」「r」は、同じ音に聞こえる異音です。

 母語によって、どの音声をことばを区別する音に採用しているかが異なります。この違いをまず知ること。

 先月末、ある日の講師室での雑談。
 ある先生が、授業中の学生発言の報告をしてくれました。

 「中国の学生が、日本のノーサイ・システムについて研究したい、と言うのよ。農祭かしら、納采かな、と質問してみたけれど、なんだか話がかみ合わない。よくよく聞いたら、労災システムの研究をしたいということでした。中国では、まだ会社の労災などが整備されていないんだって。
 でもどうしてローサイがノーサイになっちゃうんでしょう?」

 日本語学の立派な著書をお持ちの先生ですが、それでも、中国語方言発音の異音までは、気にしていなかったようです。
 かく言う私も、中国南部出身者を教えるようになるまでは、その地方では、[n][r]が異音であることなど知りませんでした。


 

2008/06/05
ぬ:ぬ:直しつつ日本語修行・日本語教師は毎日が勉強

 日本語教師、すべての日本語学言語学すべての知識を頭に入れてから授業をしようと思ったら、100年かかります。
 本から得た知識、基礎を知っておくことは大切ですが、授業をしながら、学生の質問に答えながら、知識を増やしていけばよいのです。
 「習うより慣れろ」
 ある程度の基礎知識を得たら、実際に現場にでて教えてみるといい。学生の間違い方のパターンを知ることで、日本語文法の知識を増やすことができるし、学生発音のまちがい方を知れば、音声学の知識が必要なことがわかる。

 「いろんな失敗をしながら体験的に日本語学を学ぶほうが、しっかり身につきますよ。知らないことだらけで、恥をかくのも勉強のうち」
と、日本語教師志望者には言っています。

 日本語教師1年2年やったくらいで、一人前にお給料もらえると思いなさんな。
 日本語教師になって3年間は、「研修中」と考えて、お給料をいただきながら教育実習をさせてもらっている、と考えなさい。

 だいたい、日本語教師20年やっている私が、薄給をかまんできるのも、「教えながら学べることが、なんと多いことか」と思っていられるからです。
 毎日ちがう色合いで新しい知識を身につけ、昨日の私にひとまわり違う色を塗り直し、塗り直ししていける仕事が日本語教師です。


2008/06/05
る: ルリもハリも磨けば光る、あなたのボインも磨けば光る・母音と子音の話

 最初はただの石ころでも、毎日塗り直し毎日磨いていけば、かならずよい日本語教師になれますよ、と、日本語教師志望者に話します。
 ただし、「自分は日本人で、日本語を生まれたときから話しているから日本語を教えられるだろう」などと、安易に考えて日本語教師になろうとしても、そうはいきません。

 瑠璃も玻璃も磨けば光る。でも磨かなければ、曇りっぱなし。あら、「瑠璃ってなんだか知らないの?ああ、玻璃も何のことだかわからない」
 では、辞書を引いてください。日本語教師、辞書をひくのは、基本中の基本。

 語彙を増やすこと、漢字の復習、文法の確認、音声の復習。日本語教師に必要な基礎事項はさまざまにあります。
 今回は、「文字と発音」について、復習します。

 さて、日本語の音の単位は「音節」だと言いました。
 「ルリ」と「ハリ」は、別の語とみなされています。その違いは、「ル」「ハ」の音の違いが認識されているから。

 日本語母語話者は、「課はどこだ?」とか「蚊に刺された」という発言をして、「か」と発音したとき、自分は「か」というひとまとまりの音を発音したとおもっています。
「か」が分解できるとおもっていません。
 「ひとまとまりの音」と聞こえる最小単位の音を「音節」といいます。

 日本語母語話者にとって、分解できない単位と思われる「か」も、ローマ字表記すると、「ka」。
 分解できますね。「k」「a」のふたつの文字を使います。この[k]また[a]、ひとつひとつを、「単音」「音素」といいます。

 [a]、[i]のような音を「母音ボイン」といいます。日本語だと母音は、「あいうえお」の5つです。
 母音5つの日本語に対して、スペイン語イタリア語など同じく母音5つの言語は発音しやすい。
 とくに、イタリア語は発音しやすい。なぜかというと。ことばの音作りの基礎が同じしくみだから。

 [r][h]のような音を「子音シイン」といいます。
 日本語は、[ru]や[ha]のように、いつも、子音と母音がふたつ組合わさった音によって単語ができあがっています。これは、日本語の発音の大きな特徴です。

 イタリア語も、だいたいこの母音と子音を組み合わせた発音なので、日本語母語話者にとって、発音しやすいのです。スワヒリ語も日本語と音の組み立て方が同じです。発音しやすい。

 スワヒリ語やイタリア語は、カタカナ書きをして、その通りに読んでいけば、ほぼ、現地の発音と同じに聞こえます。
 イタリアへ行ったら「Ti amo.ティアモ 」と、言いましょう。ケニアへ行ったら「Nakupendaナクペンダ」と言いましょう。このとおりにカタカナで読めば、「愛しています」と表現できます。

 一方英語は日本語と発音の仕組みがちがうし、英語の母音は、少なく数える学者の数だと16、多く数える学者だと20以上あると言います。日本語母語話者にとって、英語は実に習いにくい、発音のやっかいな言語です。

 英語をカタカナ書きして「アイラブユー」と言うと、「私はあなたをこすります」になることもあるから、お気をつけください。

 さて、日本語の音節と文字のお話のうち、母音の文字は「あいうえお」です。
 でも、「オ」という発音を表記するために、ふたつの文字を使い分けていること、学習者が質問することがあります。
 「どうして、『りんご お たべました』と、書くといけないのですか」

 「発音は同じですが、助詞は『を』と表記します。日本語の決まりです」という説明で、かまいません。それ以上複雑なことを言っても、初級学習者には理解できませんから。

 でも、日本語教師、「を」と「お」のちがいについて、「助詞には『を』をつかう」以上のことを日本語言語文化として知っておきましょう。



2006/02/02
を: をとめと女と姥 五十音図の発音

 現代日本語では、「お」と「を」は同じ音ですね。

 今日の課題:「をんな」と「おんな」つきあうなら、どっち?娘と乙女、恋人にするならどちら?

