血 管


ほとんど脅迫とも言える人体解剖シリーズですが、
視聴者から身代金はとれるのか?

「血管とは」
血液がサラサラでも肝心要の血管が詰まったり破れたりすると命が危ない」という毎度のヘタな脅しから始まった今回は、そもそも血液がサラサラであれば血管疾患のリスクは下がるという事実に矛盾した前提によって成り立っています。あ、血中脂質は低すぎてもダメね。


そんなおんぼろな前提は後ほど自ら崩壊させているのですが、血管は長さ10万Km、酸素と栄養を運ぶ動脈、二酸化炭素と老廃物を運ぶ静脈、毛細血管の3つに大きく分けられ20秒で全身を一巡するという事です。これは一体誰の意見なのか。


では、計算してみましょう。1分間に心臓が押し出す血液の総量、すなわち心拍出量の正常値は一回拍出量60〜80mL、分時拍出量5〜6 L/minであり総血液量はおおよそ体重の1/13であることを考えると、例えば体重60kgの人の場合約4.6Lとなり、全血液量がおおよそ1分以内で循環系を一巡することになります。なので20秒は早すぎだーな。


さてスタジオでは2年前にも計測したと言う動脈の弾力度を測る機械でゲストや会員を調べていました。19歳でも50歳代だとか2年前に比べ10年近く若返ったとか、逆に20年も老化が進んだ堺正章だとかがやんややんやの大騒ぎ。こんだけ派手な誤差が出る機械なんぞ目安でしかないし、血管は若返りはしないってことを知らんのか。



「動脈の働き」
血管は内膜、中膜、外膜という3層構造で年齢と共に弾力性がなくなり、これすなわち「カチカチ血管」だということですが、この幼稚園児を相手にしたようなネーミングはなんとかならないものか。そのくせいつも説明は1度見ただけではとても理解できるようなやさしいものではなく、専門用語を連発して誤魔化すくせに。


で、同年代でも弾力性に差がでるのだそうで、その差というのは運動によって増えるNO(一酸化窒素)が弾力性を司る中膜を柔らかくするからなのだそうです。これはこれで間違いないものの、勘違いして激しいスポーツをしたりしないように。そういうパッパラパーが必ずいるんだから。


更に恐ろしい動脈のトラブルは内膜にコブができる「ぷよぷよ血管」だということで、粥状(ジュクジョウ)動脈硬化(正しくは粥状硬化症)を番組ではそう呼んでいました。これは酸化したコレステロールをマクロファージが食って血管の内膜に蓄積するということで、破れると血小板が集まってきてついには血管が詰まってしまうということです。うむ。しかし言うことに事欠いてぷよぷよだとは幼稚だわい。


そして恐いのは自覚症状がないことで、高脂血症、糖尿病、高血圧、喫煙の4項目がそれぞれ3倍ずつ危険度を上げるので、該当する人はそうでない人に比べ81倍も心筋梗塞の危険度が跳ね上がるのだそうです。ん?単純な掛け算でそんな数値が出るのか?それになぜ肥満が入らないんだろ。



「毛細血管の働き」
身に覚えのないアザが出来やすいのは毛細血管の壁が弱くなっているからだそうで、細胞と栄養や老廃物のやり取りをする代謝の要であるために血流が滞ると肌のくすみ、目の下のクマ、手足の冷えなどが起こるのだそうです。うん、アザ以外は合ってるな。


なぜ血流が悪くなるかといえば細動脈と毛細血管の間にある「前毛細血管括約筋」という門があって血流を調整しているということで、交感神経が優位なら締り副交感神経が優位なら開くという説明は間違いない。ただし呼称は毛細血管括約筋と資料では「前」の位置が違ってますし、実際に明確な門はないけど。まあ、いいか。


原因はタバコやストレス、寝不足などで、血流が減れば壁がもろくなり少しの衝撃で血管壁が破れて赤血球の成分がもれた結果がアザである、と、ごたくを並べての説明はどうも釈然としない。アザ=打撲と考えるのがまっとうだろうし、色の濃さは打撲の強度で変わるしな。


しかし菊間アナは少しの振動で知らない内にアザが出来ていると大げさに言ってました。もしそうならガタゴト揺れる電車に乗る人は皆アザで全身真っ黒けだろうに。尚、知らない内に不思議と全身にアザが出来て痛いという中年の殿方は、たまには夜更かしして先に眠っているおかあちゃんの顔にまたがって出来るだけ音のない屁をすかしておきましょう。


そして対策ですが、手のひらや足の裏をこする、腕やふくらはぎも同様にこするというハエのような体操が出てきました。久々に登場した体操がハエの真似をするというのも笑えるのですが、まぁ、それはそれでよしとする。



「静脈の働き」
静脈のトラブルで注目を集めたのがエコノミークラス症候群という、誠に貧乏くさい名前をもつ肺塞栓症(正式には急性肺動脈血栓塞栓症)だということで、それはなぜ起こるかといえば足の静脈の血液が滞りできた血栓が急に動くことで心臓から肺まで到達して血管が詰まってしまうからだということです。うむ。


それを使った脅しではなんと足のむくみが関係するって事で足の筋肉を使わないからなのだそうですが、エコノミークラス症候群はなにも飛行機だけに特有に起きている症状ではなく長時間座った姿勢でいることが原因なのに、足のむくみ=血栓に即つながるかのような誤解を視聴者に与えています。1文長すぎ?


しかも実験では朝と夜でふくらはぎの太さが違うという、重力の影響で当たり前に起きる現象をとらえて血栓がどーたらこたらと脅すおまえらは詰まったトイレでも掃除してなさい。で、対策は足首を動かす、普段から歩くということです。これはまあいい。


それにしても「むくみは自然な現象なので心配ありません」と言わないところがこの番組らしいところ。おまけに対策として何の参考にもならん食材紹介があるしだな、何かを推奨しないと番組的に面白くないとでも思っているのか、バカタレ。


とまぁ、いつものことなので「ああ、またか」と思って終わりなのですが、ここで人はなぜ風呂で屁をこくと泡に鼻を近づけてしまうのかを、心理学の見地から一晩考えてみるとする。