2 - 1 - 7 ドーリス地方の東方化様式


Wild Goat Style

 イオニア地方の南に位置するドーリス地方では特にロードス島においてWild Goat Styleの陶器が大量に出土した[1]。そのほとんどは輸入品であったが、わずかにカリュムノス、あるいは近隣のコス島から現地製の陶器が見つかっている[2]

 その中で最も重要なのがニシュロスグループ(Nisyros Group)と呼ばれるもので、その多くはプレートだが、オイノコエやクラテルも作られた。プレートの装飾は画面の上下を二分割するのだが、上のほうが広くなっている。その部分には一頭の動物が、下には舌状文、まれにパルメットと渦巻文が描かれ、両者を分かつ帯には途切れた連環文やジクザグ文が描かれた。動物ではスフィンクスや犬が好まれたが、ライオンや山羊、馬、兎などのほか、キマイラを描いたものもあった。また人物を描いたものもあって、メネラオスとヘクトルの戦いや、ゴルゴン、ペルセウスなども描かれた。

 全体的な様式はイオニア南部のMiddle II期を思わせるが、頻出する螺旋状の充填文はイオニア北部の後期のものを借用したものと考えられている。

 その年代は六世紀の第一四半期に位置づけられ、テラ島やタソス島、またわずかにエフェソスやナウクラティス、シチリアのセリヌスからも出土しているが、最も多いのはロードスとニシュロスで、前者がその製作地であることはほぼ間違いないであろう。タソス島やキュクラデス諸島でも模造品が作られた。

[1] ロードス島の発掘については、Jacopi, G. "Clara Rhodos" 参照。
[2] ロードス製の陶器については、Cook, R. M. "East Greek Pottery" (1997), pp.61-63 参照。