◆長い前置き:考察に至るまで
はじめに:オンラインゲームにおける”最強”の定義
はじめは誰もが「生きること」そのものだと思っていた
そもそも、オンラインゲームの定義というものは非常に曖昧だ。その起源をたどればわかることだが、日本では厳密に「オンラインゲームとはこうあるべきである」という指針を立てた事がない。実際を見てみると、ほとんどが外国製(主に韓国や欧米)のアプリケーションである事がわかるだろう。ここであえて”アプリケーション”と呼んだのは、日本で定義されるところのゲーム、テレビゲーム、ビデオゲームといったものとは理念がかけ離れていると筆者が確信しているからである。
欧米製や韓国製のそれは、純粋に娯楽として生まれたものではなく「第二次的な何かを産み出す産業媒体」としての役割を持っている。欧米、特に米国であればそれは実際の軍事訓練や、身に迫る危機を擬似的に体験するシミュレータであり、韓国や中国であればそれは無から有を産み出す錬金術を行うための市場である。どちらも現実の生活とはビジネスとして繋がっており、ゲームシステムの部分よりも、実生活が潤うかどうかに重点が置かれている節がある。その為、非常に現実志向が強く、それをある種のリアリティと勘違いした好意的な日本人たちが「現実を模した見事なゲーム」として祭り上げてしまった。何の成長もない毎日の繰り返しと内容がかぶっている事に気付きもせず。
以上の経緯から、日本におけるオンラインゲームとはゲームシステムの部分をほったらかして「いかに現実味を楽しめるか」という歪んだものになっている。純粋に日本人だけで構成したオンラインゲームは皆無と言ってよく、すべてが純粋な娯楽や趣味としての要素を省いたものだ。その数多のアプリケーションの中で最強とは何かを突き詰めた時、そこに残るのは「いかにプレイが上手いか」という同じ表現であっても、「どれだけ賢く稼げるか」「どれだけ他人を出し抜けるか」「どれだけ不条理に耐えられるか」というものを指すようになってしまった。それはすなわち、実生活においての”勝ち負け”と同類の陳腐な定義でしかなく、レベルやパラメータが高い=上手な生き方をしている、というおかしな定義がオンラインゲームでの勝利や強さとして正当に認められるようになってしまった。少しでもレベルやパラメータ、装備で負けていようものなら「こいつ、俺より上手くやってやがる…!悔しい」とまるでIT企業の社長を羨むかのようなひねた人間が現れる始末だ。それに対し、日本のゲームでレベルやパラメータが高い場合は「やりこみ育成バカ」と敬意を持って笑われる。
ファンタシースターオンラインにおける最強とは
ファンタシースターオンラインでは、一般的なRPGのダメージ計算システムを採用している。つまり、攻撃力と防御力の関係によってダメージが決定し、命中力と回避力の関係によって攻撃の成否が決定するというオーソドックスなスタイルだ。当時日本ではオンラインゲームというもの自体があまり普及しておらず、本作品を発売したSEGAも若干手探りな感はあった。この作品の売れ行きなり評判を見守った後、いわゆる日本のオンラインゲームというものを根付かせようとしていたのだろう。現実には普及台数が比較的少ないハードで勝負をかけたため、あまり全国的に評価を受ける事はなかった。未体験の人は中古でも借りてでもいいから入手し、「日本はこういうオンラインゲームを作ろうとした」という意思を確認してほしい。今ここに断言しよう、巷にあふれているオンラインゲームのほとんどは、本題をどこかに逸らしたまやかしである。
この作品では武器での攻撃に際して、シンプルな攻撃方法しかない。通常攻撃(アタック)、予備動作のある強攻撃(ヘビーアタック)、武器の能力発動(エクストラアタック)、の3つだけである。基本的に武器に備わっている特殊能力はオマケ程度やお遊びでしかなく、純粋に威力を上げる強攻撃が主流となる。武器には種類によってスキの大きさや攻撃範囲、攻撃回数などに差があり、敵の特徴に合わせた武器でけん制を重ね、タイミングを見計らって強攻撃を決めていく、という臨機応変を形にしたようなシステムをとっていた。
