レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

PC-Engine
   〜家庭用ゲーム界最速の8bitCPUを持ったアーケードキラー〜

種  別:ROMカートリッジ式家庭用ゲーム機
メーカー:NEC
発 売 日:1988年

 PCエンジンがNECから発売されたのは、1988年のことである。
当時全盛だったファミコンも発売から既に5年が経過しており、一年一昔とい
われるゲーム業界では、アーケードゲームとのクォリティの差が開き過ぎてし
まっていた。

 そんな時にNECがテレビゲーム機を発売する、という噂を聞いた。
あの当時、ファミコンのライバルといえるのは、セガ・マーク3、マスターシ
ステムを擁していたセガくらいのもので、パソコン一辺倒だったNECがゲーム機
を作る、という噂に少々不安を覚えたことを覚えている。

 何故なら、NECが主力としていた、PC-98、PC-88等のパソコンは、とにかく
純粋に、そしてひたむきなまでにアクション系のゲームに弱い。
当時国民的ホビーパソコンだった、PC-88SRシリーズでも、ファミコンのスプ
ライトやスクロール能力には及ばなかったのだ。
あのNECがテレビゲーム機なんか作れるんだろうか・・・?
正直なところ、それがおいらの第一印象だった。

 しかし、実際に目にしたPC-Engineという名のゲーム機は非常に優秀なゲー
ム機だった。
当時のアーケードの人気ゲーム、妖怪道中記がアーケードに見劣りしない画面
でスムーズに動いているのを見て即座に買ってしまった。

 実はものの本で読んだ話の受け売りになるが、PC-EngineはNECのゲーム機、
というよりは、PC-Engineに主力ソフトを供給し続けたハドソンのゲーム機とい
った方がいいらしいのだ。
そもそも、ハドソンがゲーム機にもっと適したCPUを自前で設計し、実際に試
してみたところ、かなりのレベルに達していた為、そのCPUを載せるハードの
開発を担当する会社を探し、結果的にNECと組んだ、という裏話があるらしい。

 サードパーティもナムコを始め優秀なメーカーがついたが、初期PC-Engine
の泣き所は、バックアップメモリーが使えない、という点だった。
ROMカードの性質上、「セーブ」が出来ない。
その為、RPGやシミュレーションゲームなどには向かないハードだった。
1988年といえば、ファミコンのドラゴンクエスト3のリリースとぶつかってお
り、ゲームで最も人気のあるジャンルはRPGだった為、セーブが出来ないP
C-Engineは苦戦を強いられることとなる。

 そこで、PC-Engineが投入してきたのがCD-ROM2システムである。
ゲーム機としてCD-ROMを採用したのはPC-Engineが最初であり、しかも、パソ
コン用のCD-ROMが20万円以上もした時代に6万円以下で同等の性能を誇るC
D-ROMドライブをゲーム用として供給したことは画期的だった。

 当時のファミコンの大容量ROMカセットの容量が4Mbitとすると、CD-ROM一
枚でその一千倍以上のデータ許容量がある。
さらに、CD-ROMユニットにセーブ機能を付属し、素のPC-Engine本体にも「天
の声2」というバックアップユニットを発売することで、セーブが出来ない、
という弱点を克服したPC-Engineは、CD-ROMでは天外魔境シリーズ、ROMカード
では、桃太郎伝説シリーズといった人気RPGをリリースすることにも成功す
る。

 そしてPC-Engineといえば忘れてはならないのが「PC-Engineコア構想」であ
る。これはPC-Engine本体をパソコンの本体に見たて、様々な周辺機器を接続
することにより、色々な用途での使用を可能にしようとしたものであり、CD-
ROM2ユニットもその一つ、他にもPC-Engineには、お絵描きパレットや、プロ
ッタなど、凡そゲーム機とは思えないほど色々な周辺機器が登場した。

 おいらが知る限り、PC-Engine関係の商品の中で最もキワモノだと思うのは、
まず、シャープのX1twinである。
X1というのは、PC-88SR等のライバル機の8bitホビーパソコンだが、そのX1
にPC-Engineが内蔵されたのがX1twinである。
元々、ハドソンは、シャープのパソコンで当時採用されていたHu-Basicという
言語を開発したメーカーでもあるので、シャープとの繋がりがあってもおかし
くはないが、パソコン業界での最大のライバルであるNECの名を冠したPC-Enzi
neを自社のパソコンに内蔵してしまったのは驚いた。

 ただし、内部ではパソコン部とPC-Engine部は完全に分離しており、また、
CD-ROM2等の周辺機器にも対応していなかったらしい。
当時のおいらからすると、「PC-Engineのゲームは動くのに、パソコンソフト
としては、PC-Engine並のクォリティのゲームが出来ない、というのはいかが
なものか?」という点に根本的な疑問を抱いたハードだった。

 そして、さらにX1twinを上まわるキワモノハードとして、NECから発売さ
れた「PC-Engine内蔵・パソコンモニター」というものがある。
こちらはパソコンではなく、モニターそのものにPC-Engineが内蔵されている
という破綻ぶりが素晴らしい一品である。
一言で言うなら世も末、である。

 別に内蔵するな、とは言わないが、一体何故、モニターに?という疑問が尽
きないシロモノであった。


 また、本体も多彩で、標準機のコア・グラフィックスを中心に安価で、しか
も、本体が「宇宙船の形をしている」という前代未聞といおうか、オブジェと
しても使える、という意味ではi-MACの概念を10年先取りしてしまったような、
「シャトル」というハードがあり、始めからCD-ROMユニットが内蔵されたPC-E
ngineDUO、そして、ゲームボーイ並の大きさで、しかもフルカラーの画像が
楽しめ、PC-Engine用のROMカードがそのまま走る携帯機も存在した。
さらにはPC-Engineの上位互換機として発売されながら陽の目を見なかった、
スーパーグラフィックスなどもある。

 余談だが、スーパーグラフィックスには本体と同時発売の「高性能コントロ
ーラー」があり、これは何と「本体よりも価格が高く」おいらの記憶では、「
7万円くらいした」という記憶がある。
触ったことはないので、実際にどの程度のものなのか分からないが、一体どこ
の誰が「7万円でコントローラー売っちゃおう!」などと思ったのだろうか?

 しかし、任天堂がスーパーファミコンをリリースしたあたりからクォリティ
の面でROMカートリッジでは対抗が難しくなり、数多く存在した本体も、ほぼ
CD-ROM一体型のものに絞られて「ギャルゲー専用機」という独自の境地を開拓
するようになる。
ちなみに、「ときめきメモリアル」は元々PC-Engine CD-ROM2用のソフトであ
る。


 おいらとしては、このPC-Engineの後継機だった、PC-FXの見事としか言いよ
うのない「すっ転び」が無ければ、独自のユーザー層を開拓したPC-Engineの
寿命はもう少し伸びたのではないか?と思っている。



AXL 2001

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