前世紀までギリシア陶器の研究は特に神話的側面からなされるものが多かったのですが、今世紀にはいると他の分野における資料としてだけではなく、ギリシア陶器そのものの研究が盛んになります。ギリシア、特にアテネの陶器はまれに陶工や画家のサインが残され、それらの研究が前世紀の末あたりから行われていました。イギリスのジョン・ビーズリィ卿はこれをさらに押し進め、ルネサンスの無名の作品を描写の細かな特徴から個人の画家に特定する手法を応用し、アテネの陶器の一つひとつを個人の画家に同定していったのです。つまり同じような特徴や癖をもった作品をひとまとめにし、それらを一人の画家の作品として扱うわけです。