長谷川和彦×斉藤久志『助監督経験の意義』(4)



司会●そろそろ、みなさんから質問を受けたいと思います。

客1今、映画業界への入り口は、人のコネが殆どなんでしょうか。どのように映画の助監督になっていくのか、聞いてみたいと思いました。

斎藤●ディレカンで助監督試験やった時、結局、選ばれた人よりも、落ちても後で使って下さいと来た人の方が残ったと聞きました。やっぱり、やりたいって手を上げれば、どこかは入れる気はします。僕はディレカンの助監督試験を手伝ったんですけど、その時感じたのは、映画をやりたいけどどうしていいかわからない人が多いんで、あれだけ集まるんだろうと思いました。

長谷川●もう、オフィシャルな入口は無いんだろうね。あなたなら、あなたが興味を持つ監督なんかに食らいつくしかないんだろう。具体的には、映画学校はあちこちにあるわけで、そこには、現役ないしはかつて現役の人との接点はあるから。「かつて現役」なんて、俺も偉そうなことは言えんが(笑)。

客2現場の仕事が逆にマイナスになることはあるんでしょうか。仕事に追われて、作家性を放棄してしまうようなマイナス性はありますか。

長谷川●あるね。俺は何人かそうなっちゃった助監督を、胸が痛む思いで思い出したりするよ。優秀な職能助監督であって、かつ、映画の中味にもかめるんだが「尽くし上手」な人がいるんだよな。尽くされる側にすれば重宝だし、嬉しいから、引っ張っちゃう。「お前もう助監督やってる時じゃねぇだろう、ホン書いて早いとこデビューしろ」みたいなことを言ってるんだが、いざ自分が緊急になってくると「おい、今回だけ付き合え」みたいなさ。俺自身にもそういうことは、ややあった。近場で言えば、俺と相米の間の年齢の人で、タイミングを失った感じの人がいる。小さなものは、ディレカンで1本撮ったりしたんだけど。でも最終的には本人の「欲望」の問題だとは思うがね。
  要するに、監督は良くも悪くもバカ殿でなきゃいけないわけだよ。唯我独尊でわがままで、しかし、それでも現場を引っ張る力はいるわけで。あんまり長い間助監督やると、バランス感覚が良くなるんだ。個性的な知恵というよりは、バランス感覚の良い知恵になってくる。でも、それじゃ映画は面 白くならない。そういうことを自分でも感じて、当分助監督やめてデビュー作のための準備に入ると言うんだが、今度は現場をやらないことが寂しくて、つい、またやってしまう。だから、何年か数本、助監督やったヤツには「助監督やめ宣言」をさせたりしたけどね。でも、しないと食えなくなるしなあ。

斎藤●僕は経験がないのでわかんないですね。映画やってると楽しいんで、他人の脚本を書いていても、僕は監督なんだって思って結果 ここまで来たのと、助監督は長谷川組以外はやらんぞと意地になっちゃったので。

長谷川●長谷川組はやるのか。

斎藤●(キッパリ)やります。

長谷川●役に立つかな。

斎藤●職能としては立たないと思います。

長谷川●カチンコ打ったことないだろ?

斎藤●ないですよ。

長谷川●でも、監督補もいやだろ、お前。

斎藤●それは、中途半端ですね。

長谷川●だったらカチンコだろうな。

斎藤●覚悟はできてますから。

長谷川●そうか、練習させないとな。しかし、こいつ下手そうだな。

斎藤●下手だと思いますよ。

長谷川●カチンコ下手で、口が立つ奴が立つ奴が1番たまらないんだよな。

斎藤●そういうことは、現場を始めてから言って下さい。

長谷川●よしわかった。お前に任せるよ。

長谷川和彦(はせがわ かずひこ) 1946年広島県生まれ。東京大学卒業後、今村昌平『神々の深き欲望』の助監督として映画界入り。以後、日活の助監督を勤める傍ら神代辰巳『青春の蹉跌』などのシナリオを執筆。76年『青春の殺人者」でデビュー。数々の映画賞を独占。79年『太陽を盗んだ男』も話題を呼ぶ。82年若手映画監督9人による企画・製作会社ディレクターズ・カンパニーの取締役に就任したが、92年解散。以降、次作が待ち望まれている。 (転載者注、原文ママ)

斎藤久志(さいとう ひさし) 1959年東京都生まれ。高校時代より8ミリ映画を撮り始める。大阪芸術大学を中退後、『うしろあたま』を完成し、PFF‘85に入選。スカラシップを獲得し、『はいかぶり姫物語』を監督すると同時に審査委員を務めた長谷川和彦に師事。脚本家として活動した後に、97年『フレンチドレッシング」で劇場映画監督デビュー。初の舞台作品「お迎え準備」(00)も好評を博した。最新作は『サンデイドライブ』(00)。

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