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タマムシ

 甲虫目タマムシ科 大きさ 30〜41mm  分布 北海道〜九州、屋久島、対馬
 日本でもっとも美しい虫のひとつ。玉のように光る羽をもつ。夏の真昼のもっとも暑い時間に木の上に集まって飛ぶ。よく光ることで鳥がこわがって近づけないという説がある。サクラ、エノキ、ケヤキなどの枯れ木を食べる。タマムシは種類が多く、本種は正確にはヤマトタマムシという。有名な法隆寺(ほうりゅうじ)の玉虫厨子(たまむしのずし)など、装飾品に使われたり、タンスに入れておくと着物が増えるなどの言い伝えがあり、きれいな色彩から、古くから宝物やアクセサリーとして扱われていた。吉兆虫と呼ばれた時代もあったらしい。
ウォッチングのコツ・・・よく晴れた暑い日に、陽のあたるエノキやサクラの大木のてっぺん付近をさがしてみよう。縦長の十文字の形で飛ぶ姿が見られるはずだ。でも、かなり高いところを飛ぶことが多いので、タマムシ自体は小さくて見落としてしまいがち。粘って観察していると時おり低いところも飛んでくれるので、そんな個体を探してみよう。意外と都市部でも見られるが、まずはエノキなどの大木がたくさんある公園や神社を見つけることが肝心だ。
(2006.9.2 公開)
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 ふるさと・北海道にタマムシいなくて、子どものころからあこがれの昆虫。だから初めて見つけたときはずいぶん感動したものだ。色彩は図鑑どおりだが、メタリックな光沢と質感がたまらなかった。もう10年近くも前のことだが、雑木林を歩いていた時、足元の倒木にとまっていたのだ。
 だが、倒木の周辺にいたタマムシは、たぶん
発生(成虫になって朽木から出る)産卵(メスは朽木で産卵する)の前後だったのだろう。そんな場面はあくまでも偶然のたまもの。足元の倒木を探すという僕の作戦は、見当違いもはなはだしく、タマムシは僕にはちょっと遠い昆虫になってしまった。

 後日、5mを超えるデカ網で、撮影用に捕獲する。 

 タマムシは、産卵木に卵を産み、生まれた幼虫は3年を経て、成虫となる。そのため、3年もの間、放置されているような朽ち木がある場所でないと育ちきることはできないのだ。もっとも最近は、カブトムシやクワガタ人気が高く、自然公園の中で産卵木をつみあげてあるような場所も見受けられるようになった。
 公園を管理されている方には、そうした生き物たちへのちょっと配慮をお願いしたいものである。

 さて、タマムシの見つけ方、参考になっただろうか。
 暑い日の午後も思い切って出かけて、この日本でもっとも美しい甲虫を探してみて欲しい。
 

 初めての出会いから10年の間に僕はやっと2度ほどタマムシを見た。1回は荒川の土手の上(埼玉県)から河原を飛んでいたところ。もう1回は高いつり橋の上(栃木県)から橋の下を飛んでいるところだ。どちらも僕の足元より下。
 でも、いろいろ調べてわかったことは、
(1)真夏の一番暑い時間帯がよい(2)都市近郊でも観察は十分に可能(3)エノキやサクラの樹上を良く飛ぶ、というものだ。タマムシは足元ではなく、ずーーーっと高いところを探さなければいけなかったのである。
 さっそく作戦を変更すると、意外なほどあっさりとタマムシに再会することができた。タマムシはけっこう身近にいたのだ!

↑ やっと再会したタマムシ(茨城産)

↑ あれは??もしかして・・・・・・

↑ はるか木の上の方に飛ぶムシを発見

↑ タマムシだ!

↑ きらりと光るぞ!

↑ 葉っぱにとまった!! 

 上の写真の真ん中やや上方に小さな黒い点。頭上はるか15m近くも上、エノキの葉陰から一瞬現れては再び葉の中に消えていく・・・・・。よく見ると、風がやんだとたんに2,3の同じ黒点が現れる。うーーーん、黒点は昆虫に違いない。飛び方が不器用な虫。でも、風の合間に次から次に飛んでいるぞ。  ・・・・・・・こ、これは????

おおーっと、今度は7,8mの高さで飛び始めた。このシルエットは甲虫だ。もしかして???

 さらに低く、頭上5、6mくらいの高さを飛ぶタマムシ。写真のように体は垂直、羽は水平の飛び方。タマムシ独特の縦長十文字の飛翔だ。もう、肉眼でもタマムシだと確認できる。
 飛んでいるタマムシはすべてオスだという。メスを探して飛び回っているのだ。

 今度はとまっているところを観察したいが、ほとんどのタマムシは高いところを飛んでいる。時おり下のほうに飛んでくるタマムシを目で追い、低い場所にとまるまで粘ってみる。
 そうして数十分、やっと1匹が目の前の葉っぱにとまる。
 時おり青緑に光り輝く。広げた羽に隠れていたオレンジの背中もきれい。黒点はまちがいなくタマムシだ! でも、高すぎるぞ。とても撮影どころではない。
 
 エノキの葉っぱに1匹がとまった。とまってもすぐ飛び立つこともあるが、たいていは数分はそのままでいてくれる。その一瞬に撮影だ。でも、ちょっと目を離したすきに見失う。タマムシが逃げたのではなくて、どの葉っぱにとまっていたかわからなくなってしまうのだ。そのくらい、葉の上のタマムシは見つけにくい。(上の写真は矢印の先の黒っぽい影がタマムシです)
 あんな派手な色をしているが、自然のもとでは探しにくいのである。

↑ 葉っぱの上、もう1枚 

 今度は葉の裏からではなく、横からの写真だ。
 これまたわかりにくいぞ! 葉の上からだと光沢があるからすぐわかるような気がするが、じっとして動かないタマムシはやっぱりわかりにくい。ちなみにこの写真、タマムシが低いところにとまったから横顔が見えているのではなくて、急に風が強くなって、枝が大きく揺れたから写すことができた。ピンボケは風のせいだと付け加えておこう。
 
 目立ちそうなタマムシの光沢、実は、鳥にとっては苦手なのだという。
 夏の日差しにぴかぴか光って飛ぶタマムシに、鳥も思わずよけてしまうのだろうか。真夏の正午過ぎなんて時間も鳥の嫌う時間。(鳥の食事時間はなんといっても早朝!)
 でも、僕が今回の経験で思ったことは、この派手な色彩でも、案外見つけにくいということ。たとえばカワセミというきれいな鳥がいるが、石の上などにとまると目立ってしまう色彩も、背後に草や木があると見つけにくいものだ。タマムシも葉の上だとカモフラージュになっているのではないだろうか?エノキの葉は天気や角度によって光沢もあるし・・・。

↑ やっと捕まえたぞー!

平成18年7月  茨城県古河市・古河市総合公園

 エノキやサクラ、ケヤキの大木といえば、大きな公園や神社の林。
 まずは、近所の古河市総合公園に行くことにした。桃園が有名で、春先には見物の客がたくさん訪れる。
 その桃の林とは反対側の東の林に向かうと、大きな池に何匹ものチョウトンボが迎えてくれた。林の中では、カブトムシやノコギリクワガタに混じり、僕の好きなクロカナブンにたくさん会うことができた。そして林縁に大きなエノキを発見。さっそくてっぺん付近を見上げるが、エノキは僕が思っていた以上に大きい。こんな高い場所の虫探しなんて、今までしたことがない。