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SUPER PRODUCERS 目指せショウビズ界

Media :Dreamcast
Maker :HUDSON SOFT
種 別:歌手育成ゲーム
発売日:1999年

 このゲームとの出会いは全くの偶然だった。
その日、おいらはドリームキャスト用の「首都高バトル2」と「東京バス案内」
という2本のゲームを購入するために中古ゲームショップに立ち寄った。
ところが「東京バス案内」の方が売り切れており、先日立ち寄った時に「バス案
内」が置かれていた場所には見慣れないゲームが代わりにおいてあった。

 まず最初においらの目に入ってきたのは"SUPER PRODUCERS"というタイトル。
「スーパープロデューサーズ」・・・まるで音楽プロデューサーのゲームみたい
ではないか。
少し興味を持ったおいらは、パッケージを手にして裏返してみると、「いい曲
はチャートを独占する。いい曲は新人をブレイクさせる。」というコピーが踊
っていた。パッケージの裏に書いてある解説文を読んでみるとどうもこれは本
当に音楽プロデューサーとなった歌手を育成するゲームのようだ。

 しかし、おいらはそれまでにDCでこんなゲームがあることなど聞いたこと
もなかったし、パッケージのデザインを見る限り、あまり売れそうな雰囲気も
感じられない。
そこには、ポリゴンで書き起こされた、プロデューサー(男)と歌手(女)と
思しき二人の男女が描かれているのだが、このプロデューサー氏の絵が果てし
なく怪しい。

 彼の着ているスーツは常識ハズレな光沢を放ちまくっており、顔の方はとい
うとかなり汚らしいロン毛にまるで似合っていないサングラスをかけている。
どう見ても今をときめくプロデューサーというよりは、下着泥棒かなんかに見
えてしまうのだ。

 ふと値段に目をやったおいらは我が目を疑った。
そこに表示されていた中古価格は390円。
この店は、500円以下のゲームはほとんど置かない店で、Dの食卓2ですら
590円なのにたった390円とはいかなることか?

 恐らくはよほどつまらない、ということなのだろうが、それにしても、歌手
育成というゲームジャンルに希少価値があるし、ずっと以前、コーエーの「ラ
イフ・イズ・ミュージック」というこちらは、アーティスト人生SLGのよう
なゲームをプレイしたことがあり、以後全く続編に恵まれなかったこともあり
おいらは購入を決意した。


 家に帰ってパラパラとマニュアルをめくってみて、またしてもおいらは我が
目を疑った。
おいらの目が釘付けになったのはマニュアルの冒頭、ゲームのストーリーを説
明する箇所の冒頭の文章だ。
そこにはこう書かれていたのだ。

==================================================
「何やってんだよ!ジャーマネ!ヒーコー早く!」
「何よ、あの人、最近売れたからって、あんな人、○○プロデューサーがいな
かったら・・・」

そう、あなたは音楽業界の仕掛人。
(以下略
==================================================

 言うまでもなくおいらの目を釘付けにしたのは「ジャーマネ!」と「ヒーコ
ー!」という衝撃的キーワードである。
しかも後に続く文章が「そうあなたは音楽業界の仕掛人・・・」とあり、その
後普通にゲームの説明に入っているということは、ボケとかではないらしい。

 おいらはまるっきり業界人ではないので、こういう言葉が本来持つニュアン
スまでは理解していないのだが、それにつけても「ジャーマネ!ヒーコー早く!」
はマズイのではないだろうか。
例えば、道を歩いていて前方から弁髪でチョビヒゲの男性がやってきて「ワタ
シ 中国人アルヨ!」と言った場合、彼が本当は何者なのかは全く理解できな
いにしても「最低限、中国人ではない」ということだけは充分理解できるはず
だ。

