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FM TOWNS

Maker :富士通
種 別:32bitパーソナルコンピュータ
発売日:1989


 富士通のパソコンと言えば、今でこそFM-V/DESK POWERシリーズということ
になっているが、おいらの世代にとっては1980年代、8bitのホビーパソコンと
してNECのPC88シリーズとシェアを競ったFM-7シリーズが最も印象深い。

 当時、8bitパソコンとしては日本で最大のシェアを誇っていたPC88を中心に
FM-7シリーズ、MZシリーズ、X1シリーズ、そして多少方向性は違うもののMSXシ
リーズなどが有名だったが、単独首位を独走していた88シリーズを除けば2番
手は何といってもFM-7シリーズで、特にFM-77AV以降の4096色同時発色グラフィ
ックの美麗さは、当時のホビーユースパソコンの常識を覆すもので、88ユーザ
ーだったおいらは当時、多いに羨ましく思っていた。
(後に88シリーズでも6万5千色発色が可能なマシンが登場し旧型機でもビデオ
アートボードを増設することにより利用が可能となるのだが、88シリーズでは
これがソフト面に還元されることなかった(6万5色同時発色するゲーム自体が
殆ど発売されなかった)為、やはりAV専用ゲームの美麗なグラフィックは最後
まで88ユーザー羨望の的だった)


 ところが、そんな8bitパソコン全盛だった1980年代も後半にさしかかった19
89年のこと。
それまでMZ/X1の二本柱で8bitパソコンをリリースしていたシャープからX6800
0という16bitホビーパソコンを発売された。
その当時の「ビジネスユースは16bitの高級パソコン、ホビーユースは8bitの
低価格パソコンという暗黙の了解をあっさりと覆したX68000の登場により徐々
に、ホビーユースのパソコンが8bit機から16bit機へと移っていくことになる。

 多くのソコンゲーム達はそれまでのPC88シリーズから、既にビジネス機とし
て圧倒的なシェアを誇っていたPC98シリーズで発売されるようになり、PC98で
は再現不可能なアーケードゲームの移植ものや既にPC98シリーズ等で発表済み
のゲーム豪華版移植がX68000上でリリースされるようになり、同時に8bitパソ
コンの市場は急速に衰退していった。


 8bitパソコン時代、NEC,シャープと共に三強の一角を担っていた富士通が高
性能ホビーユースパソコンとしてX68000から遅れること2年でリリースした「
ハイパーメディアパソコン」がFM-TOWNSシリーズである。

 16bit CPUを搭載し、アーケードゲーム並のクォリティを叩き出したX68000の
登場も衝撃的だったが、FM-TOWNSのスペックはそれ以上に衝撃的なもので、ま
ずCPUには、32bitのi386を採用し、CD-ROMドライブと当時はまだまだCGソフ
トなど一部でしか利用されいなかったマウス、そしてナゼかジョイパッドを標
準で装備していた代わりに、キーボードが別売りとなっており、OSもフルマ
ウスオペレーション可能な独自の"TOWNS OS"を実装していた。


 こういった方向性や、フルマウスオペレーション可能なTOWN-OSなどは明ら
かに海外のMacintoshシリーズを意識してのデザインだったと思われるが、当
時は国内でのMacintoshはまだまだ珍しい存在であり、特に8bitパソコンから
ステップアップしてきたユーザーにとっては、何から何まで勝手の違う仕様の
FM TOWNSはかなり不思議なパソコンに映った。

 ちなみに、FM TOWNS最大の謎であるキーボード別売り(後に発売された機種
では標準装備となる)という仕様でどうやって文書などを作成すればいいのか
というと、TOWNS OS内にソフトウェアキーボードなるものが付いており文字を
打ち込む際には、画面の一部にキーボードの代わりになるものが表示される。
これをマウスでクリックすることによって文書を作成するのだが、少し考えれ
ば分かる通りはっきり言ってかなり使いにくい。
この為、おいらもキーボードは本体と同時に購入したのだが、実はこの仕様は
意外なところで大きなメリットを生むことにもなった。

 当時、FM TOWNS専用キーボードは、テンキーが付いたフルサイズのものが約
1万5千円、テンキーを省いた親指シフト配列(富士通が独自に開発した独特
のカナ配列を持つキーボードのこと。カナキーが合理的に配列されているので、
慣れるとカナ打ちが劇的に早くなるらしいのだが、やはり一旦JIS配列などに
慣れてしまうと矯正するのは大変で、おいらの場合は元々カナ打ちはしない為、
スペア用に購入した安価な親指シフトキーボードもローマ字打ちのみで使って
いた)のものが約7000円で販売されていたのだが、逆にPC98シリーズなど
のキーボードが標準で装備されているそれ迄のパソコンでは、キーボード単品
が店頭で販売されているのを見たことが無かった。
必然的にジュースなどをキーボードにこぼして壊してしまった場合には、メー
カーから直接購入するか、修理に出すかしなくてはならず、購入する際も販売
用の製品ではない為かなり割高となってしまうのだが、TOWNSの場合は、比較的
安価に、しかも、気軽に購入することが出来、比較的気軽にキーボードを壊し
続けるおいらは随分助かった記憶があるのだ。

 それに、フルマウスオペレーションのTONWS-OSも初心者にとっては、黒い画
面を相手に呪文にた謎のコマンドを打ち込まなければ使えないMS-DOSに比べれ
ば遥かに使い勝手がよく、基本的なディスク操作に関しては全く苦労すること
なく利用することができた。

 反面、一見、和製Mac-OSに見えるTOWNS OSも実はシングルタスクOSで、複数
のソフトを同時に起動したりすることは出来ず、厳密には言えば「よく出来た
シェルの付いたMS-DOS」的な代物に過ぎず、既にMS-DOSに慣れてしまったユー
ザーは却って混乱してしまったかもしれない。


 さて、ソフト面を見渡すと、何といってもCD-ROMドライブを標準で装備して
いる、という利点は計り知れないものがあり、実写映像やアニメーション、音
楽や音声などをふんだんに取り入れたゲームが多く発売されたのもTONWNSの特
色の一つだ。
しかしながらハード的な問題で、X68000のようなアーケード移植には必ずしも
向いていなかったらしく、殊アーケードゲームに関しては、X68000に大きく水
をあけられているものが多く、必然的にAVGやRPGなどのアクション要素
の少ないいわばパソコン向けゲームには強かったものの、アクションやシュー
ティングに関しては、98以上、X68未満という非常に中途半端な印象があるのも
確かだ。

 また、ゲームだけでなく、Nifty Serveを使ったHabitat(文字ではなく、ゲ
ームのようなフルグラフィックの世界でコミュニケーションを楽しむことので
きるパソコン通信サービスのこと)など、パソコンの未知の可能性を示してく
れたTOWNSシリーズは、後にCPUも486,Pentiumとステップアップしていったが
最後は、WindowsとTOWNS-OSの両方を搭載し、FM-V DESK POWERシリーズとの中
間的存在のFMV TOWNSの発売を以って幕を閉じることとなる。



AXL 2003

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