旅行記名古屋編(其ノ参・映画)
今日は関東に戻る日である。少し早目に起床。帰りの電車まで余裕がかなりあったので、映画を見に行く。前々から友人と観に行く約束をしていた、「千と千尋の神隠し」である。此処で内容をとやかく言うのも難なので止めておくが、期待通りかなり面白い作品であった。丹念に描かれた空がひどく印象に残った。
映画の後は、JR東海道本線に乗るために名古屋市営地下鉄で名古屋まで移動。電車の中で六時間何も食べられないような気がしたので、昼食をとることにする。入った店はかなり混んでおり、素早く食事を済ませ、遅れそうになりつつ慌てて駅へ。何とか浜松行普通列車に間に合う。
名古屋を出たのは昼頃であったため、余裕で座ることができた。連日の不摂生の祟りか、瞼が重くなる。気が付くと終点近くで、既に夕べの気配が迫ってきていた。陽光も心なしか昼間の鋭さをおさめ、水面を紅く染めつつある。終点・浜松。ここで熱海行の列車に乗り換えである。
熱海行普通列車。帰宅時間と重なったためか、矢鱈と混んでいる。座ることはできなかったが、山側の窓の近くに居を占めることができた。行くときは見えなかった日本一の霊峰・富士はその身を赤く変身させていた。宵闇の迫る空と、紅い富士とが絶妙の対照を醸し出し、思わず嘆息してしまうほど美しい。そうこうするうちに夜の帳が世界を闇に閉ざす。頃合を同じくして、列車は終点・熱海に到着した。
熱海からは東京行に乗車する。最後の乗り換えである。いよいよ旅も終焉に近付く。夜の帳が下りた関東の諸都市は、美しい夜景を作り出す。夜景の間を縫うように列車は疾走する。大小色とりどりの灯火が闇に浮かび上がるのを眺めつつ、今回の旅を振り返る。今回も色々なことがあった。行きに各駅停車に友と二人で乗ったこと、名古屋の友との再会、プロ野球の熱気、犬山の風光、様々なことを語り明かした夜、面白かった映画、そして友との別れ・・・。旅はいい。人に様々な経験をさせてくれる。この未知の体験の魅力に憑かれて、私は今後も各駅停車の旅を続けることだろう。次回は北に行ってみるのもいいかもしれない。と、溢れ返る思いを胸に収め、横浜で下車。こうして今年の夏初めての旅行は幕を閉じた。