「食事制限なし・トレーニングなし」の
「究極のダイエット法」を発見したと言う。
はたしてその効果とは?
「アイソメトリックトレーニング」
ここでは以前放送の「アイソメトリックトレーニング」について説明しています。これは、普段あまり動かす事のない「速筋」を鍛える事により「基礎代謝」を上げダイエットできるという説です。基礎代謝とは、人間が生きていくために心臓を動かしたり消化吸収を行ったり、体温や筋肉を維持したりという、寝たきりでも最低限必要なカロリーのことですが、ここで言う筋肉が基礎代謝を上げるというのは正しいです。他に活動代謝・・・つまり、普段歩いたり、作業をしたり、仕事をしたりという(必ずしも運動ではない)日常生活を送る上で必要なカロリーがあります。
ここで言うダイエット法を見てみると、速筋であれ遅筋であれ、筋肉がつけば「基礎代謝が上がり太りにくい身体になる事」は事実です。筋肉には基礎代謝がありますが、脂肪には基礎代謝がないからです。ただし、よほど筋肉を付けないと体重は落ちないので過大な期待はできないダイエット法でしょう。5Kg減、10Kg減といったダイエットはやはり食事制限を加える必要があります。
「究極のダイエット法とは?」
ここでは東大大学院、医学系研究室、永田孝之研究員が登場して「低インスリンダイエット」を紹介するための実例として、ニューヨーク州のシュナイダー子供病院の男女30人を対象に実験した結果を紹介しています。これによると「マーク・ヤコブソン医師」は3ヶ月間(A)1200Kcalの低脂肪・低カロリーの一般メニューを与えたグループと(これはやせます)、(B)マーク医師が研究している特別メニュー1800Kcalを与えたグループでは、「(A)が平均3.8Kgやせたのに対して(B)は倍以上の8.6Kgやせた」というものです。
ちなみに体重減に関しては心理的効果はほとんど関係ないですし、被験者の人数もまずまずです。「はたしてメニューにどのような謎が隠されていたのか?」。どうやらメニューに秘密がありそうです。疑問が残りながらも、特別メニューとはなんぞや?という事に不覚にも次を早く見たいと思ってしまいました。この番組の「構成のうまさ・展開にあまり無理がない」ということにだまされそうです。ただ気になるのが(A)グループの3.8Kgという数字。では実際に計算してみましょう。
成人(作業強度や男女差、年齢にもよる)が1日に必要なカロリーは1800から2500Kcal。必要量を最低限の1800とすると1200Kcalの(A)の方は600Kcal不足になります。600×90日は54000Kcal。これを体重に換算すると約7.5Kg減となりますが実際はもっと体重が減るはずです。番組では(A)は平均3.8Kgやせたというデータなのに、計算上の7.5Kgとの差が大きいのでどうも納得がいきません。ひょっとしてABのデータは実は逆だったりして。それだと意味ないか・・・
「驚くべきメカニズム」
先ほどの実験では見事に差が出ていました(?)。ここでは食後に血液検査も行っています。その血液検査の中で注目していたのが「血糖値」。「低脂肪・低カロリーのA」と「特別メニューのB」では(B)の方が血糖値の上昇率が低く、(A)は急上昇していました(Aが当たり前です)。血糖値が上昇しない事がなぜダイエットに結びつくのか。東大研究員のコメントは「血糖値を低くおさえ、肥満を促すホルモン(インスリンです)の分泌を抑え、ダイエットする事が可能。これを低インスリンダイエットと言う」というものでした。
ここでそのことを補足する様にある医師がコメントしています。メモリアル医療センター、オーデュポン内科・内分泌学、サミュエル・アンドリュー医師(どうでもいいけど長すぎ)「インスリンは血糖を筋肉に取り込む働きがある一方、人を太らせる働きもある。脂肪細胞へインスリンが糖を運び蓄積させることにも原因がある。」と。
ここで番組のナレーターの解説がテロップ付で入りました「インスリンの働きを抑えると脂肪細胞への蓄積がなくなり全て体内で消費される」んだそうです。ここで、大いに疑問が出てきました。「体内で全て消費される」と言う事は先ほど説明した基礎代謝プラス活動代謝でしか、なし得ないのです。それなくしてインスリンの働きを抑えると(この表現もおかしい。インスリンは正常ならば食物によって自動的に分泌量が決まります)、糖尿病になります。
