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PC-Engine スーパーグラフィックス


種 別:Hu Card(ROMカートリッジ)式家庭用テレビゲーム機
発売日:1989年
価 格:3万9800円

 家庭用テレビゲーム機として、PC-Engineほど多くの兄弟機と周辺機器を発
売したハードはちょっと他に思い当たらない。
初代機、PC-Engineと同等の機能を持つ標準機(コア・グラフィックスシリー
ズ)だけでも初代、コアグラフィックス、コアグラフィックスIIの三種類があ
り、機能限定の廉価版や、携帯機、そして唯一の上位機種であり今回紹介する
スーパーグラフィックスなども加えると「本体」だけでもかなりの数にのぼる。

 これにPC-Engine後期ではほぼ標準プラットフォームとなったCD-ROM2ユニッ
トや、CD-ROM一体型のDUOシリーズ(これもDUO,DUO-R,DUO-RXと三種類存在する)
さらに、CD-ROM2ユニットのアップグレード用となるスーパーCD-ROM2専用シス
テムカード、アーケードカードなども加わり、その上、お絵かき系周辺機器な
ども存在するのだ。

 これは、レトロゲーム機の一つとしてとしてPC-Engineを振り返り、回顧する
際には非常に楽しいことなのだが、リアルタイムでその時代を経験したユーザ
ーとしてははっきりいってかなり恐ろしいことであり、今になって冷静に考え
てみれば、PC-Engineシリーズで本当に必要だったのは、DUOシリーズのみで、
初代機を含むコアグラフィクスシリーズユーザーなら、これにCD-ROM2システム
とスーパーCD-ROM2専用システムカード(スーパーCD-ROM2システムであれば不
要)があれば充分。
これ以外のハードに関しては、実際には利用価値が非常に低かったり、利用価
値に比べて値段がべらぼうに高かったり、果ては後のアップグレードが約束さ
れていないものも多く含まれており、そういったものは事実上、コレクターズ
アイテムにするより他ない。
そういう意味では、「コア構想」という名称で呼ばれたNECの「本体&周辺機器
死ぬほど出しちゃうぞ計画」というのは、非常に単価が高い割に配当金の少な
いギャンブルの一種だったのかもしれない。


 さて、このように非常に数の多いPC-Engine系ハードの中でもスーパーグラ
フィックスは特異な位置にある。
数が多い割にゲーム機本体の機能としてはDUOシリーズ以外、初代機と全く同
じだった他のハードとは異なり、標準機であるコア・グラフィックスシリーズ
の純粋な上位互換機種としては開発されているのだ。

 コアグラシリーズとの大きな違いとしては、スプライト機能やVIDEO RAM周
りを大幅にチューンナップしてPC-Engineの特性である当時のアーケードゲー
ムにより強い設計となっているが、CPU自体はPC-Engineと同じく8bitのものを
使用している。

 ソフト面では専用ソフトとしてバトルエース、大魔界村、1941などが発売さ
れるものの、結局対応する専用ソフトはこれらを含めて僅か5本というお粗末
な結果に終わっている。
一応、コアグラシリーズとは上位互換関係にある為、コアグラシリーズのHuカ
ードに関してはそのまま使用することができるし、CD-ROM2の増設も可能な設計
にはなっているものの、3万9800円という価格を考えれば、失敗したハードと
呼ぶ以外にはないだろう。(初代機、コアグラは2万4800円、91年発売のコアグ
ラIIは1万9800円だった)


 結局、スーパーグラフィックスの失敗に懲りたのか、これ以降最後までコア
グラシリーズの純正上位機種は発売されることはなかった。(PC-FXは除く)
では、何故スーパーグラフィックス・・・またはそれ以外の可能性としての
上位機種は発売されなかったのだろうか?

 ここから先は飽くまでもおいら個人の推論になるのだが、そもそもスーパー
グラフィックスは上位機種としては発売の時期があまりにも早すぎたように思
う。
初代機である"PC-Engine"が発売されたのは1987年のことであり、スーパーグラ
フィックス発売の僅か2年前のことなのだ。
新型ハード発売迄のスパンとして短いのは勿論のことだが、PC-Engineシリーズ
の場合、実は1988年にCD-ROM2システムが発売されているということも大きい。

 CD-ROM2システムは確かに本体そのものではなく、PC-Engineというゲーム機
の一周辺機器なのだが、実際問題としてHu-CardのゲームとROM2のゲームでは全
く別のゲーム機といっていいくらい内容が違っているのだ。
Hu-Cardの場合、平均で2〜4メガビット程度のROMカートリッジでゲームが供
給されるが、ROM2の場合なら、640メガバイトの莫大なデータを扱うことが可能
になる。
声も出ればアニメーション、実写映像なども自由に扱うことが出来るCD-ROM2シ
ステムは一周辺機器という範疇を超え、それそのものが上位互換機種といっても
差し支えないほどのパワーを持っているのだ。

 このCD-ROM2システムを別に出しておきながら、再びHu-Card仕様での上位機
種を発売したとしても果たしてユーザーはそれに魅力を感じるだろうか?
勿論、スーパーグラフィックスの場合、CD-ROM2システムにも対応はしていたの
で、仮にスーパーグラフィックスがある程度売れていれば、スーパーグラフィッ
クス専用のCD-ROM2ゲームというのも発売された可能性はあるのだが、ただでさ
え、無印CD-ROM2、スーパーCD-ROM2、アーケードカード専用などグレードによっ
て様々な種類が発売されていたCD-ROM2のゲームにスーパーグラフィックス専用CD
-ROM2だの、スーパーグラフィックス&アーケードカード専用CD-ROM2といった種
類のものが加わっては、ユーザーだって混乱するし、いわんや新規ユーザーにと
っては理解不能の世界になってしまう。


 こういった事情もあり、コアグラシリーズの上位機種は以後発売されなかった
・・・というよりは初めから必要がなかったのではないか、とおいらは考えてい
る。



AXL 2003

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