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「ファミリーBASIC」


Media :FAMILY COMPUTER
Maker :任天堂
種 別:BASICプログラム拡張セット(専用ROM・キーボード)
発売日:1984年


 ゲーム機はゲームができれば良い。
この当時、テレビゲームという子供にとってのみ重要で、むしろ親達からは忌
み嫌われたメディアを、来るべきコンピューター社会に対応する為のステップ
と位置付け、マイコン機能(BASICプログラム可能な状態)を搭載することを免
罪符として売ろうとしたメーカーは多かった。
いや、むしろそれが主流だった頃に、「ゲーム機はゲームができれば良い」と
いう発想はコロンブスの卵にも匹敵する一大発想転換で、ファミコンはそれ故
にゲーム機戦争を生き残ることができた、とおいらは思っている。


 しかし、ファミコンは成功したが故に、その後「ゲーム機はゲームができれ
ば良い」という基本方針に反して、例えばロボットを出してみたり、ディスク
システムを利用した通信をやってみたり、果てはゲームを衛星放送してみたり
と本筋から外れた事業に手を出すことになるのだが、まだファミコンが「成功
した」とは言い切れなかった1984年の段階で、一旦は切り捨てた筈のでBASIC
拡張キットを発売している。

 それがファミリーBASIC。
14,800円という価格はファミコン本体と同額であり、単三電池でバックアップ
可能な専用ROMカートリッジと、専用キーボードのセットで構成されている。
ただ、面白いのは、当時の「家庭用マイコン」が電源を入れるといきなりBA
SICのコンソール画面からはじまるのに対し、BASICコンソールはファ
ミリーBASICの一部の機能、という位置付けになっており、電源をいれる
と、名前入力を求めるフレンドリーな画面で始まる。

 そこから単純ではあるが、ファミコンとキーボードを使って対話をしながら
自分のやりたこと(メニュー)を選択する。
ファミリーBASICで出来ることは以下の通りだ。

・バイオリズム算出
・カリキュレーターボード
・ミュージックボード
・メッセージボード
・BASICモード

 バイオリズムの算出だが、自分の生年月日を入力すると、今日が自分が生まれ
てから何日目なのか?ということをファミリーBASICが教えてくれる。
別に教えてくれなくとも良い、という気もしないではないが、「今日は一体自分
が生まれてから何日目なのか?」ということは、凡そファミリーBASICを愛
用していない限りに置いては滅多に知ることができない為、貴重といえ貴重な機
能である。
次にバイオリズムを知りたい日を入力すると、その日のバイオリズムを知ること
ができる。
よくも悪くもこれだけである。

 次にカリキュレーターボードは、いわゆる計算モード。
加減乗除の計算を行ってくれる。
正直な話、別に表計算ができるわけではなく、電卓で済むような機能である、と
いう点は否めないのだが、まだ自分専用の電卓をもてなかったこの当時の小学生
にはこれでも立派な機能であり、彼らの殆どは即座に「算数の宿題・・・」とい
う謎のキーワードを脳裏に思い描いていたりした。


 ミュージックボードは簡単な作曲・演奏が楽しめるモードだ。
ただ、おいらは現在・過去未来を通して音符が読めない上、そもそも基本的な問
題として音程を「ド」とか「レ」とか「ミ」で表現するという習慣そのものを未
だに理解できていない為、最も実行される機会の少なかったモードでそれ故に記
憶もほとんど無い。

 次のメッセージボードは、カリキュレーターボードに輪をかけて簡素なモード
で、キーボードを使って画面に文章を書くことが出来る(使用できる文字は半角
カタカナのみで文章量は一画面が限度)これは、例えば、お母さんが出かける前
に「オヤツハ レイゾウコニ ハイッテイマス」というようなメッセージを残し
て下校した子供に伝えるとか、子供が母親に「ヤマダト ヤキュウニ イキマス」
というようなメッセージを伝える為に使いたまえ、というような説明がしてあっ
たのだが、はっきりいって利用価値は限りなく低い。メッセージはバックアップ
RAMに記録できるものの、仮に家に帰り着くなりいきなりファミリーBASIC
を立ち上げてメッセージを確認するお母さん、などというのは恐らく日本に一人
もいなかったであろうし、テレビとファミコンをつけっぱなしにして出かけると
いう手もないことはないが、それはそれで電気を無駄にした!という罪でおしお
きを喰らう可能性の方が遥かに高い。

 それに何より、このモードで可能な最大限の可能性ですらも「紙に書けば済む」
という一言で駆逐されてしまうということもあって、ミュージックボードに次い
で利用されることの少なかったモードである。

 余談だが、何年か前に「短いメッセージを録音できる冷蔵庫」なるものが発売
され盛んにCMを流していたが、これも、「おやつは冷蔵庫に・・」に的な使用
法を想定したもので、おいらは即座にメッセージボードの悲劇を思い出してしま
った、こちらは、メッセージボードに比べれば使用法そのものはシンプルなのだ
が、果たして家族間で自分の声を録音して聞かせ合いたいと思うだろうか?とい
う事に思いが至った時、有効利用の可能性は限りなく0に近いことに気づかされ
る。


 さて、最後になったが、本命のBASICモード、つまりBASICコンソー
ルだ。
この画面は、黒画面に白文字のシンプルなBASICコンソールで、基本的なB
ASI命令に加え、ファミリーBASIC特有の追加命令が搭載されており、B
ASICそのものの開発はX1やMZシリーズのHu-BASICでお馴染みのハドソンが担
当している。
追加命令の多くは、予め登録されているスプライトキャラクター(マリオやレデ
ィ等)を簡単な命令で思い通りに動作させられる系統の命令が多く、この点が他
のマイコンとは確実に一線を画しており、非常に面白い試みではあったが、メイ
ンRAMが2Kバイトしか搭載されていない為、どうしても開発できるプログラ
ムに容量的な限界があり、当時おいらが夢に思い描いていたアドベンチャーゲー
ムなどは開発のしようもなかった。


 仕方がないので、たまたま本屋で見つけた「ロードランナーとナッツ&ミルク
と、四人打ち麻雀とファミリーBASICの攻略法が載った本」というハドソン
が出した、ゲーム攻略本の走りのような、かなりチョイスが意味不明な本(四人
打ち麻雀の開発はハドソンだったらしい)を購入し、そこに掲載してあった、マ
クロスの「愛おぼえてますか?」という曲を必死こいて入力して演奏した記憶が
ある。



AXL 2002

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