糖尿病とは血糖値を抑える唯一のホルモン「インスリン」が出ていても働かないか(抵抗性と言います)インスリンの分泌不足によって起こる細胞の栄養不足の病気です。インスリンと言うのは細胞に栄養(ブドウ糖)を届けるホルモンです。ですから、インスリンがうまく働かないので筋肉などの細胞にエネルギーが届かなくなり食べても食べてもやせてくるし、傷の治りは遅くなるし(典型的な栄養不足)、栄養不足のために白内障の悪化や神経痛を起こしたり男性ではED(インポです)になったり大変です。糖尿病だけでHPが一つできますのでこのぐらいにしておきますが、いずれにしても「体内で全て消費される」というのはおかしいです。
他にやせるホルモンとして「グルカゴン」が紹介されています。これは血糖値を上げるホルモン、つまり人間が活動できる状態にするホルモンです。番組では盛んにやせると言っていますが、これが増えたからといってそれは身体が要求しているから増えるのであって、活性化させることなどできません。運動をすればもちろん分泌は増えます。
「血糖値を低く保つ食事とは?」
という事でここでは栄養素の解説です。注目した栄養素は「炭水化物」。これは別名「糖質」とも呼ばれ「脂質・糖質(炭水化物)・タンパク質」という3大栄養素の中から肥満に関係する「炭水化物」に注目しています。私にとってはあたり前なのですが、一般の人はあまり詳しく知らないかもしれません。番組ではごくごくあたり前の説明をしています。
炭水化物はエネルギーを作り出す、つまり活動するために必要な「ちからのもと」の栄養素で、これをダイエットで制限すると活動のためのエネルギーが不足します。エネルギーが不足すると、通常は肝臓や筋肉中のグリコーゲンから使い、次に内臓脂肪を使っていきますが、筋肉からのエネルギーの補充も同時に起きてきます。これを番組では「糖新生」と紹介しています(糖新生は肝臓の代謝系のことですが、医者レベルの難しい用語です)。
つまり普段の80%以下に炭水化物を減らすと少しずつ筋肉が落ちるとのことです。筋肉は先述の「基礎代謝」に関係していますので、これが落ちると、当然基礎代謝が落ちる→食事制限していても体重減があるところでピタッと止まる(これを適応現象と言う)→減らないので元の食事に戻す→元の体重より増える、と言う事が起きてきます。これを「リバウンド」と言います。番組では血糖値が上がりやすいのは「炭水化物」という風に説明していますが、これはあたり前の事です。
「GI値が高い食べ物は血糖値を上昇させる」
ここで「GI値」なるものが出てきました。これは100gあたりのカロリーには関係なく、血糖値を上昇させる指数だそうです。この説明ではGI値が高いものとして、食パン(260)・白米(148)・ジャガイモ(77)・フランスパン(294)・うどん(105)などをあげています。
逆にGI値が低いものとして、大豆(180)・中華ソバ(132)・パスタ(149)・日本ソバ(132)・ピーナッツ(585)等を上げています(カッコ内はカロリー)。しかし、どうしてカロリーが高くてもGI値が低い(血糖の上昇が遅い)のかは「解明されていない」としています。
これは「消化吸収の良いものはGI値が高いのではないか」と番組では推測していますが、吸収の良いメニューの代表の糖質=すぐにエネルギーになる中華ソバや日本ソバなどの麺類は消化吸収が良い筈なのに、なぜかGI値が低くなっています。ここら辺はまだまだ考察の余地がありそうです。というか変です。
「低インスリンダイエット実践編」
番組的にやはり「低インスリンダイエット」の実践者に登場してもらわなければいけません。ここで二人の実践者が登場しています。それぞれ茶野千夏さん、24歳、164cm・66Kgから9ヶ月でマイナス17Kg(ダイエットとしては良いペース)、49Kgに」「小池祥絵さん(かわいいです)、20歳、160cm、52Kgから2年でマイナス8Kg、44Kgに変身です。この2人はどういうルートから海外でしかデータがない低インスリンダイエットの情報を仕入れたのでしょうか?
