エッセー
1.イタリアではなぜ、投票が1時間(以上?)待ちになるのか?
5月13日の総選挙は大方の予想通り、中道・右派の圧勝に終わりましたが、投票所の不備で投票を
待つ人々の長蛇の列が午後10時の投票時間終了後も続き、全国最後の投票者が翌朝4時にようやく投
票を終えるという相変わらず先進国とは思えない状況に、高い投票率もかすんで見えます。
長蛇の列に怒って投票箱を壊す人も出て、実際に幾つかの投票所の集計が一時停止し、一番最初に
出るはずの投票率のデータもとれない状況下、出口調査結果などの報道もまだ投票に行く人への影響
を恐れて投票時間終了後も抑制ぎみとならざるを得ないという有様。1時間待ちはザラで、高齢者や
妊婦を優先させる配慮も各地で試みられたものの、列を見て投票を諦めた人も多いはず。列を待って
いるうちに気分が悪くなった人、「こんな投票のやり方は恥だ」とインタビュアーに叫ぶ人たち。
今回、中道・左派連合「オリーヴの木」は米国流に首相候補ルテッリ擁立の「コンヴェンション」
を開催し、さらに「エレクション・デイ」を気取り国政選挙と地方選挙を同日実施、少なくとも5枚
(枚数は地方により異なる)もの投票用紙を書かせたことは大失敗といわざるを得ません。選挙を担
当するビアンコ内相はシチーリア島はカターニャの改革派市長として人気のあった人ですが、今回の
不首尾で政治生命が断たれた、ともっぱらの評判です。
ところで、なぜ午後10時になったら、投票は終わらないまでも列を切ったり、会場のドアを閉じた
りできなかったのでしょう。答えは既に幾つかの投票所の列が入口から百メートル位も続いていたと
いう行列の長さ。もう一つはたとえ投票時間以後に投票所に駆けつけた人でも、それまでに一度来て
列があまりに長いのを見て一度帰ったという可能性もあって、無碍に断ることができないということ。
実際にはそれまで投票所に来てないのに「来ていた」といい、「オレの投票機会を奪うな!」と面白
半分で叫ぶ人も多々あるのがイタリア人ですが、ともかく区別はできません。
しかし、最大の問題点は会場の数が圧倒的に少なかったということです。EU統合に向け財政緊縮
が続いているとはいえ、国家の最重要行事に見積もりが甘かったことは間違いありません。なお、上
記のような状況は大都市を中心に国中で多々見られたことですが、ラヴェンナなど地方都市の中には
なんとか混乱を避けたところもあったことは、イタリアの名誉のために記しておきます。
イタリアを研究するというのは、時にこのような「イタリア研究者です」というのが恥ずかしくな
る事象にぶつかることなのです。しかし愛憎の「憎」の部分も時間を経てさらなる興味へと変わって
いくのは、恋愛同様(?)、人間心理の不思議なところであります。
2001年5月22日 八十田 博人
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