しかし、このシステムには根本的な部分で限界があった。戦闘計算式が「攻撃力と防御力」「命中力と回避力」という2式で成り立っている以上、攻撃力≫防御力かつ命中力≫回避力という圧倒的なパラメータの差があると、どの武器を選択してもダメージに大差がなくなるという点だ。結果として、剣で500ダメージ、銃で480ダメージを与えられるのであればスキの小さい銃を何発も撃ち続ける方が時間あたりのダメージは大きくなる。対象数や攻撃回数が多い銃ならばなおさらである。その結果に拍車をかけたのが倍率計算である強攻撃、また武器の特殊能力のひとつ「チャージ」であった。
PSOにおける「チャージ」は攻撃が命中した際に一定量の通貨を消費してダメージを2倍にする能力である。この能力には1発の攻撃回数に比例してダメージが二次関数的に増加するという、バランス上の大きな問題があった。一度に3回の攻撃判定があるマシンガン系列の武器にこの能力を付与すると、2倍のダメージが3回発生する三次曲線計算となる。また一度に持ち歩ける通貨が膨大な量であった事からほぼ無限に発動する事ができ、パワーバランスの崩壊を招いた。(尚、ドリームキャスト時代のPSOではマシンガンの命中ごときではこの戦法が実現できなかった為、この問題が浮き彫りになったのはゲームキューブ時代のPSOになってからである。)
かくしてこの「相手の防御能力が無視できるほどに極めて小さいとき、ダメージは倍率と攻撃回数に比例する」というマシンガン最強の法則はPSOのパワーバランスに大きな影を落とす結果となった。しかしながらPSOは、この理論がお笑い種になる「チャレンジモード」という固定条件モードのおかげで、ゲームとしては崩壊せずにすんだのである。最終的にPSOでは「チャージマシンガンによっていかに高いダメージを与えボスモンスターを瞬殺できるか」よりも「チャレンジモードでいかに上手な操作や立ち回りをこなせるか」といった技術的なものを強さとして定義する風潮があった。これは格闘ゲームにおけるそれと似たようなものである。
ファンタシースターユニバースにおける最強とは
一方ファンタシースターユニバースでは、PSOと違うシステムを採用した事により「強さとは何か」というものが移り変わっていってしまった。何を思ったか外国製のゲームに見られるようなユーザーショップ制度を導入し、とにかく資金集めに回らせた。戦闘はどちらかといえばオマケで、敵のパラメータからこちらの攻撃力に至るまですべて、基本値に難易度に応じた係数を掛けるだけの倍率計算で求められ、プレイヤーの綿密な計算自体を無下にするような、粗悪なシステムで構成された。定数データを大量に用意しなくてすむため開発の負担は少なくてすむが、どの敵のHPも経験値も一緒、どの敵にもダメージが一緒といったぞんざいなパワーバランスとなり、敵の攻撃には見た目にそぐわない攻撃判定がある等、完全に「戦う楽しみ」がなくなってしまった。
プレイヤー側のアクションとしては強攻撃である「ヘビーアタック」が撤廃され、代替品として「フォトンアーツ」と呼ばれる必殺技が導入された。このフォトンアーツはモーションや範囲が違うものが何種類かあり、武器に設定されたエネルギーを消費する事により発動し倍率計算での大ダメージを与えるというものだった。そのコンセプトが根底にある為か通常攻撃のみで戦闘に勝利する事は難しく、攻撃力や戦闘効率を最終的に決定付けたのは、フォトンアーツであった。止め処なく連発できればそれが一番強いとされた。
そういった変更だけでもがっかりなのだが、ユーザーの質の悪さがそれに拍車をかけた。自分が優位になるよう、どの職業も互いにネガティブキャンペーンを始め、長い目で見ればちょうどいいバランスになるはずのフォトンアーツですら「強すぎる」と弱体化要請が出され、結果として「後から出てきたフォトンアーツが高性能」として優遇される安っぽい仕上がりとなった。現在でもフォトンアーツは強いものが1〜2種類そろっていればよいという、いい加減な認識で戦闘が行われている。
ファンタシースターユニバースにおける”最強”を突き詰めた結論とは、以下の通りである。
- 攻撃モーションが素早く
- 攻撃倍率が高く
- 攻撃対象が多く
- 連続で攻撃できる
必要な操作は「テンポよくボタンを押す」これ以外にない。ファンタシースターオンラインの操作性が格闘ゲームに落ち着いたとすれば、ファンタシースターユニバースの操作性はゲーム作成の基礎ともいえる、シューティングゲームで終わった。