 おいらはここに来て、パッケージで見た下着泥棒とおぼしき男性の存在の意味
がうっすらと理解できてきたような気がした。
全体的になかなか痛いゲームなのだ。

 マニュアルの方は、「ジャーマネ!」及び「ヒーコー!」のショックに加え
て無駄に長ったらしい癖にセーブの方法がどこにも書いていないという不親切
さに頭にきて、ろくろく読まないまま早速ゲームをはじめてみた。

 早い話が初期資金を元手に、金を払ってアーティストと契約し、そのアーテ
ィストの為に金を払って作曲家から曲を買い、ライブハウスで修行させてスー
パースターにしてしまおう、というゲームなのだ、ということはすぐに分かっ
たのだが、はじめてすぐにこのゲームの欠点に気がついてしまった。

 それはユーザーインターフェースが果てしなく劣悪である、ということだ。
まず、このゲームは無駄にアルファベット表記を多用している、コマンド類は
全てアルファベットで表記されているのだ。
それもただのアルファベットではなく、先ほどの「アルヨ!」のパターンで、
恐らくは今風でカッコいいフォントにしてみたつもりなんだろうが、そこから
読み取れるのは、今風でない、ということと、カッコよくもない、というたっ
た二つの情報だけでフォントそのものが非常に読みにくい。

 しかも黒地に気が狂ったような配色の蛍光色の文字を多用している上に、終
始流れるBGMはテクノとノイズが中途半端にいりまじった非常に耳触りな曲
が延々リピートされる。
さらに、もはや笑うしかないのが、セーブ容量でパッケージには「190ブロ
ック〜」と表記されている。

 ドリームキャストの場合、標準サイズのビジュアルメモリー(メモリーカー
ド)の最大容量が200ブロックなのだ。
早い話がこのゲーム1本で、定価2500円のビジュアルメモリー1本を使い
切ろうというのだ。
390円の分際で2500円の出費を要求するなど身の程知らずもはなはだし
い。
普通なら、この段階で、おいらはそそくさとこのゲームを箱にしまって首都高
バトル2をはじめてしまったはずだが、この日はたまたままるまる1本使える
余分のビジュアルメモリーがあったのだ。
先日妹が部屋の掃除をしている時に、前の彼氏と同棲していた頃に使っていた
ビジュアルメモリーを発見した妹は、「本体は彼氏がもってってしまうのでく
れてやるよ」と言い残して去っていったのだ。

 天の配材というべきか、とにもかくにも普通なら投げ出しているであろう最
大の難関をクリアしておいらはゲームを開始することができた。

 まず最初は、契約するアーティストを決めなくてはいけない。
候補となるのは、5,6人の男女だった。
時間をスキップすれば別の候補が出てくるらしいのだが、この手のゲームは最
初が一番大事で、ダラダラやっているとすぐに金がなくなってゲームオーバー
になってしまう為、なるべく見込みがありそうなのを無理にでも一人は選ばな
いといけない。

 候補となるアーティストを選ぶ際、各種パラメータを参照し、本人のコメン
トも聞くことができる。
コメントの方は「昔、ENKA習ってたんだー」と自分の音楽特性を喋るので
これも参考にしなくてはならない。
余談だが、このゲームには、各種音楽ジャンルが存在しているのだが、その表
記がこれまたどういうわけかアルファベットで統一されている。
そのお陰で「あたしー、昔、ENKA習ってたんだー」などという亜空間語を
話す二十歳の女の子が現れる始末なのだが、もっとお笑いなのが「オレ、昔、
HEVY METAL習ってたんだー」と抜かす奴だ。
頼むからHEVY METALを「習う」のだけはやめて頂きたい。

 最後に、「アピール」というコマンドがあり、そこでそれぞれの候補のアピ
ールを見ることができるのだ・・・と説明書には書いてあるのだが、これがも
うなんだか凄い。

 例えば、おいらが選んだ「西田リコ」というHEVY METALを習って
いた女の子の場合だが、このコマンドを選択すると、何だかNHKのど自慢の
予選みたいな中途半端な客入りの安っぽいステージの上に彼女が立って、アン・
ルイスとかの頃の歌謡ロックをおもわせる曲が流れる。

