レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「ファミリーコンピュータ専用ロボット&ブロックセット」

Media :FAMILY COMPUTER
Maker :任天堂
種 別:ロボット(^^:;
発売日:1985年


 ファミコン用のロボットが発売されるらしい、という噂を聞いたのは小学校
6年生の時だった。
言っている意味がよくわからなかった。
ファミコンはゲーム機であり、ロボットはロボットであろう。
ファミコン用のロボットというのはそもそも何なのか?
例えば、「ロボット用のファミコンが出る!」というならまだ分からないこと
はない。「ああ、それはきっとどこかのロボットが遊ぶ為のものなのだな」と
理解できるが、「ファミコン用ロボットが出る!」というのは主客逆転ではな
いか。
「福神漬け用のカレーが出る!」というくらいわけの分からない話である。

 首をかしげるおいらに情報通の友人は、「ファミコンのゲームと連動して動
くロボットで、値段は1万5000円らしい」と付け加えてくれた。
「それは凄い!」
思わず、おいらの胸はときめいた。
そして次の瞬間にはまだ見ぬ「ファミコン用ロボット」を想像しはじめていた。
おいらの想像の中では勿論、二足歩行。
ガンダムに出てくるモビルスーツのフォルムを勝手に想像していた。

 当然、次の時間は授業などまるで耳に入っておらず、まだ見ぬファミコン専
用ロボットのことが頭が一杯だった。
おいらの想像は勝手に突っ走り、授業が終わった頃には、おいらの頭の中にあ
る想像上のファミコン・ロボットは、二足歩行は言うに及ばず、ジャンプにキ
ックにお手のもの、投げ技もこなす超高性能ロボットへと成長しており、休み
時間に入るなり、先ほどの友人を捕まえて「おいらは、そのロボットを絶対2
台は買う!2台買ってプロレスをさせる!、1台の必殺技は延髄斬りで、もう
1台はアックスボンバーだ!」と、一方的に通告した。
おいらの頭では、1台のロボットがもう一台を華麗なブリッジでジャーマンス
ープレックスホールドに切ってとるヴィジュアルまで出来上がっていた。


 おいらがそのロボットの写真を実際に目にしたのはそれから数週間後のこと
だった。それは雑誌の記事か何かで、デモンストレーション用に捕られた写真
だろう、テレビ画面にはロボット同時発売のブロックセットの画面、その横に
はブロックセットのカートリッジが刺さったファミコン、そして、ファミコン
の横に夢にまだ見たファミリーコンピュータ専用ロボットが鎮座ましましてい
た。

 おいらのその写真を1分ほど、物も言わずにじっと眺めた。
まず、その写真でひとつ分かったことは、「このロボットは歩かない」という
ことだった。
ファミリーコンピュータ専用ロボットには、そもそも足に相当する部分がない。
据え置き型で、その上に棒状の胴体にあたる部分が伸びている。
さらにその胴体にあたる棒状の部分に、アームがはまっており、これは左右に
可動する他、胴体を伝って上下移動も可能である。
腕は基本的に開く、という動作と閉じるという動作しかできないような構造に
なっており、胴体の上にブリキのおもちゃのような頭が乗っていた。
これでは、延髄斬りどころか、キックもジャンプもできないではないか・・・。

 説明によれば、ロボット専用カートリッジとして、同時発売予定ブロックセ
ットの他、ジャイロセットも発売予定であること、ブロックセットは付属のブロ
ックをロボットに積み替えさせる遊びが可能で、ジャイロセットでは付属のジャ
イロ(コマ)をロボットに回させる遊びが可能である、というようなことが書い
てあったが、もはやどうでも良かった。

 一体、ナニユエにロボットを遣って、積み木を組み変えさせたり、コマを回し
たりしなければならないのか。そんなことをして本当に面白いのか? 延髄斬り
やアックスボンバーの件は一体どうなっておるのか?

 延髄斬りやアックスボンバーの件はおいらが勝手に想像しただけなのだが、そ
れにしても、ロボットと聞いて子供達が想像するものは何かこう微妙に違ってい
た「そのもの」は、おいらのクラスでもあまり支持されず、発売日を過ぎても一
人もそれを購入した、という者は現れないまま時は過ぎていった。


 ジャイロセットが発売された、という話を聞いて数ヶ月経っても、ロボット専
用ソフトのリリース予定もなく、あれも光線銃のように忘れられていくのかなあ?
と思っていたある日のこと、休み時間にまたも情報通の友人がおいらの机にやっ
てきて、紅潮した顔でおいらにこう告げた。
「○○電気って知ってるか? あすこでロボットが1500円で売ってるらしい!あ
とカセットもブロックセットは480円だってよ!」
○○電気とは、おいら達の家からは少し離れた場所にあり、あまり馴染みはなか
ったがチャリを漕げば30分とはかからない。

 放課後、おいらはその友人と共にチャリを漕いでいた。
ファミコン用ロボットに対する興味もさることながら、本来なら合わせて2万円
近くもするものを9割引き2000円で販売してしまう、ということに対する驚きと
興味の方が強かった。

 30分後、おいら達は、1500円という値札のついたファミコン用ロボットの箱
と、480円という値札のついたブロックセットの箱を抱えてレジに並んでいた。
念の為書いておくとこれらは新品だったが、まだこの頃は、少なくともおいら達
の町ではファミコンソフトの中古販売というものもなく、新品・中古に関わらず
ファミコンのソフトや周辺機器が定価の半額以下で売られているという場面に遭
遇したことさえなかった為、まるでキツネにつままれたような気持ちだった。


 早速、チャリに買ったばかりの商品をつめ、また30分かけて家に戻ると即座
にロボットをセッティングしてみた。
ブロックセットの内容は、ファミコンを通じて、ロボットの上で上下させる、左
右に動かす、そしてつかむ、離すという指令を出し、バラバラに置かれているブ
ロックを指定された場所に置き換えるというものだったが、特にファミコン側か
ら、現在のブロックの配置情報を制御したり参照することはできないので、遊び
として考えると、ちょっと物足りない。
なんというか、一人でモノポリーをやっているような感じなのである。
当然、このロボットはすぐに飽きてしまい、いつの間にかなくなってしまったが、
テレビゲーム機専用のロボットというのは、後にも先にもあのロボットくらいの
ものだろう。
ゲームとしては決して面白い内容ではなかったし、ロボットそのものにしても、
大人の暇潰しにはいいかもしれないが、逆に想像力の旺盛な子供達にとっては
正直物足りないものだったことは間違いないが、心のどこかで「また出ないかな
?」と密かに期待している周辺機器のひとつである。



AXL 2002

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