間違いだらけのカロリー神話

「今までのカロリー神話は間違っている」と
大げさなタイトルの今回。どんな真実が待っているのか?

はじめに
巷にあふれる簡単ダイエット法はいずれも全く効果がないか、あってもごくわずかです。「摂取カロリー<消費カロリー」とならなければ絶対にやせられないのですが、そういう原則を無視したダイエット情報がバラエティー番組でも度々取り上げられています。


何かを食べるだけとか特定の成分を摂取するだけで脂肪が燃焼することはありません。バランスを崩さない「食事制限と運動」を行ってはじめてやせる事ができるのです。この大前提を踏まえて検証してみましょう。え?えらそうなこと言って私はどんな体型かって?はい、身長172cm、体重63kg、BMIは21.3で普通です。


「カロリーゼロは大間違い」
コンニャクやシイタケ、ワカメは従来はカロリーゼロという表示でしたが、昨年改定された「食品成分表」によると「コンニャクのカロリーは100gあたり5キロカロリー。ワカメは100gあたり16キロカロリー。さらにシイタケは100gあたり18キロカロリー」というように今までカロリーゼロとされていた食品のカロリー表示が追加されたようです。


 そして女子栄養大学、三浦理代さんによると「5大栄養素の中でもカロリーを持っているのは炭水化物と脂質、タンパク質の3つ。ミネラル、ビタミンはほぼゼロ」だそうです。ここまでは正しい情報で見ていてどこにも破綻はありません。ただし低カロリーには変りありませんのでそんなに悪者扱いしなくても良いと思うんですが・・・。


 次に「材料の炭水化物、脂質、タンパク質のカロリーをすべて足したモノがその食品の総カロリーで、カロリー値を求めるには計算値と実測値の2つの方法がある」としています。ここも正しいです。ではファミレスの表示カロリーが正しいのかどうかを 本当のカロリーを計算する「エスアールエル」という会社で「特製目からウロコ弁当」を使って調べています。その機械はミキサーに弁当を丸ごと入れかき混ぜた後実際に燃やしています。そうやってカロリーを実際に出してみると「計算上804キロカロリーの弁当が実際は980キロカロリーにまで増える」んだそうです。数字が正しいかどうかはわかりませんが、これは「調理の際の油や調理方法によって変る」としています。そのとおりですね。


 ただ惜しいのが、そうやって調べたカロリーが「赤ちゃんからお年寄りまで全ての人に等しく全て吸収されるという前提」の元に放送している点です。消化吸収の良いうどんでも80%の吸収率ですから、調べたカロリーは全ての人に等しく吸収されません。消化吸収能力は年齢が高くなるほど衰えてくるというデータを出せばもっと信憑性は増したでしょう。ここまでは良い番組です。



「カロリーを減らせばやせるは大間違い」

 ここでも間違った事は言っていません。体重計で有名なタニタの体重科学研究所の所長がコメントしています。「カロリーを減らせば蓄えたエネルギーを使うが、あるところまでくると体重が減らなくなる。これはホメオスタシスが働いている」というコメントです。正しいですねー。ツッコミできないです。


 これは「適応現象」というもので、少ないカロリーで身体を維持できるように自然と適応してしまう現象です。ここであきらめて食事を元に戻せば待っているのが「リバウンド」。運動を伴わない食事制限は筋肉を減少させるので、筋肉が持つ、生きていくために最低必要な心臓を動かしたり消化吸収を行ったりする「基礎代謝」が減ります。基礎代謝が減るとやせる前より脂肪が増えてしまいます。これを繰り返す事を「ウエイトサイクリング」と言いますが、本当にやせない身体になってしまいます。どうせならここまで放送して欲しかった。


 しかしここで番組から「あるものを食べると脂肪の代謝を高めてくれる」という努力したくない視聴者に朗報のような形で「唐辛子のカプサイシン」と「ビタミンB2」を紹介しています。せっかくまともな展開なのに台無しです。


 まずカプサイシンですが、これはラットを使った実験で効果があったので人間にも、と期待された成分ですが実際には効果がありません。カプサイシンは脂肪を燃焼させる「褐色脂肪細胞」を活性化させるという効果があり、これが脂肪を減らせるのではないかということがラットで確認されたのですが、ラットの褐色脂肪細胞は人間に比べはるかに高い比率で存在します。ですから人間では汗は出ても脂肪はほとんど燃えません。番組の研究不足です。


 次に脂肪の代謝に関係の深いビタミンB2ですが、これを多く摂取したからと言って運動しなければ当然脂肪燃焼には関係ないです。これが不足していると脂肪の燃焼に関係あるのですが、現在では不足などしてなく、むしろ食べ過ぎで過剰です。過剰な分が過剰に働いて脂肪を燃やすかと言えばそんな事はなく、哀れにもおしっこに混じって捨てられてしまいます。