 当然彼女は歌手志望なのだから、歌うのかと思ったが一向歌いだす気配はな
い。単に歌が流れないということではなく歌っている素振りすらもせずに、何
だか昔の「伊東に行くならハトヤ」のCMみたいな謎の踊りを踊り続けている
だけなのだ。
一体、こんなものを見せられておいらは何を判断すればいいというのか。


 とにもかくにも西田リコと契約を結んだおいらは、彼女のプロデュースに挑
戦することにした。
まずは、メーキャップ。
このゲームでは契約したアーティストの衣装を変えることができる、勿論、単
に見た目が変わるだけではなく、アーティストの目指す音楽ジャンルにより近
い外見にすることが重要なのだ。
衣装の数はおよそ曲のジャンルと同じ程度しかなく、一種類だけ選べるアクセ
サリーや、髪型の変更で多少アクセントをつけられるものの少々、ジャンルの
縛りによって義務的になってしまうのが惜しいが、ここまでこだわったゲーム
は今までみたことがなかったのでこういう点は好感がもてた。

 次やるのは、アーティストに歌わせる曲の確保だ。
これはまず作曲家にベースとなる曲を書いて貰い、最終的には自分が実際にそ
の曲をアレンジして完成となるが、おいらにそんなことを要求されても困るの
で、ベースソングのまま採用とする。
作曲家も各人得意なジャンルがあり、何人も存在する。
おいらは勿論、ヘヴィメタルが得意な作曲家に曲を書いて貰った。
曲を貰う時は5曲ほどの候補から自分で選ぶことになるのだが、これが現実の
定番ソングの丸パクリ、というか音程を変えただけ、なので、曲当てクイズの
ようでなかなか楽しい。
とりあえず、ディープパープルのハイウェイスターにそっくりな曲を選び、
「ハイウェイスター」というタイトルをつけて持ち歌にさせることにした。

 曲を貰ってはじめて正式な(?)デビューとなる。
いきなりCDを発売することもできるし、ライブでレベルを上げることもでき
るが、まずは手堅くライブに挑戦してみる。
ライブ会場も使用料タダのストリートから大会場まで多岐に渡り、チケット代
からバックバンドまで指定できるという細かさだ。
最初ということで、入場料(?)100円のストリートライブを開催し、定員
100%クリアに成功し、おいらの専属アーティスト西田リコもレベルがあが
ったようだ。

 ライブでは実際に自分がアレンジした曲(アレンジしなくてもいいが)に合
わせてアーティストが踊るので見ていてなかなか楽しい。
ちなみにおいらは事ここに至って、先ほどの謎のNHKのど自慢予選における
伊東にいくならハトヤ的踊りがやはり「歌」だったということに気づいた。

 初ライブの成功に気をよくしたおいらは、いよいよライブハウスに進出して
みることにした。
ライブハウスの収容人数は300人、ストリートの6倍だ。
その上、ライブハウスは使用料がかかる為、最低でも使用料分はチケット代で
稼ぐ必要がある。
最初のライブハウスでのライブは、僅かに満員には届かず3万円ほどの赤字を
出したが滑り出しとしては順調だ。
2度目のライブでも西田リコのレベルがあがったのですぐさま3度目のライブ
を開催。

 今度は、満員となり僅かながら利益を出すことができた。
こうなってくるとゲームは面白い。
今まで随分とひどいことを書いてしまったが、この辺の楽しさは、どちらもな
かなかの佳作でありながら、殆ど世に知られることなく消えていったコーエー
の「ライフ・イズ・ミュージック」、ハムレット(電通)の3DO用劇場経営SL
G「娯楽の殿堂」に通じるものがある。

 再びレベルの上がった西田リコで、今度は充分な利益が望めるくらいのチケ
ット代を設定し、4度目のライブをスケジュールに組み込んだ。
果たして西田リコはどこまで伸びてくれるのだろうか?

