ガロアムシ目ガロアムシ科 大きさ 約20mm  分布 本州(関東から中部)
 「生きた化石」といわれる原始的な形をした昆虫。体は平べったく、羽がなく、あめ色がかった色をしている。山地の岩石の下や朽木の中などにいる。夜行性で、雑食。ガロアムシの仲間は日本では4種〜7種(分類研究が不十分)ほどが確認されている。発見されにくい場所にすんでいるので、生息域などはよく把握されていないなぞに満ちた生き物。日本ではフランスのガロア氏が最初に発見したことが名前の由来。
ウォッチングのコツ・・・・発見されにくい場所にすんでいるので、資料も少なく、その生態はなぞに満ちている。森林の中やガレ場などの、石の下や朽木の中に潜んでいる。特に山深いところの渓流の周辺が狙い目か。石をめくると運がよければ出会えるだろう。

ガロアムシ


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 生きた化石、という響きだけで、僕にとってはもう十分スターである。でも、知っている人は少ないのではないだろうか。今回はガロアムシの登場である。
 

平成18年4月  東京都檜原村(ひのはらむら)

 檜原村は東京の西端、奥多摩地方にある村で、その9割以上が森林だ。「秩父多摩甲斐国立公園」としてその豊かな自然が保全されており、都民の森など、さまざまな施設やキャンプ場が整備されている。
 北関東に住む僕にとって、ヒダサンショウウオなど西日本系の生き物に出会える可能性があるのがなんともうれしい。
 

 4月といえども、山奥の春はまだ寒い。若芽もめぶきだしたところだ。枯れ草の中から、カタクリの花が咲いていた。狙いは2種類のサンショウウオ。同じ沢に同居している。
 とある沢を山頂に向かって歩いた。途中、オオルリに出会い、リスが目の前をかけていくのを見送る。サンショウウオは沢の石をめくって探すが、幼生しかいない。成体を探して沢周辺の石をめくっていく。ふとガロアムシが頭によぎる。なんともいえない気配がするのだ。沢から3mほど離れたところにある大きめの石をどかしてみる。一瞬、白い虫がすばやく動く。ガロアムシだ。

 白いその姿は、一瞬、大きなシロアリや白いハサミムシに見える。
 渓流のそばのガレ場、広葉樹の森・・・僕がガロアムシに出会った場所はいずれも似たような環境だった。なんとなくだが、この環境の湿気がガロアムシの生息には大切なように感じている。
 
 「生きた化石」と呼ばれるわりには資料がない。各地のレッドデータに「情報不足」とされている。日本には6、7種以上生息しているとの説があるが、はっきりしているわけではないようだ。分布は局地的。たぶん、なかなか出会えない貴重な生き物。

 この日、僕にとっては2ヶ所目のガロアムシとの出会い。今回は1つの石の下に成体(上の写真)を1匹、隣の石の下に幼生を2匹発見した。不思議なのは、周辺の他の石を何個めくっても、それ以上のガロアムシが見つからないこと。もう1ヶ所見つけた栃木の生息地でも、1つの石の下から2匹発見しただけ。その後2、3回探しに行ったけど、1匹も見つからなかった。
 定着性の強い生き物なら周辺から何匹か見つかってもいいのだが・・・。生息密度(個体数)が低いのか、移動範囲が大きい昆虫なのか、どうにもよくわからん。

 ひとまわり小さい個体(幼生)である。はじめの個体の隣の石の下から見つかったので、同種であることはまちがいない。まだ完全に成虫になっていないガロアムシは、 頭のオレンジ色が薄く、白っぽい。また、うしろのしっぽ2本が長い
 ぱっと見た感じでは、どちらが頭かわかりにくいようになっているのだろう。

                  顔のアップ 

 肉食なのでキバがするどい。目は、退化しているけど、ちいさな目がちゃんとある。

 僕が見つけたガロアムシの生息地は、いずれも渓流や小さな沢のわき。ガロアムシがすんでる石は、地中に少し埋もれている。深く埋もれすぎてもいないし、まったく埋もれていない石もダメ。そして、石の下は湿った土などでやわらかいほうがいいように思う。

 ガロアムシは、成体で2cmくらい、もっと小さいものもある。ほとんど地表に出てくることのない生き物なので、目は退化しているが、動きは早い。とはいっても、僕が出会ったガロアムシは、めくった石のくぼみの中をぐるぐる逃げ回るだけなので、肝さえ据(す)わればじっくり観察も可能だ。
 肉食で、他の昆虫などを食べるといわれている。

 ガロアムシは、「生きた化石」といわれるわりに、知られていない。
 「ガロアムシ目(もく)が確認され、命名されたのは1914年、昆虫の仲間のなかではつい最近まで最後の「目」の発見だった。ちなみに2002年になんと88年ぶりの「目」が発見された。「カカトアルキ目」という。残念ながらアフリカ産、日本では博物館でどうぞ。
 でも世界で2番目に新しい「目」であるガロアムシは、日本の美しい森林で今もけなげに生きている。

             ↑ 今回のフィールド(東京都檜原村)
       標高1000mを超えるところにあり、岩清水が流れる美しいところだ。
    ↑ 生息地の様子

↑ ひとまわり小さい個体