旅行記名古屋編(其ノ弐・犬山)

今朝は遅めの出発であった。九時過ぎ、大学に用があるという友人とともに出立する。途中で分かれて、一路犬山へ。名古屋市営地下鉄東山線一社駅〜伏見駅乗り換え名古屋市営地下鉄鶴舞線一社駅〜上小田井駅。此処までは名古屋市営地下鉄の管内なので、あっさりといく。ここから名鉄に乗り換えである。

名鉄と名古屋市営地下鉄は、接続が微妙で、今回は駅で三十分ほど待つこととなった。遅めの朝食を休憩所で取る。名古屋名物てんむすである。人心地ついてから、名鉄犬山線普通犬山行に乗車。特急車輛を普通電車に改装した電車で、快適に座ることができた。乗車する人影はまばらであった。窓外の風景は、名古屋近郊とは思えないほど牧歌的なもので、青苗が風に揺られていた。ところどころに咲く百日紅の花の赤が彩りを添える。郷愁に浸りつつ、思索に耽りつつ、電車は犬山へ。ここで新岐阜行普通電車に乗り換え、犬山遊園駅へ。自動改札のない駅で、岐阜県との県境に位置する地である。

駅を降りると、木曽川が流れていた。河岸を何となく散策する。昔、水害が猛威をふるった時代に我が郷里の薩摩の藩士達が命を懸けて治水工事を行ったこの河は、静かな流れを湛えていた。水面に映る陽光が眩い。昨日よりはいい天気になりそうだ。暫し水音を聞き、涼感を堪能した後、犬山城へと向かう。

犬山城は、創建当初の天守が残る、日本でも稀有の城で、その威容から白帝城とも呼称される名城である。中国の白帝城の故事や李白の詩を思い出しつつ、天守への道を登る。結構な山になっており、木漏れ日が心地よい。観光客も皆無に近く、蝉の声が響き渡る。それが逆に静謐さを醸し出す。緑の中の階段を登りきると、天守台である。

天守は、その威容が天下に称えられるだけあり、素晴らしいものであった。内部も古のままで、時代の風を感じる。所々に軍事的な工夫がみられ、質実剛健、非常に好感のもてるものであった。最上階からは、眼下に木曽川、そして城下町を一望できる。駆け抜ける風が快い。仄かに緑の香りを含んだ風である。暫し眺望できる景色と風とに時を忘れる。都会にいて忘れていたものを取り戻したような気がした。

帰りは、道を換えて、犬山城下へ。敢えて旧道を通る。そこには、城下町のたたずまいが今でも息づいていた。道行く人もなく、閑散としていたが、何ともいえない趣がある。表通りでは決して味わえない何かがあった。少し遠回りであったが、これも旅の醍醐味であろう。

そうこうするうちに、旧道と新道とが合流する地点へ。現代犬山市の中心である。少し鄙びた感じが地元の某S市と相通ずるものがあり、どことなく懐かしさを感じた。

帰りは名鉄犬山駅から電車に乗車。丁度名古屋市営地下鉄鶴舞線直通豊田市行普通電車を捕まえることができ、待ち時間無しで戻れることに。本数が限られているうちの一本なので、僥倖であった。そんなこんなで、電車に揺られ、風光を楽しみつつ地下鉄線へ。待ち合わせ場所の名古屋駅は直ぐである。伏見で東山線に乗り換え、名古屋へ。今日の旅はこれにて終了であった。

明日は遂に関東へと戻る日。さてはて、どんな出来事が待ち受けているのであろうか。