エッセー
2.日本語でイタリア報道がいちばん多い新聞とは?
2月はイタリア政界激震の月でした。ベルルスコーニ政権による司法権力への介入があからさまに
なり、親左翼の映画監督モレッリの中道・左派批判によって野党「オリーヴの木」も単に反ベルルス
コーニを掲げているだけではダメだと痛感したようです。
残念ながら、というか、当然のことともいえるのですが、こうした動きは世界全体への影響力は皆
無に等しく、日本の大手の新聞ではほとんど伝えられていません。実は現在、日本語で日々イタリア
関連の記事を読める新聞は共産党の『しんぶん赤旗』です。実はこれはイタリア研究者にはよく知ら
れていることなのですが、もともと西欧最大の共産党があり、特派員を置いていることから、イタリ
ア共産党の主力が左翼民主党に改称し、さらに「党」も外して「左翼民主主義者」となった今も、情
報量は多いです。
もちろん、記事は共産党支持者の関心に従っていて、労組関連が多く、視点も一方的で注意が必要
ですが、少なくともイタリア政界で今何が起こっているかは十分つかめます。私自身、公共図書館で
ときどきまとめて目を通すだけなのですが、イタリア語で政治の記事を読むのは、語学的というより
知識的に難しい、という方には、ある程度役立つのではと思います。今月は共産党員以外も鈴木宗男
議員の追及(「宗男ハウス」)で『赤旗』を読んでみる人は多いかも知れません。
試みに『赤旗』の2月の主な記事の見出しを列挙しておきます。
「イタリア 強まる政府の司法介入 国民や司法関係者が反対運動」(2月7日)
「イタリア 政府と労組 賃上げ合意 公務員 月に100ユーロ(約1万2千円)」(2月8日)
「生活守るたたかい強化 イタリア労働総同盟大会 市場任せの自由主義か 権利発展の社会国家か」
(2月12日)
「イタリア 移民船対策で海軍権限強化へ 非人道的と国連も批判」(2月16日)
「ローマで10万人デモ “解雇規則守れ”“戦争反対”」(2月17日)
「イタリア 汚職都市摘発開始から10年 司法攻撃強める右派政権」(2月17日)
なぜか、記事がですます調で書かれているのですが、同時期の主要3紙の記事にほとんど見るべき
ものがなかったので、これだけの記事が出ているのは私にも意外でした。読み方としては「賃上げ」
のニュースなどは「イタリア労組は素晴らしい!」と読むのではなく、「イタリアには賃上げの余地
があるのか!?」と逆に日本の現状を問うてみるような読み方の方が正解だと思います。
私自身は必ずしも左翼に好感を持てない人間なのですが、グローバル化に伴う様々な弊害を見るに
つけ、反グローバル団体や左派政党の発言にもやはり見るべきものはある、と見直し始めています。
先日、ある著名なフランス人学者の講演で司会を務めた著名な日本のフランス研究者が「グローバル
化がアメリカ一極の価値観で決定づけられている昨今、フランス語がそれを批判的に検証する有効な
ツールたりえる」と語っていましたが、欧州各国の言語は多かれ少なかれ、そうした意義を有するで
しょう。左派系のメディアに欧州関連の記事が多いのは当然の帰結だと思われます。
2002年2月26日 やそだ記
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