ヴォルトクラテルの特徴は把手の口縁部に接する部分が渦巻状になっていることであり、用途は他のクラテル同様ワインと水を混ぜるものである。その最初の例はギリシア陶器中で最も神話描写の豊かな、「フランソワの壺」と呼ばれるもので、570年前後に製作されたものである。その後も製作されてはいたが数はきわめて少なく、赤像式でも当初は少なかったが、六世紀末頃からは一般的に作られるようになった。それでも他のクラテルに比べれば数は少なく、アッティカ式を真似た南イタリア、特にアプリア式の画家によって好まれて数多く生産された。
Cf. Paris, Louvre CA3482 (Perseus
Project).
形式的には年代とともに細長くなる傾向にあり、アプリア式では把手の渦巻にメドゥーサの頭部が取り付けられた。装飾は多様だが他のクラテルに比べて派手に描かれることが多かった。画面は広い胴部のほか頚部にもフリーズ状に配置されることが多く、また胴部の画面は五世紀の中頃からは当時の壁画の影響を受けて簡単な遠近法を導入して人物を上下二段に配置した例も見られるようになった。
大きさ:70cm前後が多いが、アプリア式には1mを越えるものも少なくない。 |