小池さんは1年も前から実践しているということは、1年前には情報を仕入れて、実践してみようと思うだけの根拠を知っていたはず。今回の「特命」を見て初めて知ったという人は国民の99.9999%以上(国民全部か?)と断言できるので信用性は低いと言わざるをえません。番組的に「やせないと仕事にならないモデル」を探して使ったか、食事制限をしてやせたという例を「低インスリンダイエット」と結びつけるために捏造したか!?どちらかでしょう。
しかし、この2人は視覚的にはナイスバディーですが、私から言わせればいずれもやせ過ぎです。これに関連する事ですが国際基準のBMI(ボディーマスインデックス)では身長の2乗×22が最も病気にかかりにくい体重とされています。この基準は健康を維持するために必要な体重を身長から割り出す方法としては一般的なものです。基準は21以上25未満です。詳細は体脂肪計を用いて脂肪の量を調べないと、身長体重の割に内臓脂肪が多い「隠れ肥満」がわかりませんが一つの基準となる数値です。
それにしても2人はやはりやせすぎです。次にそれぞれの食事内容から番組がポイントとなるべきところをクローズアップしています。だんだんおかしくなってきました。
「ポイント1、穀物に注意する」
先ほどのGI値にもとづき食事の際の注意について実践している「茶野さん」について解説しています。主食を白米や、食パンにするとGI値が高いので、同じカロリーでもGI値の低いパスタ、ライ麦パンに変えることで朝・昼はやせるメニューだとしています。次、夕食に関しては・・・
「ポイント2、ジャガイモ・人参はGI値が高いので避ける」
この日の夕食はハンバーグで付け合せがマッシュポテトや人参ではGI値が高いのでジャガイモの替わりにブロッコリーやほうれん草、人参の替わりにトマト、チンゲン菜が良いと放送されています。糖質を制限するあまり栄養素が不足してはいけないと言う番組の配慮です。この辺は「あるある」と違って親切です。
「ポイント3、食後のデザートより間食が良い」
ここでは間食の方が脂肪になりにくいとしています。しかし、ダイエットを考えるなら間食などしないほうが良いに決まっています。なぜ間食の方が脂肪になりにくいかは「インスリンの数値を低く保てるから」だそうですが、ケーキやジュースを間食に食べていたのでは「低インスリン」とはとうていなりえません。あしからず。ポイント4は省略、食物繊維の効果はあたり前です。
「GI値にさえ気をつければどれだけ食べても大丈夫」
番組の言うGI値の表が都合5回も出てきて「メモをしろ」としつこく言っていました。
「好きなものを好きなだけ食べて、しかもトレーニング無し」
ではなかったのか?キャッチコピーをCMで見てこの番組を見た人は多いはず。それなのにテーマの後半になって「GI値の表のとおりに食べ物を変えろ」だと?これはりっぱな
「食事制限」ではないのか???
ドッと疲れが出てきました。おまけ程度に最後の最後に出てきた解説は・・・
「脂肪を沢山摂るとダイエット効果が期待出来ない
もっとも効果が高いのはやはり運動と食事制限を組合わせたダイエット
低インスリンダイエットに運動を組合わせたらより効果的であり、お勧めする」
というもの。
おいおい話が違うじゃんかよ〜
今回の感想
番組の初めはなかなか説得力のある内容だし、不覚にもおもしろいと思ったのですが、「特命リサーチよおまえもか?」です。やはりそこはバラエティー。皆さん温かく見守っていきましょう。「あるある」よりはマシですから・・・
追記
GI値のことについて当サイトを支援してくださる保健婦のMさんから情報をお寄せいただきました。GI値とは「グリセミック・インデックス」のことで、糖尿病患者が利用する栄養学用語だそうです。それによると糖尿病患者が治療上の目的で食べる「間食」の際に参考にする数値で、低血糖の防止のために参考にするのだそうです。したがいまして、GI値はやせる為の研究でもなく、血糖値の上昇が早いか遅いかの違いで、吸収率には変化がないので食べ過ぎれば同じ事です。ただし、血糖値の上昇が早い=下降も早いですから、間食が止められない人は参考にしても良いかもしれません。いずれにしても好きなだけ食べてやせることはありえませんので、正しいダイエット法を実行しましょう。