 ここでビタミンB2を多く含むものとして「ウナギ」がクイズの正解で登場していましたが、ウナギはサーロインステーキ並に脂質の割合が高い食材です。ウナギをドカ食いしたらもちろん太ります。都合の悪いことは隠すという姿勢はやはり変わりませんね。


 ここで先ほどの女子栄養大学、三浦理代さんのコメントが出てきました。「感情の起伏やストレスは消費カロリーを増やす」んだそうです。これは脳の消費カロリーのことを言っているのですがこの後の実験が実にいいかげん。なんだーやっぱり「あるある」と同じフジテレビか。前半での正しい情報がここで一気に崩壊してしまいました。その実験とは・・・


 「オキシログU世」なる「酸素の消費量をカロリーに計算しなおす」という画期的な機械が紹介され、口元にマスクを当て背中にでっかい酸素ボンベを背負った20歳の男が登場です。海に潜るんでしょうか?彼女とは3回目のデートだそうで、手も握っていないということです。名づけて「ボンベDEデート」だそうです。しかしかわいそうです。3回目の勝負どころのデートでマスクなんて・・・。放送では酸素の消費量を直接運動に置き換えていました。


 例えばクイズになった部分ですが、彼女が「背中を掻いて」などと甘くささやかれてそれを実行した時には2.9Kcalでした。これは「1分間の縄跳び」に相当するそうです。その時に彼女の背中に直接手を入れて触っていましたが、興奮指数は200%だったでしょう。手も握っていないのにいきなり背中に触れたのですから。しかも服の中に手を入れて・・・わおー


 ここでは考えるだけで脳がカロリーを消費すると言う情報を、ふざけた実験でぶち壊しています。酸素消費量はただ興奮状態で増えただけなので一瞬のデータを出しても意味ないです。やっぱダメかー。ちなみに「脳はブドウ糖しか栄養にしない」贅沢な器官ですがとてもやせるほどのカロリーは消費しません。普通に生活していて脳みそだけでやせようなどとは思わないことです。




「砂糖はダイエットの敵は大間違い」
 ここで砂糖のカロリーが「100g384Kcal」でご飯は「100g168Kcal」なので計算すると2.3倍。砂糖のスプーン1杯はご飯の大さじ1杯弱なので太らないとしています。ここで「医学博士」の登場です。なんか怪しいです。ここでのコメントは「糖質は蓄積する量に限りがあって、脂質は無制限に蓄積する」というものでした。番組でも消費する順番は糖質が先で、脂質は糖質が消費してなくなる30分後からと言う風に放送していましたが、正しいようで間違っています。


 まずは食事から摂取した糖質がそのままずっと糖質のままではいないこと。糖質は単糖類という最小単位にまで分解されてから小腸で吸収されブドウ糖になります。身体が使わなかったブドウ糖は肝臓でグリコーゲンというものに形を変え肝臓と筋肉に蓄えられますが、過剰が続けば肝臓で脂肪と言う形にかえられ脂肪組織に蓄えられます。また小腸で吸収された脂肪も脂肪組織に蓄えられます。


 ブドウ糖は食後約4時間は消化吸収によって供給され、それがなくなると血糖上昇ホルモン「グルカゴン」が出て肝臓の中のグリコーゲンをブドウ糖にかえて使っていきます。その時間はおおよそ1時間ですので食事が終わってだいたい5時間経ったら空腹のピークがきます。脳がエネルギーを補給しろと空腹感を感じさせたりおなかを鳴らしたりするわけです。


 しかし食事の際に過剰摂取した糖質、脂質は脂肪細胞に蓄えられますので、動かずにご飯の時間が来たからと空腹かどうかにかかわらず食べていては当然脂肪として蓄積されます。ですから糖質、「砂糖を摂っても太らない」は間違いです。ただし、糖質より脂質、すなわち料理に使う食用油だとか動物性脂肪は糖質の1g=4キロカロリーに比べ1g=9キロカロリーですからダイエットの敵であることにはかわりありません。


「脂質の消費は30分後から」というのは「肝臓のグリコーゲンが底をつきブドウ糖が不足したら次に脂肪のグリセロールを糖に変え供給される」という意味で使っていると思いますが、食べた脂質がそのまま身体の中で働くという誤解をしています。運動をすれば上記の5時間には関係なく糖、脂肪の燃焼が行われますので「脂肪の燃焼は運動して30分後から」が正しい表現です。当然糖質の過剰は肥満につながります。



今回の感想
同じフジテレビ系列でもこの番組は「あるある」とは違い比較的まともな内容で論理の飛躍も少ないです。ただし実験になると途端にめちゃくちゃになってしまいました。さらに後半の展開は「あるある」に通ずるところがあり、やはりこれはクイズ形式の「あるある大事典」ですね。視聴率の取れる健康情報番組で二匹目のドジョウを狙ったのでしょうが、はたして視聴率はどうだったのでしょうか?
私は視聴率なんてどうでもいいんですが。