レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

CEROよ、テキサスの化石になれ


 神奈川県がPS2用ソフト、グランドセフトオート3(以下GTA3)を有害図書に
指定する、という報道を耳にした。
GTA3は、犯罪を題材としたアクションゲームであり、いわゆる「出血やグロテ
スクな表現」が多く含まれるゲームで、そこはかとなく青少年への影響という
ようなものが危惧されてしまうタイプのゲームだ。

 ちなみに現在家庭用ゲームにはCEROことコンピュータエンタテイメントレー
ティング機構による対象年齢が記載されており、そのレーティングによればGTA
3は18才以上対象に区分されているソフトである。

 有害図書というのは、ほとんどの場合、有害図書に指定されずとも既に法的
に18才未満の閲覧や視聴が禁止されているような、男性にとっては比較的素敵
で有益な本や雑誌、写真集やビデオなどが指定されるものだが、GTA3自体は法
的には18才未満の青少年に販売しても問題があるわけではない。

 しかし、神奈川県に限っては条例によってそれが禁止されてしまう、という
のが今回の顛末で、過去に家庭用ゲームソフトが有害図書に指定されたことが
なかった為に大きく報道されたようだ。

 この報道を受け、GTA3の国内版を販売しているCAPCOMはCEROの「18才以上対
象」や、「暴力・ホラー、その他グロテスクな表現含まれています」という表
示があることを根拠に有害図書指定を行わないよう知事に再考を求める構えの
ようだ。

 この件に関しておいら個人の考えを最初に述べれば、ゲームに限らずあらゆ
る表現物を安易に規制することには疑問を感じる。
だからといって、何もアダルトゲームを子供に解禁しろなどと言うつもりはな
いが、一般のヌード写真集を猥褻で有害なものだと断じておきながら過去に宮
沢りえのヌード写真集に対しては「芸術性がある」などというバカげた理由か
ら図書室に蔵書した高校があったように、その本質よりもメディアそのものの
世間的な価値観に対する偏見から規制がなされたり、なされなかったりするの
ではないかという不信感を抱いているのだ。
ただ、その反面、性的、或いは極端に暴力的な表現物に関して年齢の規制を設
けることについては反対するつもりはない。

 その立場から、今回の神奈川県の有害図書指定が「表現物として未成熟なゲ
ームというジャンルだから」という偏見に基づく安易なものでないのならば至
極当然の決定だと思っている。

 むしろ、ゲーマーとしては有害図書に指定されたことを心外だとするカプコ
ンやCEROの見解の方に不信感を抱いたというのが正直なところだ。


 そもそもCEROという団体を作ったのは、行政でもなければユーザーでもない。
ゲーム業界自身が作り出した自主的な倫理機構である。
ゲーム業界自身が自ら倫理機構を作ったのは、今回のような行政による介入や
ゲームが「青少年に悪影響を与えるもの」というマイナスイメージを嫌った為
だろう。

 せっかくCEROを作ったのに有害図書に指定されてしまったのだから、当事者
のカプコンをはじめとするソフトウェア業界は心外かもしれないが、そもそも
18才以上を対象とし、18才未満の青少年に薦めらないというのならば、条例で
規制されようがされまいが、タテマエの上では同じことではないだろうか。

 また、何よりもCERO自身が「18才未満対象」としておきながら、実質的には
18才未満の子供がそのゲームを購入することに何の規制も設けなかった以上、
CEROのレーティングは、ゲーム業界のタテマエを守る為だけに存在していると
勘ぐられても仕方がない。

 「18才以上対象」と記載してあるのに、それを購入する青少年が悪い、とい
う考え方もあるかもしれないが、そういった自己責任論が通用するのは成人に
対してであり、アダルトビデオに18才以上と記載してあっても、何の罰則規定
もなければ、むしろ青少年は喜んでそれを購入するだろうし、だとすれば、18
才以上対象のシールは単なるアダルトビデオの目印にしかならない。


 もっと踏み込んで言ってしまえば、個人的にはCEROのレーティング自体、ゲ
ーム業界にとって有害なものだとおいらは考えている。


 現在CEROの年齢別レーティングには、「全年齢」「12才以上対象」「15才以
上対象」「18才以上対象」の4つの区分がある、ゲームを購入する際に、こう
いった対象年齢の目安が記載されていること自体は決して悪いことだとは思わ
ないが、CEROの審査を受けてゲームを販売する立場のゲーム会社の視点に立っ
てみた場合、マイナスイメージを嫌う大手ソフトハウスは、はじめから一定以
上の年齢層を対象とした作品を除けば、なるべくなら審査で「全年齢」にして
貰いたいという意識が働くのは想像に難くない。
仮にその為に、作品のそのものの内容に変更が加えられるようなことがあった
とすれば、「18禁とそれ以外」で分ける二種類の区分よりもCEROの区分方法の
方がゲームの作品内容に与える影響は大きいと言わざるを得ない。

 そして、この先、家庭用ゲーム業界自身が行政的に「18禁」の烙印を押され
ることを嫌い、CEROによる自主規制の枠に囚われ続けるとするなら、この次は
有害図書に指定される恐れがあるソフトに対して前もって発売を禁止したり、
内容の改変を求めたりするゲーマーにとって最悪の事態が訪れるのではないか、
という気がしてらない。


 正直なところ、おいらは今回の神奈川県のGTA3有害図書指定の第一報を耳に
した時、「ゲームだと思ってバカにすんじゃねぇ!」的な可哀想な人生を歩ん
できたヒト特有の被害者意識が働いてしまったのだが、考えていくとゲームと
いうメディアの成熟性を頑として認めず、がんじがらめにしている張本人はむ
しろ家庭用ゲーム業界そのものなのではないか、という悲しい事実に気づかざ
るを得なかった。



AXL 2005

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