 ・・・ところが、画面に映ったのはいつものライブ会場ではなく、机の上で
マイクがキラキラ輝いている妙なムービーだった。
マイクが輝いているところを見ると、何か嬉しい突発イベントでも・・・?と
思い、ボタンを押したおいらはまたしても我が目を疑った。
このゲームで通算3度目である。

 そこには・・・。

「西田リコは引退しました」

と、だけ書かれていた。



AXL 2002

追記(攻略法など)

 その後、もう少しプレイしてみた。
西田リコが引退した理由はキャラのパラメーターのひとつ「モチベーション」
が低下した為だった。
このモチベーションは、自然に少しづつ減っていき、これが0になるとキャラ
は必ず引退してしまうという性質を持つ。

 曲がチャートに入る、ライブを成功させる、テレビに出演するなどそのキャ
ラにとって嬉しいことがあると上昇し、反対にCDが売れ残ったり、ライブが
失敗したりすると大きく下がる特徴がある。

 しかもデビュー間も無い頃はちょっとした成功でも大幅に上昇するが、大御
所になってくると10万人のライブを成功させようとも大して上昇しなくなる
為、後半はいかにモチベーションを維持させるがポイントになる模様。

 で、色々やってみた結果、「メイクアップ」というメニューでキャラの衣装
やアクセサリーを変更するとかなりモチベーションが回復することが判明した。
ただ、適当に変えさえすれば必ず上がるというものではなく、どういう組み合
わせで上昇するのは分からない。
それでも直前でセーブして何回かやっていれば、「当たり」をひくのはそう難
しいことではないので、これでキャラの引退問題は解決したが、実はこのゲー
ム、この辺で完全にやることがなくなる。

 このゲームにはエンディングというものが存在せず紅白に出たりチャートで
一位を取ったり、プレデューサーランキングで一位をとったりしてもだからと
いって何も起こらない(^^:;

 ゲームそのものに「年齢」という概念がないので永遠にゲームを続けること
も可能だが、おいらはこの辺でやめてしまった(^^:
ためしにやってみたところ、一度に生産できるCDの枚数は999万枚で、こ
れを発売二ヶ月くらいで完売したが、999万枚のCDを発売する為には、準
備期間だけで1年以上かかる上に、準備期間中はキャラをメイクアップするこ
とが出来ないので、モチベーションの維持が大変。
しかも、999万枚セールスした場合でも利益は20億円くらいなので、準備
期間二ヶ月で1回あたり7億円の利益が見込める10万人ライブを行った方が
てっとり早いことが判明した(^^:;

 このゲームに関しては本当にネット上に攻略情報がなかったので、万が一こ
れからプレイする人の為に簡単に攻略法を書いておくと、

1.最初のライブは出来る限り大きなところで。
2.モチベーションが下がってきたらメイクアップで回復
3.曲をいじる必要は全くなし。
4.ジャンルは多分どれでもいいはず、ただ、キャラが希望するジャンルに
  しないと物凄い勢いでモチベーションが下がる恐れあり(^^:
5.パラメータは、アイドル系は、ルックスが大きく上がりイマジネーション
  が下がる傾向にあり、演歌、バラード、ブルースはこの逆。
  ただ、志向する音楽に必要なパラメータさえあれば逆のパラメータはあま
  り必要ない。別にジャンルに転向する際はそれっぽい衣装を着せると該当
  するパラメータが上昇する(ような気がする(^^:)
6.所持金が数十億あればデビューシングルを100万枚近く用意して、プロ
  モーションをかければほとんど一瞬でスター級の歌手が誕生する(^^:

・・・という感じだ。
色々と難点は多いが、390円ならなかなかお値打ちなソフトだったので、機
会があったらプレイして頂きたい。


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