レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

エレメカの頃


 おいらがはじめてゲームセンターに足を踏み入れた頃、まだビデオゲームは
ゲームセンターの中ではマイナーな存在で、その主役はなんといってもエレメ
カと呼ばれる筐体達だった。

 あまり詳しいわけではないので、エレメカの定義はおいらにはちょっと難し
いのだが、ここでは大雑貨に言えば非ビデオゲームの業務用ゲーム機という
分類で話を進めさせていただきたい。


 おいらの世代にとって最もポピュラーなエレメカは当時どこの駄菓子屋にも
一台はあった「ルーレット」と呼ばれていたタイプのもので、これは10円玉
を入れ、豆電球のルーレットの光がどの数字で止まるかを選び、当たれば賭け
た倍数分のコインが出てくる、というものだ。
出てきたコインを使ってさらにゲームを楽しむこともでき、2枚、3枚と投入
することで倍賭けすることもできた。

 どの数字で止まるかは勿論ランダムなのだろうが、当時の子供達の間では地
区ごとに「2週プラスいくつめの数字で止まる」といった都市伝説が横行し、
賭ける前には最後に止まった数字から法則通りに数を数えて止まる数字を予想
してからゲームをはじめる、というのが子供達にとっての正式なルーレットの
作法となっていた。


 次に思い出深いエレメカは「ミニドライブ」という製品で、これは駄菓子屋
ではなくデパートの屋上などでよくみかけたタイプ。
筐体にはハンドルがついており、ハンドルの先にはちょうど後のビデオゲーム、
アウトランのようなカップルが乗ったオープンカーの模型が取り付けられてい
る。
その下をロール状になった「地面」がまわって走りを演出するのだが、地面に
は道路の絵が描かれており、さらに一定距離ごとに金属パネルがついている。
つまり、ゲームをはじめたらこの金属パネルの上に車がくるように操作するこ
とで得点が上がっていく仕組みになっているのだ。

 そして「ミニドライブ」あるところ、これまた大抵置いてあったのが「ベー
スボール」という筐体だ。
こちらは、巨大な野球盤のようなものでボタンを押すことでピッチャーの位置
からピンボールくらいの大きさのボールが出てくる。
出てきたボールをタイミングよくバットで打ち返して、「ヒット」以上の穴に
落ちればポイントとなる。
一定ポイント以上得点できれば、リプレイ可能になったのか景品が出てきたの
かは残念ながら記憶にないのだが、こういった「デパート屋上型」のエレメカ
と切っても切れない関係にあったのが「景品」の存在である。
全てのエレメカで景品が出るわけではないが、景品タイプのエレメカにとって
は景品が出てくる、というのもビデオゲームとエレメカの決定的な違いなひと
つであり、努力が形となって評価される点はビデオゲームにはない魅力だった
のだ。

 何が出てくるか、はエレメカによって違うのだが、おいらの記憶によれば、
その殆どの場合がお菓子だった。
しかし、ここから先が重要な点なのだが、エレメカの景品として出てくる景品
に常日頃から「食べたい」と思っているお菓子はひとつも含まれていなかった。
これまたおいらの個人的経験なので、全国的にそうなのかは分からないが、エ
レメカの景品として出てくるお菓子はよくてボンタンアメで、悪いともはや現
在過去未来を通じて二度と再び合間見えることはない、と断言できてしまうレ
ベルで、レア、且つ不味そうなお菓子と相場が決まっていたのだ。

 そうやって出てきたお菓子は、場合によって最後まで賞味されることもなく
いつの間にかポケットの奥や引き出しの中、といった何らかのブラックホール
的な場所にするすると消えていき、その後二度と再び姿を現さなくなってしま
うのが常であり、その点から言えば「貰わない方がマシ」という考え方も出来
るのだが、それでも景品は景品であり、「そのエレメカに勝った証」である以
上、景品タイプのエレメカがひしめくあの頃のデパートの屋上というものは賞
品は内容よりもその賞品が象徴する名誉の方が重要、という古代オリンピック
精神に則った純粋な闘いの場だったわけである。


 さて、当時の子供達にとって、一種の非日常の世界であるデパートの屋上だ
けではなく、日常の世界だった駄菓子屋の店先にも色々なエレメカが並んでい
た。
冒頭に紹介したルーレットは勿論のことだが、その頃の駄菓子屋で最もポピュ
ラーだったエレメカは「十円玉弾きタイプ」とでも形容すべきシロモノで、こ
れは無駄な電気を一切使わず、投入口から入れた十円を筐体の両端についてい
る昔のパチンコのようなハンドルで弾き、途中に仕掛けれたされた穴に落ちな
いように、ゴールの穴に入れればクリア(?)というタイプのもので、大体に
してこの手のゲームは「旅」をイメージして、「新幹線ゲーム」だとか「ハイ
ウェイゲーム」だとかいう名前がつけられていて、かなりの数の亜流が存在し
ていた。

 ちなみに無事ゴールの穴に入れることが出来ると大抵の場合、筐体からプレ
ートがはきだされてきて、それを店のオバちゃんに渡すと何からしらのものを
くれる、というシステムが確立されていたように思う。


 他にも「山登りゲーム」だとか「実写映像を使ったドライブゲーム」だとか
あの頃胸を熱くしたエレメカは数多くあるのだが、そんなエレメカ達もビデオ
ゲーム人気によって段々とゲームセンターでのテリトリーを奪われ、全国的な
駄菓子屋の現象によって、街中からもその姿を消しつつある。



AXL 2003

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