帰省記(上) 新幹線編

朝五時、起床。いつもより三十分ほど早い。何も準備がなされていなかったので、これくらいが丁度よかったか。帰省のため、荷は少なめに。バッグ一つに納まる。六時に出発。目指すは東京駅である。

先ずはいつも通り東急東横線妙蓮寺駅へ。時間の節約のため、東海道線を使うべく、横浜駅へ向かう。横浜で少しの待ち合わせの後、東海道本線東京行に乗り、東京に向かう。思いのほか列車は混んでいた。流石に平日だと驚嘆。七時五分に東京着。新幹線乗り場へと向かう。

乗ろうと思っている新幹線まではかなりの余裕がある。八時三十八分東京発博多行。八時十四分東京発の博多行よりも停車駅が少ないため、博多に早く着く列車である。自由席のため、座席を確保するために早速並ぶ。東京まで出たのはこのためである。同じようなことを考える人が世の中には沢山いるようで、多くの人が駅に待機していた。暫しの後、新幹線が駅に到着、乗り込み、窓際の席に座る。流石に並んだ甲斐あり、かなりいい席であった。発車時刻までに自由席はほぼ満席。並んでよかったと痛感する。間もなく東京から新幹線が発車した。帰省のための新幹線旅行のはじまりである。

東京〜新横浜間。かなり短い区間であるが、横に座った二人連れが、某宗教の関係者で、その宗教の話をしきりに私に持ちかけてくる。私は自分が浄土真宗の頑なな信者であるということにして、耳を貸さない。悪智慧がついたものである(笑)。神奈川県に入った頃には相手も諦めたらしく、やっと窓外の風景を落ち着いて眺めることができた。新幹線は在来線とは違ったルートを進むため、普段見慣れた街の違った顔が見えてくる。それにしても、流石は新幹線、物凄い速さである。普段通学で用いる区間をものの五秒位で駆け抜け、あっという間に新横浜。隣の二人はここで降りるらしく、宗教の小冊子を執拗に薦められる。貰わなかったが。新横浜では新幹線を待つ長蛇の列が。やはり東京から乗って正解だったと思いつつ、さらに旅は続く。

新横浜〜名古屋間。在来線ではよく各駅停車を利用し、慣れ親しんだ区間であるが、やはり新幹線は違う。なによりもトンネルが多い。風景を少し楽しんだかと思うとまたトンネル、といった感じであった。とはいったものの、普段とは違った風光が目に飛び込んでくる。盛夏の緑は、どこまでも鮮やかであった。蓮の花の白や薄紅色が彩りを添える。何とも快い景色である。海は殆ど見ることができなかったが、緑があまりにも鮮烈な印象を残している。そうこうするうちに新幹線は名古屋へ。在来線でゆうに六時間はかかるところを一時間余りで走破。文明の発展とはげに恐ろしき哉と微妙に思う。名古屋では結構な人が降りるが、やはり沢山乗ってきて、ほぼ満席。次は岐阜羽島である。

名古屋〜岐阜羽島間。名古屋の都市圏を抜けると、再び緑溢れる風光が窓外に広がる。この頃から空が曇りはじめた。そういえば朝の天気予報で東海から関西、中国、四国、九州はにわか雨の降り易い天気だといっていたなあと微妙に思っていると、直ぐ岐阜羽島である。ここではあまり新幹線待ちをしている人はいなかった。しかし依然満席。お盆休み前でこれでは、お盆期間は辛いだろうと思う間もなく列車は進発した。

岐阜羽島〜米原間。木曽三川を渡る区間である。酷暑にもかかわらず、豊かな水量を湛えるこの三川は、旅に一陣の涼風を与えてくれたようであった。この区間もかなり短いため、直ぐに米原に着く。やはり新幹線の速さは圧倒的である。各駅停車とは一味違った旅を楽しめるということを実感した。

米原〜京都間。この区間もかなり短い。やはり目には青々とした木々が風に揺られる風景が映る。違う季節に旅行すればまた違った感じがするのだろうと密かに新たな旅行計画を心に浮かべているうちに京都へ。京都は何度行っても飽きない場所であるが、今回はここが目的地ではない。次回を楽しみにしつつ、京都を離れる。

京都を出ると、列車は関西の中心部に入る。次は新大阪である。徐々に窓外は都市圏の風景に変わってきた。活気溢れる関西の中心、天下の台所・大阪にはあまり行ったことがないので、ここも次の目標かな、と思ううちに新大阪駅に着く。何たる僥倖、ホームの向こうには西日本でしか走っていない新型新幹線・ひかりLailStarが停車中。憬れの列車を間近でとくと眺めることができた。今度は是非とも乗ってみたいものである。閑散期に新大阪乗り換え、というのもいいかもしれないとか思っているうちに列車は進発。次は新神戸である。

在来線であれば、大阪〜神戸間は都市部を通っているため関東圏とは一味違った都市の味を楽しむことができたが、新大阪〜新神戸間はトンネルが多く、満足に風景を楽しむことが出来なかった。しかし、神戸も一度は行ってみたい土地である。南京町にひどく心を引かれる。次回は関西の旅にしようかなあ。そうこうするうちに列車は新神戸へ。

新神戸〜姫路間。ここでも新幹線は在来線とは変わったルートを通るので、海をみることができなかった。しかし、ものの数十分で関西圏を駆け抜ける新幹線には脱帽である。各駅停車で実家まで帰ったときのことを思い出し、少しく感傷的になりつつ、列車は姫路へ到着。いよいよ旅は中国圏へと。

姫路〜岡山間。再び都市の喧騒を離れ、緑溢れる風光へ。空は相変わらずの曇りであるが、緑は目に心地よい。このあたりになると、若干空席が出てくるようになったようであった。空腹感が生じ始めるが、博多でかしわ飯を食べるつもりでいたので、ぐっと我慢(笑)。この区間では瀬戸内は内陸部を走っているため新幹線からは見れず、残念であった。岡山では、乗り降りのバランスがほぼ同じくらいであった。

岡山の次は広島。いうまでもなく我らがカープの本拠地である。この頃から空は今にも泣き出しそうな曇天。広島県に入ったあたりで遂に降り始めた。広島市内は煙雨に霞む。今までの風景とは打って変わり、どことなくしっとりとした情緒漂う様子に思えた。雨は緑をひときわ美しくし、何ともいえない想いが全身を駆け抜ける。そうこうするうちに広島駅着。博多まであと一息である。

広島〜小郡間。やはり中国地方の山間を進む。トンネルを抜けると緑麗しい集落、さらにトンネル、また集落、とめまぐるしく風景が入れ替わる。徳山付近では、伊予灘を見ることができた。空の色を映してか、波涛は白く、寂寞を感じる。小郡の次はいよいよ九州・小倉である。

下関を過ぎると、関門海峡を渡るため、長いトンネルへ。ここを抜けると我が故地・九州である。地上に出るとその風景にどことなく懐かしさを感じる。九州に帰ってきたんだという思いに捉えられているうちに、小倉駅へ。次は終点博多。新幹線の旅は刻一刻と終焉に近付くのであった。

小倉を出ると、新幹線は一路九州最大の都市である博多圏へと向かう。博多も色々と思い出のある街である。過去のことに思いを馳せ、故郷への想いを胸に、博多に降り立つ。ここからは特急つばめに乗り換えての特急の旅である。さて、これからどんなことが前途に待ち受けているのであろうか。次回、帰省記(下) 特急編。乞うご期待(笑)。