 日本語ゼロスタートの留学生クラス。
 学生達は、「おはよう」「ありがとう」などの数語をガイドブックなどで仕入れた程度で教室へやってきます。

 教室の教材教具で最初に活躍するのが五十音表。日本語の音節の発音、文字の練習に使われます。
 五十音表は平安初期に成立し、五音図、反音図などと呼ばれていました。

 ひらがな成立のころから、一般の手習いには、五十音ではなく「手習い歌」が使われました。
 漢字から作られた仮名文字が整備され、手習いのための「平仮名セット」のうたがあったのです。平安初期に成立したのが「あめつちのことば」、平安後期には「いろは歌」が成立しました。

 「あめつちの歌」は、日本語の無声音(清音)の音節47を重複することなく網羅して、これさえ覚えれば、日本語の音節を表記できるのです。
 濁音の表記はまだありませんし、「ん」の文字も成立していません。
 「え」が2回でてくるので48字あります。

 「あめ(天)、つち(地)、ほし(星)、そら(空)、やま(山)、かは(河)、みね(峰)、たに(谷)、くも(雲)、きり(霧)、むろ(室)、こけ(苔)、ひと(人)、いぬ(犬)、うへ(上)、すゑ(末)、ゆわ(硫黄)、さる(猿)、おふせよ(生ふせよ)、えのえを(榎の枝を)、なれゐて(馴れ居て)」。

 「えのえを」と、「え」が二度出てきます。ア行のエ(e)とヤ行の(ye)が区別されていた時代を反映しています。平安初期以前には、ヤ行は「ya i yu ye yo」の発音が区別できていました。万葉仮名ではヤ行「ye」とア行「e」が区別されています。
 もっと前は「ya yi yu ye yo」だったと考えられます。

 平安後期に成立した「いろは歌」になると、「え」は一度だけですから、平安後期には、ヤ行「ye」の発音はア行の「え」と同じになってしまったことがわかります。
 ア行の発音は江戸時代まで「a i u ye wo」でした。江戸時代には現代と同じ「a i u e o」の発音になりました。

 では、「あめつちのうた」「いろは歌」47文字の平仮名のなかで、現在はつかわれていない仮名文字「ゐ・ゑ」は、どんな発音だったのでしょう。

 「わゐうゑを」は、wa wi wu we wo という半母音であったものと思われます。「あめつち」や「いろは歌」が成立するころには、wuは「う」と同じになっていて、wuに相当する仮名文字はありませんでした。
 wiゐ、weゑの発音はア行の「い」「え」と別の発音でした。「woを」と「oお」も別々の発音。

 古代語で「おんな」は年をとった女性、「をんな」は若い女性をさし、異なる発音で区別していました。しかし、現代では、「お」と「を」の発音が同じになり、「おんな」は、若くても年寄りでも同じ「女」です。
 現在、「を」の文字は、助詞の「を」にのみ使用されていますが、「お」と「を」の発音は同じ。訓令式ローマ字表記ではどちらも「o」です。

 文字による日本語の記録が始まった飛鳥奈良時代以前に、「男」「乙女」が日本語単語として存在していました。
 「をとこ」は、「若い」という意味の「をと」プラス、「子」です。この「をと」に人をつけると、をと人→をとうと(弟)。
 「をと」プラス「女」(め)で、「乙女」(をとめ)。

 奈良時代に「小さいという意味の「を」と女性をあらわす「み」、人をあらわす「な」をもとに「をみな」が成立。平安時代に「をみな」の「み」が撥音便化し、「女」(をんな)に変化しました。「をんな」は、若くて小さい女性。

 「をのこ」「を人=をひと→をっと」の「を」は、若い牡。

 「大きい」という意味の「お」をもとに「おみな」が成立。撥音便によって「おんな」となる。「おんな」は、大きい女、年取った女。
 のちに、「み」がウ音便化して、「嫗(おうな)」も成立。

 古語で「み」(女を表す)に対応する言葉は、「き」(男を表す)です。イザナキは男の神、イザナミは女の神。
 ここから、「おんな」の対義語「翁」(おきな)が成立。中世になると、翁の対義語として「姥(うば)」も出現してきました。

「をとこ」「をのこ」vs「をとめ」「をんな」
「おとこ」「おきな」vs「おんな」「おうな」「うば」

 花の「をとめ」の時代は短し。あっという間に蕾みも満開、を!という間にをとめも散りぬる。
えっという間に女盛りもゆきすぎて、おお、たちまちにして姥となる。

 一方、「産」(むす)と「子」(こ)から「息子」、「産」(むす)と「女」(め)から「娘」(むすめ)という言葉ができた。現在「娘」は、一般の若い女性をさすが、もともとは、親からみて、自分が産んだ「め」のこと。

 さて、「をんな」と「おんな」、おつきあい願うなら、どちらでしたか?
 春庭は「女」ですが、ひらがなだと、さて、どちらやら。現代かなづかいでは、若くても古びていても「おんな」でいいんですもんね。

 あ、「姥だろう」って言った人、怒りますよ!、、、、、正解ですが。

 
 



 
 
 
 

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