手の平をはじめ、体中に信者の投げたお賽銭が当たってできた小さな傷があります。
眼は黒石、渦巻く螺髪(らほつ)は「清涼寺式釈迦如来」の特徴。
「♪京都、嵯峨野に吹く風は〜♪」
これは関西人なら誰もが知っている、京都の着物店のCMソングですが、そのCMでは嵯峨野の涼しげな風景が映し出されていました。
今から20年程前、バイクで京都あたりを走り回っていました。
当時の嵐山近辺は「タレントショップ」なるものがたくさんあって、人ごみでにぎわっていましたが、人が大量にいる中に入ると疲れて「人酔い」してしまう私は、そういう人ごみのいるところ(特に渡月橋あたり)は避けて、嵐山あたりをうろついていました。
そこで目にした清涼寺。賑やかな嵐山と打って変わって観光の俗臭が全くない静かな場所でした。
いかにも冒頭で述べたCMソングがぴったりの涼しげな清涼寺で見た「釈迦如来像」です。
現在ほど「仏像欲」があまりなかったので、当時は拝観したとき「とても涼しげなお顔をしているなあ」としか思っていませんでした。
しかし最近になってこの仏像の凄さ、素晴らしさを文献や本で解るようになってから、だんだんこの仏像が気きになってきたのでした。
釈迦が37歳の姿を模して作られた釈迦如来像。
東大寺の学僧、「然(ちょうねん)上人が当時の中国(宋)に行って仏師に作らせて日本に持ち帰った仏像だそうです。そして昭和28年に国宝指定の調査のため、色々調べている時に、背中に蓋が発見されて、中から内臓を模した「絹製五臓」や版画の「弥勒菩薩像」など数々の収納品が発見され、その収納品と合わせて国宝指定を受けたのでした。このことからこの仏像を「小さな正倉院」、「生きているお釈迦様」と言われるようになったわけです。
渦を巻くように流れる螺髪(らほつ)、額の白毫(びゃくごう)は銀板で化仏が彫られています。そして体を包み込むような衣文(えもん)の流れ。よく見ると表情、様式は日本にあらず、インドや中央アジアを思わせるようなエキゾチックな仏像であります。
拝観していたときは気付かなかったのですが、体中に小さな傷があります。後でわかったのですが、これは江戸時代に「御開帳」として全国を廻られた時に、信者から投げられた賽銭が当たって出来たものだそうです。それほどまでに庶民から厚い信仰を受けていたのか。台座には「快慶ノ修理」という銘文が残っています。
そしてこの仏像を模して全国に「清涼寺式釈迦如来」がいくつも造られたそうです‥
そんな凄い仏像とは全く知らず、清涼寺でもらったパンフレットもろくに見ずに、ただ「涼しげなお顔‥」しか思っていなかった当時の私。
今にして思えば、そのときパンフレットを見たり、下調べをしていなかったことをチョッと悔やまれます。
「京都、嵯峨野に吹く風は〜」のCMように涼しげな表情で、なおかつエキゾチックなこの釈迦如来像に再び逢いたくなる私。
今度こそじっくり見てみたいものです‥
体を包む衣文(えもん)の流れも異国的。
クールな表情の国宝「釈迦如来像」